2016年2月23日火曜日

未来の医療・“先制医療”はもう目の前に来ている!

医療の劇的な転換期、“先制医療”は夢の医療なのか?~

 医療のこれまでを振り返ると、医師たちは人々が何か体の異常を訴えてきたときはじめてそれに対応してきました。また私たちも健康なときに予防的に医者を訪ねるという人はほとんでいなかったと思います。認知症やがん、生活習慣病といった現在人を悩ます病気の解明が、どんどん進んだ結果、病気になるまでの経緯(プロセス)が明らかになるにつれ、この常識がいま変わろうとしています。
 例えばがんは、一個のがん細胞が生まれてから相当な長い時間をかけて成長するものが多いのですが、特定の遺伝子あるいは遺伝子の組み合わせがそのがんを誘発することも知られています。また認知症では脳内にアミロイドベータが蓄積するのに数10年単位の時間がかかっていることが明らかになっています。こうした遺伝子による発病の確立が診断できるようになったり、また発病の指標である「バイオマーカー」により、その人がこの先どれだけ病気に近づいているかなどが診断できるようになってきました。こうした背景で登場してきたのが先制医療という新たな医療の展開です。
 ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「予防的」に乳房を全摘出したニュースを記憶しておられる方は多いと思いますが、これは遺伝子診断をもとにした、乳がんと卵巣がんを予防する先制医療の試みの例といえるものです。こうした先手を打つ予防医療はがん以外でも、心血管系の病気、肥満や糖尿病といったメタボリックシンドロームによる病気、そして精神疾患まで多くの病気で検討が加えられるようになってきました。ただしリスク因子と発症のエビデンス蓄積や正確なバイオマーカーの研究など、今後多くの医学研究の蓄積が必要と考えられています。また先制医療は、個の医療をめざしていて、その意味では米国が提唱している「精密医療(適確医療)」と同じ方向を向いていると考えられています。精密医療はバイオマーカーなどを使って個人に合わせた治療をめざすものですが、それを予防に生かすのが先制医療と考えられています。
 どちらも膨らむ医療費の削減をめざしているといいますが、本当に病人がこうした医療で減っていくのかどうかはこれからの検証が必要です。また医療関係者だけの発想で流れていくのではなく、私たち市民の声、患者の考え方も力強く発言して反映させるべきでしょう。この医療革新をどのように進めていくべきかがいま問われています。




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