~牛乳は自然の摂理に反した食材なのか~
哺乳類の仲間で離乳後、成長してからミルクを飲むのは人類だけだといいいます。人類以外のすべての哺乳類では、離乳後に「ラクト―ス」の消化能力を失うのです。牛のミルクは、仔牛のものであって、含まれる有効成分の、タンパク質、生理活性物質、脂質などそのどれをとっても、当然親牛が牛の遺伝子で作った仔牛用の栄養溶液といえるでしょう。そう考えると仔牛ではない生き物の人類がこれをほぼ生に近い状態で飲み続けているのは不自然さも感じます。こうした論拠から、ミルクはとらないほうがいいと主張し続ける学者たちがいます。最近の研究では、乳製品の消化能力といえるラクトース分解酵素を成人になってからも持続している民族は、地球上で北ヨーロッパやアフリカ、中東の一部などかなり限られた地域の人々であることもわかってきました。つまりこれまで考えられていたほど、乳製品の摂取に対して人類は十分に適応しているわけではないのです。ミルクと乳製品は別に分けて考えるべきかもしれませんが、ではこれらは本当に「不自然な食材」なのでしょうか。ミルクには栄養を補うほかに、カルシウムの補充、そして水分補給という重要なの働きがあると指摘されています。特に衛生的な淡水が得られないようなところでは、水分補給の意義が大きかったと指摘する研究者もいます。しかしモンゴル草原のような乾燥地帯でも人々は決して生のミルクは飲みません。長年の経験でそれは衛生的ではないと考えられているのです。
スーパーで普通に売られているミルクやチーズ、そこにも爆発的に増殖してきた人類のまことに勝手な都合と歴史が見えてきます。食材は栄養や経済的側面だけでなく、健康維持や医学の目線でももっともっと論じられるべきなのかもしれません。
2015年9月30日水曜日
2015年9月29日火曜日
~食事で炭水化物を制限すべきか~
穀物を摂ることが生活習慣病など健康問題で諸悪の根源ではないかといった議論が盛んになされています。それは人類が農業をはじめて以来、現代の飽食へと続く道をまっしぐらに歩んできたのではないかと考える健康主義者の意見です。こうした意見を述べる人たちは、10万年前から数万年前の長い狩猟と採集の時代に人間の体は進化適応してきたので、農業を発明し、炭水化物を安易にそして過剰に摂取できる現代のような食生活には人の体は対応しきれていないということを指摘します。そして理想の食事は10万年前の肉食中心で果実などを摂る「原始人の食卓」ではないかと考えています。実際、アメリカではこのパレオ(石器時代)式の食事やライフスタイルを実践している、熱心な主義者(パレオ主義者)もいるといいます。
しかし、こうした議論への反論もあります。いまから200万年前に生存していたアウストロピテクス・セディバという霊長類の仲間の歯からは、植物(穀物)が見つかっていて、デンプン質を食べていたことがわかったこと、またネアンデルタール人などは穀物を食べる習慣があり、加工していた可能性さえ指摘されるに至り、パレオ主義の論拠が揺らいでいます。炭水化物は考えられているよりもっと昔、人類初期の時代から摂っていた可能性があるのです。また進化生物学が明らかにしてきたことは、これまで進化を起こす時間としてはあまりにも短いと考えられてきた、数千年といった短い時間の単位でも、場合によっては「急速な進化」が起こることがあり得る、すなわち人類はすでに炭水化物を摂取する食生活にある程度適応しているのではないかという意見があります。背景には昆虫や爬虫類、鳥類では30年といった期間で、体形や行動が変化する「進化現象」が起こる事実がいま次々と知られるようになってきたことがあります。生物学では大きな話題となっています。
血糖値が加齢とともに上昇していく中高年にとっては、この論争、一日でもはやく科学的に決着をつけてほしいものです。
(進化生物学者マーリーン・ズック女史がその著「PALEO FANTASY」でパレオ主義を批判的に論じています。)
穀物を摂ることが生活習慣病など健康問題で諸悪の根源ではないかといった議論が盛んになされています。それは人類が農業をはじめて以来、現代の飽食へと続く道をまっしぐらに歩んできたのではないかと考える健康主義者の意見です。こうした意見を述べる人たちは、10万年前から数万年前の長い狩猟と採集の時代に人間の体は進化適応してきたので、農業を発明し、炭水化物を安易にそして過剰に摂取できる現代のような食生活には人の体は対応しきれていないということを指摘します。そして理想の食事は10万年前の肉食中心で果実などを摂る「原始人の食卓」ではないかと考えています。実際、アメリカではこのパレオ(石器時代)式の食事やライフスタイルを実践している、熱心な主義者(パレオ主義者)もいるといいます。
しかし、こうした議論への反論もあります。いまから200万年前に生存していたアウストロピテクス・セディバという霊長類の仲間の歯からは、植物(穀物)が見つかっていて、デンプン質を食べていたことがわかったこと、またネアンデルタール人などは穀物を食べる習慣があり、加工していた可能性さえ指摘されるに至り、パレオ主義の論拠が揺らいでいます。炭水化物は考えられているよりもっと昔、人類初期の時代から摂っていた可能性があるのです。また進化生物学が明らかにしてきたことは、これまで進化を起こす時間としてはあまりにも短いと考えられてきた、数千年といった短い時間の単位でも、場合によっては「急速な進化」が起こることがあり得る、すなわち人類はすでに炭水化物を摂取する食生活にある程度適応しているのではないかという意見があります。背景には昆虫や爬虫類、鳥類では30年といった期間で、体形や行動が変化する「進化現象」が起こる事実がいま次々と知られるようになってきたことがあります。生物学では大きな話題となっています。
血糖値が加齢とともに上昇していく中高年にとっては、この論争、一日でもはやく科学的に決着をつけてほしいものです。
(進化生物学者マーリーン・ズック女史がその著「PALEO FANTASY」でパレオ主義を批判的に論じています。)
登録:
投稿 (Atom)