~おとぎ話のような「植物たち」の会話術!解き明かされる驚異の自己防衛~
地球の生命の研究史を考えるとき、その存在の重要性にくらべて全くフェアな扱いをされてこなかった存在があります。それは地上の緑のカーテン、「植物」です。植物の研究は動物にくらべやや軽んじられてきたのではないかという意見があります。植物が実は、想像以上に様々な「感覚」を持っていたり、また動物にも劣らない「知恵」もあって、周りの同じ仲間や動物と化学物質を通じて「コミュニケーション」をはかっていることがわかってきたのはほんの20年ほど前のことです。微量物質の検出が技術の進歩で可能になったことで、こうした不思議な植物が放出する化学物質の実態が明かされてきました。たとえば「生物間相互作用ネットワーク」と難しい用語で呼ばれている現象があります。キャベツ畑でキャベツの葉に、アオムシ(モンシロチョウの幼虫)がついて食べはじめると、キャベツからはやがてSOS信号となる「かおり物質」が放たれて、この物質にアオムシの天敵となるアオムシコバチが呼びよせられます。このハチはアオムシに寄生してこのキャベツにとっての害虫を駆除してくれるので、キャベツは大きな食害から逃れることができるのです。さらに、もしキャベツが別のコナガの幼虫などから食べらたときは、キャベツからこのコナガの幼虫を食べてくれる天敵バチを誘引する「別のかおり物質」が放出するのです。つまりキャベツはついた虫によって、救ってくれる天敵を呼ぶ「かおり物質」を使い分けて放出しているのです。驚くべき事実といっていいでしょう。。現在の研究では、「かおり物質」は複数の化学物質のブレンドで構成されていて、そのブレンドの割合を変えることでこうした仕組みが出来上がっていることがわかっています。またアブラナ科のシロイヌナズナを用いた研究では、食害を受けた葉から発せられる物質によって、周りのまだ無傷の仲間の葉で、食害防御に関する遺伝子の活性をめるように誘導していることも確かめられています。植物は仲間を守っているのです。植物は「会話する生命体」だったのです。そしてこのかおり物質だけでなく、まだまだベールに隠された能力が植物にはあると考えられています。これまで静かに二酸化炭素を吸収して食物を提供してくれる存在といった認識しかなかった「植物」は、動物を越えて進化した存在として、まだ誰も本当の姿を知らないのかもしれません。
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