2016年9月26日月曜日

世界に発信できるか!フレイル克服をめざす日本の社会 

「フレイル」という老化に対する新たな考え方では、健康長寿の人生を送るためには3つの要素が必要とされています。それは栄養(食・口腔機能)、身体活動(運動など)、そして社会参加(就労、余暇活動、ボランティア)です。そしてこれらはどれが欠けても長寿な人生とはならないというのです。この新しい考え方で、これまでの意見と違っているのは「口腔機能」と「社会参加」ではないでしょうか。口腔機能とは、噛む力や飲みこむ力、また話すことも唾液の供給力なども含む広い能力を指しているようです。歯や口を清潔にしその機能を維持することは、食べる働きだけでなくからだ全身のフレイル予防(虚弱予防)に結びつくこととはこれまでだれも意識することはなかったと思います。極論すれば、口腔ケアは寝たきり予防につながるいうことです。
そしてもうひとつのユニークな考え方は、社会への参加を維持するということです。ひとりでスポーツを続けている高齢者群と、グループに所属して運動をしている高齢者群とではグループで行っている群のほうが、健康寿命が長いという研究があります。社会への参加やつながりが健康とどれほど関係するかはまだまだ解明されてはいませんが、定年で会社から退職したり、社会との接点が薄くなると、急に老ける人がいますが、これはもともと人は社会的な生き物であり、その基本を失ってしまうことがどれだけ大きいことかを示しているのかもしれません。こうした理論から生まれる新たな対策や課題は、まず口腔機能維持への中高齢期からの継続的な介入です。歯や口への関心を高め、みなが対策をとれば、寝たきり高齢者はぐっと減少するかもしれません。歯科医には
もっと頑張ってほしいものです。もうひとつは社会参加の誘導策。つながりが薄い都会生活で、今後どう高齢者が、楽しく生きがいも感じられるような交流組織を作っていくことができるか、これは
一番むつかしい課題のように思います。健康寿命日本一の山梨県では「無尽」とよばれるお金を出し合って旅行や飲み会を行う互助会のような風習があり、それがお年寄りの健康寿命の延伸につながっているのではないかという研究があります。こうした知恵をいまこそ日本全体に広げ、フレイル克服社会を構築していかなければならない段階にいま到達しているのだと思います。そしてこれはいまや高齢社会トップランナーの日本が世界に提言すべきことだといえるでしょう。










2016年9月23日金曜日

あなたにとって「サクセスフル・エイジング」とは?

高齢者の研究ははじめ、加齢によって生じる生理的機能の変化とは何か、あるいは生活習慣病への対策を探りたいという方向で研究がはじまったと考えられます。やがて「長寿革命」で先進国ではある程度の人の長寿が達成できると、長生きできるがただ無為に長生きするだけとか、あるいは寝たきりの老人が増える一方という現実に遭遇することとなります。そして長寿は量から質つまり、
QOL「生活の質」を高めることが最大の課題といわれるようになったきたのです。このことは高齢者のマイナス部分に注目するのではなく、ポジティブな部分にも関心がもたれるようになります。実際現実の社会を見てみると、高齢者の大半を占める「健常な老化群」は、高齢期を迎えても健康で自立していて、また社会にも十分社会に貢献できる能力を有している人々であり、これまでの生産活動から退き、体力気力も減衰し、社会から離脱していくという高齢期のイメージをみごとに覆していると言わざるを得ないのです。日本では、60歳以上に働きたいですかと聞いた質問には71.9%の人が働きたいと答えているといいます。欧米の価値観では、自立と生産が重要とされるといいますが、この自立と生産をもし高齢期でも維持し、生涯継続することができれば、それがすばらしい長寿といえるのではないかという考え方が欧米で広がりました。サクセスフル・エイジングという理念です。サクセスフル・エイジングとはより良く生きること、自分らしく生きることということでしょうか。この考え方にもこれまで多くの議論が闘われてきました。いまは「中年期までに形成した行動パターンや生活、パーソナリティを継続し、なおかつ変化に適応対処している老年期」という定義が、あるべき理想ではないかという「継続理論」が提唱されています。老年期が過去に例がないほど長くなった現在、理想の老い方についての熱い議論はまだまだ続くようです。
参考:「高齢社会の教科書」(東京大学・高齢社会総合研究機構編)