2015年11月25日水曜日

~人間による生物大量絶滅・・・独自に進化した飛べない鳥が消えた~

ニュージーランドでのお話。1864年に、猟のための獲物としてイギリスからニュージーランドに連れてこられたウサギが、その猛烈な繁殖力で10年もたつと島中にあふれるようになりました。ウサギは羊が飼われている草原にも進出し、その牧草を食べ続けたので、羊が飢えて死んでゆく事態となりました。そこで当時の政府は、ウサギを食べてくれそうな生き物を利用しウサギを減らそうと考え、肉食のイタチ科の動物、オコジョやフェレットを大量に導入することにしたのです。原野に放たれたオコジョたちは、はじめ厄介者となったウサギを次々に襲い食べてくれました。ところがこの天敵導入には意外な展開が待っていました。小さな肉食動物たちは、やがてウサギより簡単に襲うことができる、キウイやウェカ、カカポというような、地上性の飛べない野鳥たちを襲うようになったのです。そこで牧羊農家は牧草の保護に効果がないとなると、今度はネコを使おうと、ウサギの荒らした草原に多数のネコも放たれることになりました。こうして島の本来の生態系はズタズタになっていき、ニュージーランド固有の鳥の内、実に半分が絶滅、生き延びた種も消滅の道を進むことになったのです。こうした政策に対して当時強い警告を発して抗議していた人たちもいましたが、憂うべき事態に社会が気がついた時はもう時遅しだったといいます。消えた野生生物の復活は不可能になってしまいました。数億年の時間をかけて独自の進化をみせていた島の生物と生態系は、わずか数百年であっという間に消滅してしまったのです。太平洋に広がった島々では、シカやリス、カメやウサギなどが不在だったため、多くの鳥が進化して、地上生活に適応したものが現われたと考えられています。ハワイでも最近の古生物の研究で、多くの知られざる“歩く鳥”がいたことがわかってきていて、実は太平洋全域でこうしたモアやクイナなど不思議な野鳥たちの世界があったことがわかってきました。簡単には変わらないというイメージある自然の生態系ですが、実はものすごく繊細で、とても壊れやすいガラス細工のようなものであることが、このニュージーランドでの教訓からわかってきます。

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