2016年3月22日火曜日

飢餓の冬の教訓~健康は胎内からはじまる~

これは人類に生命の営みの不思議を強く感じさせる歴史的な事件となりました。時は1944年9月。オランダの西部は、ナチスドイツに占領され完全封鎖されたため、深刻な食糧難に陥りました。1945年5月5日の解放の日までに2万人の餓死者が出たといわれています。食糧の配給は一人一日500kcalまで下がっていき、妊娠期間中の女性に深刻な影響を及ぼしていた。体重は低下し、多くの胎児が死亡したと考えられています。しかし正常な出産も数万件あったといいます。新生児はやや低体重であったようですが、健康なからだであったようです。この飢餓の経験は、一世代をかけてその影響が現われました。当時の新生児が中年となっていた1970年代、米国の大学研究者が彼らの健康調査を実施した。結果は驚くべきものでした。妊娠6カ月までに飢餓を経験した母親から生まれた赤ちゃんは、成人するとその8割が肥満になっていました。そして肥満になりやすいだけでなく、心臓病、糖尿病、精神病も多発していることも見出されました。遺伝学的には、胎児の時期に低栄養下にさらされると倹約遺伝子が働いて少ない栄養でもからだを保てるような仕組みが働き、それが成人とともに肥満にとつながると考えられています。「子宮効果」という言葉さえあります。そしてもっと驚くべきは、こうした胎児期に飢餓経験した人の子供にもその影響は残っていくのです。つまり祖父世代がどんな健康状態であったかが、孫世代にまで影響を及ぼすといまでは考えられています。これは現在、ダイエットに熱心なあまり、低栄養状態に陥りやすい若い女性から生まれてくる赤ちゃんは立派な肥満の素質をもって生まれてくるという教訓をもたらしてくれているのです。





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