2015年12月17日木曜日

~どんな身体活動であっても、複数の部位のがんに予防効果がある~

日常生活で体をしっかり動かしている(身体活動量が多い)人は、がんになるリスクが低いことが知られています。またがんを発症して治療を行った患者(がん生存者)の場合でも、定期的な運動を行うと、がん再発のリスクが下がるという研究成果も最近出されました。(2012年米国対がん協会「がん生存者のための栄養と運動のガイドライン」第4版)。国内の研究では、「大腸がん」の発生率について、全国の中高年男女6万5千人を追跡した厚生労働省の調査があります。それによると、体をよく動かしている活動量最大群(筋肉労働や激しいスポーツ行っている)の人と、そこまでの運動をしていなくても、日々の生活で1日3時間以上歩いたり、立ったりしたりしている人(身体活動量上位群)の場合は、「結腸がん」発症リスクで、40%~30%も低下が見られたとされています。ただしこの調査では、不思議なことに、女性ではこの傾向はあまり見られず、また「直腸がん」だけで見ると、リスク低減効果は認められませんでした。どのがんにも効果ありというわけではなかったのですが、体を日常的にしっかり動かすことの重要性がうかがえるデータです。他にも「乳がん」では、米国の疫学調査が知られていますが、身体活動が高い女性は、身体活動が低い女性に比べておよそ12%ほど乳がん発症リスクが下がるという報告があります。その身体活動の中身ですが、酸素を効率よく取り込む能力である「有酸素性能力」と関係することも解明が進み、有酸素性能力が高いほどがん発症のリスクは下がる傾向であることがわかってきました。また身体活動が増加するとがん発症が抑えられるメカニズムについては、まだよくわかっていないのですが、肥満の予防、免疫力の増強、腸管ぜん動の促進、プロスタグランジン(がんの増殖や転移に関連する生理活性物質)の低下などが深く関わっているのではないかと現在は推察されています。2007年世界がん研究基金米国がん研究機構の報告書には、どんな身体活動であっても複数のがん(大腸がん、乳がん、子宮体がん)に予防的であり、静的な生活は複数のがんの原因になると明記しています。無理なく身体活動量を上げる生活習慣がこれからの「がん予防」のキーワードとなりそうです。
参考:「健康づくりNo.451、2015」(健康・体力づくり事業財団)


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