2015年11月27日金曜日

~筋肉の減弱(サルコペニア)は、動脈硬化を誘導するのか!老化の解明へ一歩~

これまでサルコペニアについて何度か触れてきました。筋肉と筋力の適切な維持は、いつまでも自立した生活を送るには大切なことと考えられています。これはいまでは「生活筋力」などと呼ばれることがあります。しかしながら最近、筋肉の維持は、実は健康な体を保ち、健康寿命を延ばすという視点から考えても、もっと重要な役割があることがわかってきました。サルコペニア(加齢による筋肉の減弱)は、フレイル(加齢による心身と社会性の衰え)と呼ばれる高齢者の「虚弱化」の主要な要因と考えれていますが、そのサルコペニアが、他の様々な病態と深く関連することが、愛媛医療センターの小原克彦さんら内科の医師たちの研究から明らかにされてきました。サルコぺニアが進行すると、骨格筋は委縮するのになぜか心筋は肥大することがわかっています。サルコペニアでは大動脈の起始部の血圧、中心血圧が上昇していることがその原因と考えられています。一般にサルコぺニアになる要因として、栄養や活動量の加齢による変化と、酸化ストレス、インスリン抵抗性、性ホルモンの変化などが疑われています。これらは実はすべて同様に動脈硬化を誘発する要因ともなるものです。つまり筋肉の委縮は、動脈硬化など心血管疾患と呼ばれる“血管の老化現象”と深い関連があることが示唆されているのです。逆に考えると、血管で動脈硬化が進行すると、サルコぺニアが誘導されるともいえるのです。小原さんたちは、サルコぺニアを動脈硬化や心筋こうそくなどリスク要因としてとらえることを提唱しています。またさらには、サルコペニアが認知症のリスク要因ともなるのではと疑っています。「老化」という複雑な現象、そのメカニズムの一端が少しずつ解明されてきているようです。こうした研究は“老化に伴う疾病予防”、あるいは“健やかな老化”という私たちの夢へと一歩近づくものであり、大きな成果が期待されているのです。

2015年11月25日水曜日

~人間による生物大量絶滅・・・独自に進化した飛べない鳥が消えた~

ニュージーランドでのお話。1864年に、猟のための獲物としてイギリスからニュージーランドに連れてこられたウサギが、その猛烈な繁殖力で10年もたつと島中にあふれるようになりました。ウサギは羊が飼われている草原にも進出し、その牧草を食べ続けたので、羊が飢えて死んでゆく事態となりました。そこで当時の政府は、ウサギを食べてくれそうな生き物を利用しウサギを減らそうと考え、肉食のイタチ科の動物、オコジョやフェレットを大量に導入することにしたのです。原野に放たれたオコジョたちは、はじめ厄介者となったウサギを次々に襲い食べてくれました。ところがこの天敵導入には意外な展開が待っていました。小さな肉食動物たちは、やがてウサギより簡単に襲うことができる、キウイやウェカ、カカポというような、地上性の飛べない野鳥たちを襲うようになったのです。そこで牧羊農家は牧草の保護に効果がないとなると、今度はネコを使おうと、ウサギの荒らした草原に多数のネコも放たれることになりました。こうして島の本来の生態系はズタズタになっていき、ニュージーランド固有の鳥の内、実に半分が絶滅、生き延びた種も消滅の道を進むことになったのです。こうした政策に対して当時強い警告を発して抗議していた人たちもいましたが、憂うべき事態に社会が気がついた時はもう時遅しだったといいます。消えた野生生物の復活は不可能になってしまいました。数億年の時間をかけて独自の進化をみせていた島の生物と生態系は、わずか数百年であっという間に消滅してしまったのです。太平洋に広がった島々では、シカやリス、カメやウサギなどが不在だったため、多くの鳥が進化して、地上生活に適応したものが現われたと考えられています。ハワイでも最近の古生物の研究で、多くの知られざる“歩く鳥”がいたことがわかってきていて、実は太平洋全域でこうしたモアやクイナなど不思議な野鳥たちの世界があったことがわかってきました。簡単には変わらないというイメージある自然の生態系ですが、実はものすごく繊細で、とても壊れやすいガラス細工のようなものであることが、このニュージーランドでの教訓からわかってきます。

2015年11月20日金曜日

~どんな食品でも摂りすぎは体に良くないという教訓か~

スウェーデンの研究チームが最近実施した調査によると、牛乳の摂取量が増えても骨折のリスクは低下しないこと、むしろ逆に死亡率が増加する恐れがあるという結論が導き出されました。(British Medical JournalBMJ 2014)。予測と違って意外な結果が示されることとなりました。調査は、3974歳の女性61000人を20年にわたって観察、また4579歳の男性45000人も11年間の長期の観察を行ったものだといいます。女性のデータが特に顕著で、「股関節部の骨折」を経験する女性の割合は、13杯以上の牛乳を飲む人が1000人中に42人だったのに対して、1日牛乳1杯未満の人では、31人であったといいます。また牛乳摂取量が多い女性は、牛乳摂取量が少ない人と比べて、死亡率が90%も高く、骨折全般では15%多かったというデータが示されています。一方男性では、骨折の割合の牛乳の摂取量での差はほとんどなく、死亡率も摂取量が少ない群の方がやや低い結果ですがその差は比較的小さかったといいます。そしてこの調査は他の食品についても調べられましたが、チーズやヨーグルトという「発酵乳製品」の摂取量との関係では、女性の場合でも、死亡率と骨折頻度の低下につながるという予測を裏切らないプラスの効果が表れたことも同時に報告されました。このことを受けて研究チームは牛乳には糖類たとえばD-ガラクトースなどが多く含まれていますが、発酵乳製品では少ないのでこうした結果につながったのではと推測しています。動物実験ではD-ガラクトースは老化を促進する物質であることがわかっているからです。牛乳は優れた栄養食品といってもあまり多量に摂取しすぎると、含まれる糖類がむしろ体にマイナスの効果となって表われる可能性があるという、考えさせられる報告でした。ただしこれは最終的な結論ではありませんので、直ちに牛乳を控えようというというのは少し時期尚早かもしれません。




2015年11月18日水曜日

~いったい誰が消費者にわかりやすく説明するの!食品安全とフードリテラシー?~

加工食品の安全性をめぐる話題が相次いでいます。6月にはアメリカのFDA(米国食品医薬品局)が「トランス脂肪酸」を発生する油の食品への使用を、2018年以降禁止すると発表しました。心臓突然死、冠動脈疾患、メタボや糖尿病のリスクを高めているというのがその理由です。トランス脂肪酸は、植物油を個化する過程で人工的に生まれてくるものですが、マーガリンやショートニングなどに含まれ、その結果、これらを原料として作られる食品、例えばパン、クッキー、スナック菓子、生クリーム、ピザなどほとんどの市販のあらゆる食品に入っているというわけです。ニュースに接した人の中には、マーガリンをやめようと思った人はきっと多かったと思いますが、こうした食品を摂っている限り、真のトランス脂肪酸断ちにはならないのです。背景には米国での冠動脈疾患への対策が喫緊の課題であることが指摘されています。なお日本人の通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取量は安全基準以下で、健康への影響はほとんどありませんというのが内閣府食品安全委員会の見解です。次に話題になったのは、10月になってWHOのがん研究機関、国際がん研究機関(IARC)が行った、加工肉にはヒトに対して発がん性がある、肉(牛、豚、羊)にはおそらく発がん性があるという発表です。10か国、22人の専門家による会議で科学的に判定されたといいます。これもまた消費者にとってはどう考えていいのか困惑する内容でした。今回のIARCの評価は、がんを誘発するかの根拠の強さを特定したもの(ハザード評価)であって、摂取することでがんの起こる可能性(リスク評価)を示したものではないというのです。それってどういう意味?と思わず聞きたくなります。理解できるでしょうか。こちらの問題も日本人では世界とくらべて肉、加工肉とも摂取量は少ないことと、コホート研究(疫学調査)では、直腸結腸がんとの関連は認められないというのが内閣府や国の研究機関などの見解です。国外からの情報に振り回されているのも情けないですが、農水大臣や所管の研究者などのきちっとしたわかりやすい国民への説明こそ、いま必要かと思われます。

2015年11月17日火曜日

~まもなく人類は、オキアミやミドリムシを食べる時代に~

2015年の世界人口白書によると、世界の人口は72億7552万人と報告されています。100億人となるのもそう遠くはないというのが現実です。これらの人々がみな水とともに食糧を必要とするわけですから、今後の食糧生産がはたして追いついていくのかと心配になってきます。いやこれはすでに途上国では現実となっていて、毎年350万人から500万人のこどもたち(5歳以下)が栄養失調で感染症などに罹り亡くなっているのです。1日にすると1万4000人、5秒に1人が亡くなっていることになります(国境なき医師団などのリポート)。先進国であっても世界の穀物や肉の生産、あるいは加工食品の生産と保存をよほどうまくやっていかないと、来るべき社会では経済力の差で、食べることのできる富裕層と飢える中流下流層という社会のかたちが生まれていくのではないでしょうか。不足するタンパク源として、「昆虫食」をまじめに検討しなければならないという意見もあります。この昆虫食を強く推奨しているのは国連食糧農業機関(FAO)という権威ある国際機関です。昆虫はタンパク含有量が高く、鉄やマグネシウム、リンなどの微量栄養素が豊富、そしてなにより安価で飼育が簡単という利点があるというのです。メディアにも時々登場する「ミドリムシ」も食糧危機を救う救世主といわれてきました。クロレラと同じ藻類であるながら、動物の性質も合わせ持つこの微生物は「ヒトが生きていく上で必要な栄養素をすべて賄える生きもの」というすばらしいキャッチフレーズがついています。魚介類では、深海魚などは有力な新規食糧資源として注目されており、新たな漁獲のターゲットとなっていくものと思われます。海洋資源でもっと注目されいるのは、あのシロナガスクジラが大きく口を開けて豪快に食しているプランクトン「オキアミ」です。栄養豊富であり、将来の人類の食糧資源として食品化の研究が進んでます。オキアミは資源量としてまだ余裕があるということかと思いますが、クジラとヒトが同じエサを奪い合うようになるとは誰が予想したことでしょうか。





2015年11月16日月曜日

~イソフラボンお前もか!腸内細菌の完全支配下にある栄養素~

大豆に含まれる栄養素としてよく知られている「イソフラボン(大豆イソフラボン)」は、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きがあることや抗酸化作用もあり、更年期障害、骨や血管、脳にも若返りの作用が期待できるものとして様々な改善効果の夢が大きく膨らんでいます。特に女性の健康(乳がんや骨粗しょう症など)との関連が議論されていてきたので特に女性にとっては解明が待たれるところです。昔の京都のお公家さんのお肌がすべすべであったのは、大豆製品の「湯葉」を日常食としてきたからという説もあるくらいです。お肌の若返りにイソフラボンが効果的となれば、女性も男性も興味を持つのは当然でしょう。最近の研究で、実は意外な事実がわかってきました。イソフラボンが体内でどのように作用しているかが、少しずつ解明されてきたのです。イソフラボン(の中でダイゼインという種類)は、腸内細菌により代謝されて「エクオール」という物質に変化します。このエクオールが「エストロゲン受容体」にぴったりはまり込むことで、すべての機能が発揮されるということが明らかになったのです。しかもこの働きを持つ腸内細菌(乳酸菌ラクトコッカスの仲間)は日本人では2人に1人しか持っていないことも判明し、欧米人では3人に1人だというのです。この論ではイソフラボンを摂取してもその恩恵にあずかる日本人は半分、50%ということになります。あの話題の中心、「腸内フローラ」がここでも私たちの健康を完全に支配コントロールしているようなのです。今後は、エクオールを産生する腸内細菌入りのヨーグルトなどが発売されるのでしょうか。栄養素と体の代謝系の関係が、一筋縄でではいかないことを教えてくれるいい例のようです。




2015年11月10日火曜日

~恐竜は、本当に毎年「渡り」をしていたのか~

春に日本にやってきて秋になるとフィリッピンや東南アジアへと戻っていく、ツバメやカッコウなどの夏鳥。そして入れ替わって日本で冬を過ごすために、シベリアやアラスカから渡ってくるオオハクチョウやツグミなどの野鳥は冬鳥と呼ばれます。渡りの途中で日本列島に立ち寄るのシギ、チドリは
旅鳥と呼びます。こうした鳥の「渡り」は、とても長い距離を移動するもので優に1万kmを越えて移動するものもいます。まさに地球規模の移動を、毎年繰り返し往復しているのです。あたりまえのように思っている野鳥の渡りですが、繁殖地と越冬地を求めて移動していることは理解できても、それでは鳥類がいつごろ、どのような進化の過程でこのような行動をとるようになったのかなど本当のところは実はよくわかっていません。大陸移動がこの現象の遠因ではないかと考える説があります。大陸移動で生息地の緯度が大きく変わっていくなかで、昔の故郷である生息地に季節的に戻る習性が生まれたのだという考え方です。しかしこの説には大陸移動があった地質年代と鳥類の発展時期にはズレがあり、つじつまが合わないという否定的する意見もあります。そこで、いまは鳥類が大発展するする以前に繁栄していた恐竜の仲間たちがこの「渡り」をはじめたという考え方が誕生しました。恐竜が現在の鳥類と同様に、繁殖地と越冬地を求めて大陸を北から南へと毎年長距離を移動していたという説です。実際、北米ではそれを裏付けるように、同じ恐竜が北と南で見つかったりしています。こうした恐竜が獲得した生物の習性を、鳥類が自然に引き継いでいると考えれば、大陸移動など持ち出さずに説明ができそうです。大型の恐竜が大挙して渡りを行っている景色は、はたしてどんなに壮大なものだったでしょうか。地響きがしそうな映像が浮かびます。

2015年11月7日土曜日

~「ハヤブサ」は「スズメ」の近縁種だった!~

生物における「種」という分類の単位は、時として議論を呼ぶ実はとてもやっかいな概念です。一般に、交雑ができるかどうかが同種か別種かのちがい、と考えている人は多いと思いますがそう単純ではないといいます。例えば雌だけで卵を産む(単為生殖)ヤモリなどは、交配がないので同種かどうかの分類はできません。これまでは「形態学的種概念」にともづく分類が行われてきました。しかしこれでは、生物の外見だけを見ているので時として誤ってしまうことがあります。宇宙探査機の名前にもなった「ハヤブサ」ですが、有能な狩りの技術を持つ猛禽類として知られていて、これまで「タカ」の仲間と皆が信じてきました。この分類は誰も疑う余地がなかったのですが、最近DNAを使った系統樹作成の研究(分子分類法)が進み、あっと驚く事実が判明してきたのです。分子レベルでハヤブサを調べて分類を行うと、タカの仲間ではなくスズメやオウムと近縁であることがわかったのです。同じように「サギ」はコウノトリに近い仲間とされてきましたが、実はペリカンに近いということもわかりました。ハヤブサがスズメの親戚だったとは、みごとにだまされたというか、にっこり微笑んでしまうようなお話です。現在ではDNAによる分類方法が主流となっているということですが、「種」とは、どこかで割り切って分類することをしないと割り切れない要素を多く含んでいるようです。ちなみに現在の地球上のヒトは一種類ですべて「アフリカ人」の子孫です。白人も黒人も黄色人もすべて人類はアフリカ大陸で誕生した、ただひとつの人類種を先祖に持つ同じ種の仲間なのです。参照:川上和人著「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」



2015年11月6日金曜日

~恐竜=鳥類「指論争150年」に終止符を打った日本の発生学研究~

鳥類が恐竜から進化したという学説で唯一残っていた「矛盾点」をずばりと解決したのは日本人でした。「指論争」と呼ばれる150年来の論争を、科学的実験で真実を解き明かしたのは東北大学理学部の田村宏治教授です。これまでの発生学では、観察から鳥類の前足は第2-3-4指であるのに対して、恐竜は前足が第1-2-3指であることが鳥類恐竜起源説の最大の矛盾点として語られてきました。田村さんたちはニワトリの翼の指の出来方をあらためて遺伝子などでくわしく分析すると、これまで翼の指は、第2-3-4指と思われていたのは、実は第1-2-3指の間違いであることを明らかにしました。指の発生の途中で第4指の発生ゾーンから指ひとつがずれるという現象があり、これが従来の説を誤らせていたというのです。いずれにしてもこれで鳥類は恐竜から分かれて進化したしたことが確定的になりました。恐竜、始祖鳥、鳥類がこれですっきりつながりました。2011年の科学雑誌サイエンスに投稿され世界の話題となりました。現代の生物学の研究室から、数億年前の生物のストーリーが解かれるというロマンあふれるお話です。鳥類よ、お前たちの正体はやはり恐竜の生き残りなのだな!科学の眼はお見通しですよ・・といったところでしょうか。今後、進化生物学などが急速に進歩して、これからもびっくりするような研究成果が生まれてきそうです。



2015年11月4日水曜日

~「第二の脳」とまで呼ばれるようになった腸内細菌叢~

近年、医学研究で話題をさらったのは何といっても「腸内フローラ」の再発見でしょう。腸内細菌が体の中で、これまで考えもしなかった重要な働きを行っていることがわかってきて、現代病や健康問題解決のブレークスルーになる可能性が明らかになってきたのです。人間ひとりが抱えている腸内細菌は、重量で1~1.5kgもあり、肝臓と同じくらいの重量だといいます。また細胞数でカウントすると、人体の60兆をはるかに超える100兆個以上で、その種類はおよそ1000種類を越えると考えられています。嫌気性の最近ですから、研究がむつかしく多様な細菌をしらべる手法がこれまでありませんでした。これを解決したのがメタゲノム解析という検査法で細菌をまとめて遺伝子検査するというものでした。
研究が進展すると、この大きな腸の細菌の塊は、なんと脳と血液を通じ、生理物質のやりとりを行い、お互いに影響を与え合っていることが判明しました。これはいまでは「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれていて、簡単に言うと、腸と脳が体の状態に関して会話をしてるということなのです。この会話により、免疫力やさらには性格にも影響を与えていることがわかってきました。動物実験ですが、活動的でない臆病なマウスに、活発で好奇心旺盛なマウスの腸内細菌を入れ替える手術をすると、性格が活発なマウスになったという報告があります。ヒトでは腸内細菌の総取り換えを行うと、肥満症が治ったという事例も有名です。腸内フローラのバランスは、自閉症ややうつ、認知症にも関係しているのではと考える研究者もいます。がんやアレルギーも予防や治療の可能性があると研究が進んでいます。いまでは腸と腸内細菌のことを「第二の脳」(セカンドブレイン)とも呼ばれるようになってきました。

2015年11月3日火曜日

~実はとても深刻な温暖化の健康への悪影響~

地球温暖化の影響として議論されていることには、豪雨や干ばつなどによる極端な気候現象の発生、また農作物や水産物への深刻な悪影響、海の水位の上昇などがあります。それらは結果として、自然災害、水不足や食料不足をもたらし、人類の新たな紛争の種を生み出すことになるのではと心配されているのです。しかし、温暖化がもたらす健康への影響はあまり議論されていないように思います。科学誌ナショナルジオグラフィックスが最新号の気候変動特集でこの健康の視点でどういうリスクがあるかをレジメしています。(2015年11月号)日本でよく知られているのは熱帯に棲息していた毒クモや蚊などがじわじわと上陸しつつあるという事実でしょうか。実際マラリアやデング熱といった伝染病が温帯域である日本にまで広がっていくという恐れがあるのです。すでに東京では昨年デング熱の感染が話題になりました。アメリカでは、ウエストナイル熱などが猛威をふるっています。今後心配なのはライム病などを媒介するマダニの増加です。さらに記事では次のことも指摘しています。農業や建設業などで労働者の間で熱中症のリスクが極端に高まり労働時間は夜にシフトしなければならなくなること、アレルギーのシーズンが延長して呼吸器疾患の患者が増加すること、干ばつと水不足で都会に住む住民の健康が悪化すること、からだをあまり動かさない高齢者に極端な気象の影響が一番およびやすいこと、洪水や干ばつなどは、自殺やうつなどのメンタルヘルスの問題も引き起こすことなどが指摘されています。医学や健康のアプローチは、平和な世の中がずっと続き、食料も水も確保できることが当たり前の前提として議論されてきたように感じます。そうではなくて、いまや温暖化リスクを考え、こうした医療、健康対策を考える時期に突入しているのではないでしょうか。







2015年11月2日月曜日

~海の霊長類を知っていますか?タコには高度な知性がある~

単細胞のアメーバ状生物である「粘菌」は、脳はもちろん神経系さえもたない生き物ですが、時間を記憶する能力をもち、迷路を与えると最短ルートで移動するといいます。庭先にどこにでもいる「ダンゴムシ」には、水で囲ったり、行き止まりを作ったりするとそこから脱出する不思議な行動を起こします。こうした知性と似た不思議な現象を見つめる学者のなかには、単細胞や昆虫であっても知的活動や意識、あるいは心さえあるのではないかと真剣に議論を行っている人がいます。かつて生物学者ライアル・ワトソンが著書「生命潮流」で、霊長類は人間だけでなく海にもいる、それはイカやタコといった頭足類であり、そうした仲間は高度の知能を有している「海の霊長類」だと語りました。タコの知能はどれほどのものか、興味深い実験があります。タコをふたつの水槽で一匹ずつ入れ、両方の水槽に蓋をまわして開けないと決して餌が摂れない容器をセットし飼育します。片方のタコは実はこの容器の開けかたを知っているのですが、やがてこの容器の開け方をじっと観察した隣のタコは、すぐそれを学びすぐ容器を開けられるようになるといいます。他者の動作の観察と学習、模倣といった高度な動作です。脊椎動物ではヒトが知能がもっとも進んでいるかもしれませんが、無脊椎動物ではおそらく頭足類がその知能が最も進化していると考えれています。もしかしてあと数十億年したら、彼らがさらに進化し知能で地球を征服しているかもしれないのです。こうして考えると生命現象には、もともと意識や心の種というべき「知的なもの」があり、決して人間だけが地球上の知性生物ではないことを教えられます。