世界では毎年およそ770万人(推定数)が認知症を発症しているといわれています。なぜこんなに多くに発症がみられるのか、人々の生活習慣や、血圧、血糖値などのからだの数値と何か関係があるのでしょうか、そうした「リスク」を探る研究も盛んに行われています。一番関心を持たれているのは、食事との関係、普段の食習慣ではないでしょうか。結論から先に言うと医学的には、認知症発症のどの段階においても「特定の栄養素」の補充を推奨するような証拠は無い・・というのが現在の医学界の正式見解だそうです。ただし基礎医学の研究分野では、複数の栄養素(リン脂質、脂肪酸、ビタミンE,C、Bなど)の補給で脳シナプスの活動を高めるということがあきらかにされています。専門家たちが好ましいと期待しているのは、野菜を多く摂る習慣とか、週に1回以上の魚の摂取といった食事です。これらはコホート研究で有意に認知症のリスクを抑えることがわかってきました。また地中海式食事で知られている、オリーブオイルや豆、乳製品、ワインを摂るといった食事作法は、MCI(軽度認知症)から認知症への変化を減少させたという報告もあるそうです。そして日本食については、大豆や海藻類を多く摂取できること、さらに乳製品も摂って米飯の量が比較的少ない人については、認知症発症のリスクが低いという研究報告が出されています。つまり結論としては、食のバランスということでしょうか。日本食については、その医学的な価値について大きなプロジェクトとして解明していこうという潮流があると聞きましたが、日本食のみならず世界の民族食についてその価値をもっともっと科学や医学によって解明する再評価が待たれます。日本食が世界で人気となったいま、その価値をおいしさだけでなく疾病予防の食としての価値を、医学、栄養、料理、疫学などをフル動員して国家的政策としてもっとしっかり行なっていくべきと考えていますが、いかがでしょうか。これこそ日本の成長戦略の柱のひとつとすべきかと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿