あまり報道されてこなかった事実として、この地が全国有数の「種イモ生産地」であって、実はここから種イモが日本中に供給されているという事実でしょうか。つまり富良野の被害は、富良野に留まらず、全国のイモ生産に大きな影響があったということです。特別に品質が問われる種イモは富良野のような寒冷地でないとうまく生産されないといいます。イモは私たちが日常口にしている食材ですが、そんな食材のことを何と無知であったかを教えてくれているようです。それにポテトチップスのような商品が、不足し生産ストップになっているということなどは詳しく報道されても、その背景を科学的視点で取材したものを目にすることはありません。
富良野での洪水被害関連であまり報道されてこなかった事実として、この地の貴重な「土壌」が大規模に流失し、奪われたことではないでしょうか。農家の方々が嘆いておられるように、農業の土=土壌は一朝一夕にできるものではありません。これは何代もかけ、有機肥料やたい肥で育て上げられた「財産=資源」なのです。イモの成長にふさわしい土壌は、何年もかけて「培われてきた」ものなのです。他に土地から土を運べばいいじゃないかと考えている人は多いと思いますが、イモ栽培の土壌は時間をかけて育て上げtられた「資源」なのです。土壌を研究している学者は、岩石が砕かれて植物が育ち、その有機物がまた分解されて土の粒をつくっていくという工程が、実に時間にかかる作業であることを明らかにしています。またそこに棲息する、ひとつかみで何億匹もいる微生物あるいは小動物などの働きは重要とされていますが、その99%はいまだどういう働きと作用をもった微生物かはわかっていないといいます。その地で生態系にさらされて作り出された「土壌」は、ほかのどの土地の土壌でもない、独特の個性と特性をもった土壌なのです。つまり現在、人がこうしした土壌を科学で作り出すことはできないのです。土壌というものがいかに貴重な「資源」であるかはこれで理解していただけると思います。復興にも影響するこうした科学的な事実こそもう少しきちっと伝えるべきではないでしょうか。写真:富良野観光協会