老化を医学、科学で解明することをめざす「老年医学」。これまで一般にはあまり知られていなかった医学の専門分野ですが、ますます注目されるようになっています。老いとは何なのか、加齢とともに心身の変化がどのように起こっていくのか、様々な研究が進んでいます。健康寿命を延ばすために、健やかな老いを迎える社会を築くために、老年医学はますます必要度を増しています。
例えば自然に体力が衰え、からだの機能も低下していくことを「生理的な老化」と呼びますが、これに多くの場合、高齢者特有の疾病が加わるのでこの「病的な老化」と自然な老化を混同し同一視しやすいということがあります。白髪や皮膚のしみや体重に占める水分量は低下しますが、それといわゆる「脱水現象」とは区別されます。前者は生理的、後者は病的とされます。老眼や難聴は生理的老化で、白内障は病的変化となります。失禁やロコモティブシンドローム、骨粗しょう症、嚥下障害なども「病的」変化の範疇に入るものとされています。このあたりをあまり区別はしていないようです。だれでもが迎える「老化現象」と、誰にでも起こるわけではない「病気」とが区別されていません。老年医学はこうしたことも明らかにしてきました。
老化を逆方向に戻すのはむつかしとしても、病的な老化は、正しく対処して治す、あるいは改善すべきと思われます。またここに社会的な問題や、精神心理的な課題も加わり、さらに様相は複雑化します。自分に起こっている現象が、どれにあたるのか、そうしたことも教えてくれる窓口も必要です。高齢者の総合機能評価とか老年症候群の症状を正しく伝えるのは誰が対応すべきなのでしょうか。決してマイナス部分だけでなく、明るく対処できるはずの老化や加齢変化。いまこそ老年医学の知恵や知識を人々に還元し、大いに活用すべき時が来たと思います。
参考:「高齢社会の教科書」東京大学高齢社会総合研究機構
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