16世紀、遠くポルトガルから日本にやってきた宣教師ルイス・フロイスは多くの戦国武将や将軍と出会い、交流しその様子を記録しています。なかでも信長へは畏敬と敬愛の念をいだいていたことがわかっていますが、信長の宗教観について以下のような記述があります。「彼は神や仏の一切の礼拝、尊崇、すべての異教的な占卜や迷信的な慣習を軽蔑した。(中略)すべての偶像を見下げて霊魂の不滅や来世の賞罰などはないとした。」当時ルイスはこうした信長の考え方に驚いたようです。ただ信長は神仏を単に蔑視したのではなく、時には神にお願いをしたり、利用したりもしています。きわめて現世主義というか、現実しか興味がなく、また信じないという精神構造は、現在の日本人にも通じる宗教観といえるでしょうか。おそらく現在の地球上で最も無宗教なのは、中国などの社会主義国とかではなく、この日本ではないかと思います。こうした精神のルーツはすでに信長の時代に生まれ、その後の江戸、明治、戦後の発展を通じてそれは民衆のなかに貫通していて、実は日本の発展を支えてきたように思います。日本では既成の宗教が経済や社会の阻害要因となったことはなかったのではないでしょうか。ただし、昭和の一時期、天皇や神道の名のもとに戦争を賛美し、破滅への道に猛進したという「国家神道」という暗い官製宗教の存在があるのは事実です。世界の歴史を振り返ると、宗教は、人々の暴走をコントロールしたり、豊かな土着の文化を醸成したり、またフロイスのような命を捧げるという純粋な使命と行動力を生んできました。現代のような宗教の名で自爆テロを行うというような狂気の行動規範は、いつごろ生まれたものなのでしょう。宗教に熱狂する人々や、暮らしのすべてが宗教に規制されてしまったような生活を見るにつれ、宗教が大事なのはわかりますが、あの信長のようにもう少し現実を変える発想、どうすれば現世を豊かにできるかという着想がなぜそこに育たないのか、そしてわたしたちは何ができるのか、といつも思ってしまいます。
2016年5月26日木曜日
2016年5月6日金曜日
認知症を予防する食事?日本食の医学解明を急げ!
世界では毎年およそ770万人(推定数)が認知症を発症しているといわれています。なぜこんなに多くに発症がみられるのか、人々の生活習慣や、血圧、血糖値などのからだの数値と何か関係があるのでしょうか、そうした「リスク」を探る研究も盛んに行われています。一番関心を持たれているのは、食事との関係、普段の食習慣ではないでしょうか。結論から先に言うと医学的には、認知症発症のどの段階においても「特定の栄養素」の補充を推奨するような証拠は無い・・というのが現在の医学界の正式見解だそうです。ただし基礎医学の研究分野では、複数の栄養素(リン脂質、脂肪酸、ビタミンE,C、Bなど)の補給で脳シナプスの活動を高めるということがあきらかにされています。専門家たちが好ましいと期待しているのは、野菜を多く摂る習慣とか、週に1回以上の魚の摂取といった食事です。これらはコホート研究で有意に認知症のリスクを抑えることがわかってきました。また地中海式食事で知られている、オリーブオイルや豆、乳製品、ワインを摂るといった食事作法は、MCI(軽度認知症)から認知症への変化を減少させたという報告もあるそうです。そして日本食については、大豆や海藻類を多く摂取できること、さらに乳製品も摂って米飯の量が比較的少ない人については、認知症発症のリスクが低いという研究報告が出されています。つまり結論としては、食のバランスということでしょうか。日本食については、その医学的な価値について大きなプロジェクトとして解明していこうという潮流があると聞きましたが、日本食のみならず世界の民族食についてその価値をもっともっと科学や医学によって解明する再評価が待たれます。日本食が世界で人気となったいま、その価値をおいしさだけでなく疾病予防の食としての価値を、医学、栄養、料理、疫学などをフル動員して国家的政策としてもっとしっかり行なっていくべきと考えていますが、いかがでしょうか。これこそ日本の成長戦略の柱のひとつとすべきかと思います。
2016年5月4日水曜日
金髪だった!?縄文人はどこから列島に来たのか?
縄文人が列島に移住してきたのは、いまから1万6,500年前というからそれほど古い話ではありません。この縄文人とよばれる人々がどこから来た人々なのかという議論が現在あります。最近の研究では現在の日本人はこの縄文人の遺伝子を3割ほど残していて、遺伝子で見ると明らかに大陸や半島、また東南アジアの人々とは異なる種族になるといいます。つまり日本の周辺のどの人々とも似ていないという謎がそこにあるのです。この縄文人は、人類の大移動史のなかで東アジア型と東南アジア型の大きなふたつのアジア人の潮流が分かれるまえ、もっと古いタイプの種族に近いことが最近わかってきました。ある説では縄文人はまだ新たな環境に適応していない種族だったので金髪を持っていたかもしれないといいます。北方から来たのか、南方から来たのかそれはまだわかっていません。狩猟と採集の暮らしをしていた縄文人は、戦いを好まない平和的な暮らしを営んでいたとされていますが、それは水や土地をめぐって争いが絶えなかったと考えられている弥生人と対照的な暮らしといえるでしょう。性格が温和で、和を持って尊しとするような日本人の基層にある心根は、ひょっとするとこの縄文人の性格を色濃く受け継いでいるのではないでしょうか。イランあたりからチベットを経由したのか、インド洋沿いに南から日本列島に辿りついたかはまだ論争がありますがいずれにしても、ユーラシア大陸横断という長い旅をを勇猛果敢に東へ移動してきた縄文人型の人類は、アジアの果て日本列島にたどり着きました。アジアではチベットやインド洋のアンダマン諸島の住民、国内ではアイヌや琉球人には縄文人の形質が濃く残っているとされていますが、こうした痕跡を留めているのかもしれません。解明が進んだ背景には、遺跡に残された人類の遺骨から、歯を取り出し、内部に閉じ込められた遺伝子DNAを解析する技術が発展したことがあります。日本の縄文人の遺伝子も詳しく調べることができるようなってきました。アフリカを出て中央アジアから大移動を敢行し、生き残った誇り高い種族ともいえる縄文人に、もっと高い評価と注目を注いでもいいのではないでしょうか。
2016年5月2日月曜日
生命体は宇宙空間を普通に飛び交っているようだ!
21世紀になり、地球生命が火星で誕生したのではという説が多く提唱されています。また「微生物」が宇宙空間を移動している可能性を示す発見や実験での検証も盛んに行われています。火星起源の隕石をスライスして「磁気マッピング」という手法で調べてみると、その内部はなんと1500万年にわたり、摂氏40度以上には加熱された形跡がないということがわかったといいます。これは微生物のような生命体が岩石に閉じ込められて火星から地球に運ばれてくる可能性を示しています。またはじめに情報を複製する能力を持ったとされる「RNA」は、水中ではうまく形づ作られず、その形成には「ホウ素」が必要と考えられていますが、火星からの隕石にはそのホウ素が含有していることが確認されています。またRNAの構成要素である「リボース」が形成されるためには「酸化モリブデン」の存在が必須とされていますが、この酸化モリブデンも初期の地球には存在せず、火星には存在した可能性が高いともいわれています。こうした「合成生物学」の実験かとその進展から、生まれたばかりの火星のほうが、RNAやDNAを遺伝情報とする現在の生命メカニズムが生まれるための条件が地球より、整っていたとする説が出されているわけです。火星にはかつて大規模に水が存在し、気温もいまより温かかったということも明らかにされています。専門家は、物質循環や生命が利用できるエネルギー(酸化・還元)の存在といった観点からも、この火星起源説を確かめようとしています。またアメリカの美人理論物理学者のリサ・ランドールは天の川に収まった「ダークマター」が彗星をかく乱し、恐竜を絶滅させた地球への巨大隕石の衝突の原因となっているという大胆な仮説を最近提唱しました。私たちは孤独な存在なのか?どこから来たのか?宇宙に生命の「種」が存在し、彗星や隕石となってこの宇宙空間を飛び交っているという説が、真実味を帯びるようになってきました。
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