~筋肉の減弱(サルコペニア)は、動脈硬化を誘導するのか!老化の解明へ一歩~
これまでサルコペニアについて何度か触れてきました。筋肉と筋力の適切な維持は、いつまでも自立した生活を送るには大切なことと考えられています。これはいまでは「生活筋力」などと呼ばれることがあります。しかしながら最近、筋肉の維持は、実は健康な体を保ち、健康寿命を延ばすという視点から考えても、もっと重要な役割があることがわかってきました。サルコペニア(加齢による筋肉の減弱)は、フレイル(加齢による心身と社会性の衰え)と呼ばれる高齢者の「虚弱化」の主要な要因と考えれていますが、そのサルコペニアが、他の様々な病態と深く関連することが、愛媛医療センターの小原克彦さんら内科の医師たちの研究から明らかにされてきました。サルコぺニアが進行すると、骨格筋は委縮するのになぜか心筋は肥大することがわかっています。サルコペニアでは大動脈の起始部の血圧、中心血圧が上昇していることがその原因と考えられています。一般にサルコぺニアになる要因として、栄養や活動量の加齢による変化と、酸化ストレス、インスリン抵抗性、性ホルモンの変化などが疑われています。これらは実はすべて同様に動脈硬化を誘発する要因ともなるものです。つまり筋肉の委縮は、動脈硬化など心血管疾患と呼ばれる“血管の老化現象”と深い関連があることが示唆されているのです。逆に考えると、血管で動脈硬化が進行すると、サルコぺニアが誘導されるともいえるのです。小原さんたちは、サルコぺニアを動脈硬化や心筋こうそくなどリスク要因としてとらえることを提唱しています。またさらには、サルコペニアが認知症のリスク要因ともなるのではと疑っています。「老化」という複雑な現象、そのメカニズムの一端が少しずつ解明されてきているようです。こうした研究は“老化に伴う疾病予防”、あるいは“健やかな老化”という私たちの夢へと一歩近づくものであり、大きな成果が期待されているのです。
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