2015年12月24日木曜日

~スポーツの会に参加すると要介護となる人は必ず減少する!~

健康寿命の延伸のために、課題はどこにあるのか、そのためまずは日本の高齢者を取り巻く社会的な要因を分析し、その生活実態を探ることで明らかにしていこうという野心的な研究が、日本福祉大学の近藤克則教授らによって進められています。北海道から沖縄まで全国の31市町村に居住する65歳以上の高齢者で要介護の認定を受けていない人11万人(回答者)に対する調査が、何年にもわたって続けられています。調査項目を見ると大きく「健康」、「生活」、「社会」、「経済」などの4つの柱建てになっています。例えば健康では自立度、うつ、転倒、口腔ケア、栄養状態、また生活では閉じこもり、趣味、虐待、友人関係など、社会の項目では、地域への参加、ソーシャルキャピタル(社会での信頼関係)、経済の項目では収入、就業、教育歴などが調べ上げられ、高齢者の全体像を多面的にあぶりだそうとしているところがとても興味深いと思います。特にそのなかで、「運動疫学」とよばれる分野、つまり「スポーツ(組織)への参加」と「要介護の認定有無」との関連を検討した報告はいろいろなことを教えてくれます。この調査は愛知県の高齢者1万3千人(回答者)を分析したものですが、市民運動、ボランティア、趣味といった社会参加の項目と要介護になるリスクの関係が分析された結果、一番要介護になるリスクを低めたのは、スポーツの会への参加でした。何にも参加していないグループにくらべて、スポーツの会に参加しているグループは、何とリスクが34%低くなるというものでした。またスポーツ(運動)の回数やスポーツの会(組織)へ所属の有無など詳細を調べたものでは以下のような結果でした。週1回以上運動している人では、スポーツ組織に参加してる人にくらべ参加していない人は3割ほど要介護になりやすい(4年間に)、また週1回未満の方でもこれは同じような傾向を示したといいます。「スポーツの会への参加」がキーワードとして浮かび上がってきたのです。研究者たちは、組織へ参加することで、社会的な交流や支え合いなどがあり、その「心理的な効果」が結果として、要介護発生の抑制へとつながったのではないかと分析しています。地域での高齢者スポーツ組織の設立や拡充など、新たな介護予防対策がここからも見えてきたようです。  参考: 運動疫学研究 2013;15(1):31-35

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