~「筋肉作り」でいま注目されている栄養素「VitaminD」~
この飽食の時代に信じられないのですが、現代の日本人のカロリー摂取は戦後すぐの食料不足時代より低くなる傾向だといわれています。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると1975年以降、日本人のカロリー摂取は右肩下がりで下がっています。背景にはダイエットの流行や食のかたより、朝食抜きの実態などがあると考えれています。特に炭水化物ととらないパレオ主義の人たちやダイエットに熱心な女性でその傾向は著しいといわれています。こうしたなかで心配されているのは微量栄養素の摂取不足です。特に再認識されなくてはならない栄養素として「ビタミンD」があります。ビタミンDといえばカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする栄養素として知られてきました。しかしこの数年の最新の研究では、ビタミンDは骨だけではなく体の「筋肉」を増強する作用があることがわかってきました。筋肉にはビタミンDと結合する「受容体」があり、受容体とビタミンDが結合すると筋肉中のタンパク質の合成が促進されると判明してきたのです。成人に必要なビタミンDは、1日あたり5~5.5マイクログラム。多く摂取する人のほうが、筋肉量が多いという報告があります。サンマ1匹あるいはサケ1切れでも20マイクログラムほどのビタミンDがあるので、この季節、魚食がいかにおいしくて、また理にかなったものであるかがわかります。そのほかキノコ類、卵などにもビタミンDは多く含まれています。高齢になるとタンパク合成能が低下するのみならず、腸でのアミノ酸吸収率が落ちるといわれています。筋肉を増やすための食事をどう摂るべきか、若い時期とは異なる調理法などを考えなければならないといえるのです。
2015年10月28日水曜日
2015年10月27日火曜日
~長寿遺伝子を活性化するメカニズムが解明される~
「酵母」の研究からそれは始まりました。パンやビールをつくるときに必要な酵母ですが、実験材料として長い歴史があります。酵母を栄養を減らした培養液で育てると、寿命が延びることが以前から知られていました。カロリー制限で長生きするという事実です。この事実からスタートし、その後の研究から、カロリー制限を行うと、細胞でミトコンドリア呼吸が促進し、エネルギー運搬分子のNADが増え、そのためサーチュイン遺伝子が活性化する。そして最終的にタンパク合成装置である「リボゾーム」の活動を安定化することで、細胞の寿命が伸びるということがわかってきました。サーチュイン遺伝子は、サルやヒトでも見つかり「長寿遺伝子」などと呼ばれるようになりました。その後、サーチュイン遺伝子を活性化する物質(レスベラトロール)が赤ワインやピーナッツに皮などに含まれるポリフェノールから見つかり、サプリメントとして爆発的な売れ行きを見せたことはご存知のかたも多いと思います。マウスの実験ですが、レスベラトロールを餌として投与することで寿命の延伸効果が初めて科学的に証明されました。これは夢のあるすばらしい研究報告です。こうしてサーチュイン・レスベラトロール学説は華やかに登場し、現在も熱い視線が注がれています。しかしこれに反論する研究結果も、現在数多く発表されています。ヒトの肥満者での検討ではレスベラトロールは効果がまったくみられなかったというものなどがあります。まだこの長寿延命効果の論争は決着がついていないのです。サプリメントに奔るのはまだ少し早いようですが、カロリーの摂取量と寿命という、生命の「不思議なしくみ」をここでも感じさせてくれます。
「酵母」の研究からそれは始まりました。パンやビールをつくるときに必要な酵母ですが、実験材料として長い歴史があります。酵母を栄養を減らした培養液で育てると、寿命が延びることが以前から知られていました。カロリー制限で長生きするという事実です。この事実からスタートし、その後の研究から、カロリー制限を行うと、細胞でミトコンドリア呼吸が促進し、エネルギー運搬分子のNADが増え、そのためサーチュイン遺伝子が活性化する。そして最終的にタンパク合成装置である「リボゾーム」の活動を安定化することで、細胞の寿命が伸びるということがわかってきました。サーチュイン遺伝子は、サルやヒトでも見つかり「長寿遺伝子」などと呼ばれるようになりました。その後、サーチュイン遺伝子を活性化する物質(レスベラトロール)が赤ワインやピーナッツに皮などに含まれるポリフェノールから見つかり、サプリメントとして爆発的な売れ行きを見せたことはご存知のかたも多いと思います。マウスの実験ですが、レスベラトロールを餌として投与することで寿命の延伸効果が初めて科学的に証明されました。これは夢のあるすばらしい研究報告です。こうしてサーチュイン・レスベラトロール学説は華やかに登場し、現在も熱い視線が注がれています。しかしこれに反論する研究結果も、現在数多く発表されています。ヒトの肥満者での検討ではレスベラトロールは効果がまったくみられなかったというものなどがあります。まだこの長寿延命効果の論争は決着がついていないのです。サプリメントに奔るのはまだ少し早いようですが、カロリーの摂取量と寿命という、生命の「不思議なしくみ」をここでも感じさせてくれます。
2015年10月24日土曜日
~文明史2000年を生き抜いてきた宗教とは何か?~
人類はすべて「アフリカ人」の子孫であると現代の科学は証明しています。いま生きているヒトは皆アフリカ人の子供たちなのです。数万年前に出アフリカした現生人類の先祖たちは、ネアンデルタール人などとも遭遇しながらヨーロッパへ、ユーラシアへ、アジアへ拡散していきました。そうした長い歴史(地球の歴史からみるとほんの一瞬ですが)のなかで、人は狩猟生活からやがて農業、生活道具、灌漑工事などを発明してきました。この時間の流れで一番不思議に感じるのは、主に中東地域で誕生したキリスト教やイスラム教といった精神生活の発明、「宗教」です。21世紀を迎え、宇宙の謎がわかり、DNAの存在や生物進化も解明されていくなかで、宗教の教えは力強く生き残っています。この現代にあっても進化論やビッグバーン宇宙論などを排除するキリスト教の教えを多くの人々はこころの拠り所としています。考えてみてください、2000年も変わらず、信仰されてきた教えとは何とすごい力を秘めているのでしょうか。宗教のためにすべてを犠牲にし、夢中になれる、あのイスラム国の人々を見ると人類は、Homo Monastica 信仰を持つ生き物だと思ってしまいます。ひるがえって、私たち日本人は、生まれてからおよそ真の宗教に「感染」せずに生きてきているので、中東やインド、アジアの人々の宗教への姿勢はまったく理解ができません。それが幸せか不幸かはわかりませんが。無神論がいいとは言いませんが、宗教とちょうどいい距離を保つ姿勢や方法を皆が身につけてほしいと考えますが、いかがでしょう。
人類はすべて「アフリカ人」の子孫であると現代の科学は証明しています。いま生きているヒトは皆アフリカ人の子供たちなのです。数万年前に出アフリカした現生人類の先祖たちは、ネアンデルタール人などとも遭遇しながらヨーロッパへ、ユーラシアへ、アジアへ拡散していきました。そうした長い歴史(地球の歴史からみるとほんの一瞬ですが)のなかで、人は狩猟生活からやがて農業、生活道具、灌漑工事などを発明してきました。この時間の流れで一番不思議に感じるのは、主に中東地域で誕生したキリスト教やイスラム教といった精神生活の発明、「宗教」です。21世紀を迎え、宇宙の謎がわかり、DNAの存在や生物進化も解明されていくなかで、宗教の教えは力強く生き残っています。この現代にあっても進化論やビッグバーン宇宙論などを排除するキリスト教の教えを多くの人々はこころの拠り所としています。考えてみてください、2000年も変わらず、信仰されてきた教えとは何とすごい力を秘めているのでしょうか。宗教のためにすべてを犠牲にし、夢中になれる、あのイスラム国の人々を見ると人類は、Homo Monastica 信仰を持つ生き物だと思ってしまいます。ひるがえって、私たち日本人は、生まれてからおよそ真の宗教に「感染」せずに生きてきているので、中東やインド、アジアの人々の宗教への姿勢はまったく理解ができません。それが幸せか不幸かはわかりませんが。無神論がいいとは言いませんが、宗教とちょうどいい距離を保つ姿勢や方法を皆が身につけてほしいと考えますが、いかがでしょう。
2015年10月21日水曜日
~生き残っていた?九州のツキノワグ~ いまこそ発言せよ保全生態学者たち!
九州の福岡、佐賀県境でクマが目撃されたというニュースが流れています。すでのツキノワグマは九州では絶滅したと宣言(平成24年)されていることや、脊振山という森はクマが生息するのは狭すぎると考えれていますが、どこかで生き残った系統か、あるいは本州から泳いで渡ってきたのではないか、などさまざまな議論がなされています。しかしメディアにあまりにも見識がないのも気になります。大方のメディアは野生生物の存在の意義をまったく理解していません。もちろん人に危害をおよぼす可能性もあるので注意は必要ですが、もしツキノワグマだとすると、この開発が進む日本国内の森林でよくぞ生きのびてくれたと、野生の命に賛美を送りたい気持ちです。あまり意識されることはないのですが、先進工業国で野生のサルが広く地域に生息している国は世界にはわが国以外存在しません。それだけ水と緑にめぐまれた土地ということです。しかし国民の野生生物に対する理解がこんなに不足している社会もないように思います。生態系でクマやサルが生きていけるということの素晴らしさをもっともっと理解しなくてはなりません。クマには「プレデター(捕食者)」としての重要な存在意味があります。シカとオオカミのように、プレデターであるオオカミがいなくなるとシカは生態系で異常繁殖したり歯止めが効かなくなります。クマにも自然で大きなや役割があたえれrているはずです。保全生物学や生態学の研究からすでに多くの捕食のメカニズムが明らかにされてきました。なんといとおしい命、日本のツキノワグマたち。日本の農学者や保全生態学者はこうしたタイミングでこそ、野生生物と生態系の意味を市民にもっと強く説いてほしい。メディアへの発言は、クマが単に危険生物だというような、短絡的で無知な発言はやめてほしいと願うばかりです。
九州の福岡、佐賀県境でクマが目撃されたというニュースが流れています。すでのツキノワグマは九州では絶滅したと宣言(平成24年)されていることや、脊振山という森はクマが生息するのは狭すぎると考えれていますが、どこかで生き残った系統か、あるいは本州から泳いで渡ってきたのではないか、などさまざまな議論がなされています。しかしメディアにあまりにも見識がないのも気になります。大方のメディアは野生生物の存在の意義をまったく理解していません。もちろん人に危害をおよぼす可能性もあるので注意は必要ですが、もしツキノワグマだとすると、この開発が進む日本国内の森林でよくぞ生きのびてくれたと、野生の命に賛美を送りたい気持ちです。あまり意識されることはないのですが、先進工業国で野生のサルが広く地域に生息している国は世界にはわが国以外存在しません。それだけ水と緑にめぐまれた土地ということです。しかし国民の野生生物に対する理解がこんなに不足している社会もないように思います。生態系でクマやサルが生きていけるということの素晴らしさをもっともっと理解しなくてはなりません。クマには「プレデター(捕食者)」としての重要な存在意味があります。シカとオオカミのように、プレデターであるオオカミがいなくなるとシカは生態系で異常繁殖したり歯止めが効かなくなります。クマにも自然で大きなや役割があたえれrているはずです。保全生物学や生態学の研究からすでに多くの捕食のメカニズムが明らかにされてきました。なんといとおしい命、日本のツキノワグマたち。日本の農学者や保全生態学者はこうしたタイミングでこそ、野生生物と生態系の意味を市民にもっと強く説いてほしい。メディアへの発言は、クマが単に危険生物だというような、短絡的で無知な発言はやめてほしいと願うばかりです。
2015年10月18日日曜日
~社会的脆弱性指標・・・あなたは他者から敬意を持って扱われているか~
「フレイル」という新たな概念が身体的、精神的、社会的の3つの要因から成り立つとする考え方は、実はWHO(世界保健機関)がすでに「健康の定義」として宣言したものにきわめて酷似しています。WHOの健康の定義では、健康とは「病気でないとか弱っていないというだけではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にもすべてが満たされや状態にあること」とされています。社会的に満たされていること、つまり「social well-being」とは、周りに支援してくれる家族、友人がいて、他者との密接な関係と同時に他者への信頼があり、他者から公平に敬意を持って扱われていること、総じて信頼と帰属意識がある状態をいうとのことです。いま社会的な虚弱が、本当に寝たきりや死亡率を高めるのかが研究者の大きな関心事となっています。そこで「社会的脆弱性指標」というのが提案されていています。この社会的脆弱性指標とは、支援の有無、友人、親戚、近所づきあい、電話の使用、老司クラブ、スポーツクラブの活動、経済状況、配偶状況、読み書きなど40項目が挙げられています。カナダでのあるコホート研究(アンドリューら)では、社会的脆弱性指標が高いほど死亡率が高いことが示されたといいます。日本では、介護保険のための「基本チエックリスト」がこの社会的脆弱性指標のひとつになるのではないかといま再評価されています。このリストでは、外出の頻度、買い物、貯金の出し入れ、友人訪問、家族との相談などが項目で挙げられているのです。いづれにしても社会とのつながりがあってこそ、人は人らしく生きられるいうことでしょうか。
「フレイル」という新たな概念が身体的、精神的、社会的の3つの要因から成り立つとする考え方は、実はWHO(世界保健機関)がすでに「健康の定義」として宣言したものにきわめて酷似しています。WHOの健康の定義では、健康とは「病気でないとか弱っていないというだけではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にもすべてが満たされや状態にあること」とされています。社会的に満たされていること、つまり「social well-being」とは、周りに支援してくれる家族、友人がいて、他者との密接な関係と同時に他者への信頼があり、他者から公平に敬意を持って扱われていること、総じて信頼と帰属意識がある状態をいうとのことです。いま社会的な虚弱が、本当に寝たきりや死亡率を高めるのかが研究者の大きな関心事となっています。そこで「社会的脆弱性指標」というのが提案されていています。この社会的脆弱性指標とは、支援の有無、友人、親戚、近所づきあい、電話の使用、老司クラブ、スポーツクラブの活動、経済状況、配偶状況、読み書きなど40項目が挙げられています。カナダでのあるコホート研究(アンドリューら)では、社会的脆弱性指標が高いほど死亡率が高いことが示されたといいます。日本では、介護保険のための「基本チエックリスト」がこの社会的脆弱性指標のひとつになるのではないかといま再評価されています。このリストでは、外出の頻度、買い物、貯金の出し入れ、友人訪問、家族との相談などが項目で挙げられているのです。いづれにしても社会とのつながりがあってこそ、人は人らしく生きられるいうことでしょうか。
2015年10月16日金曜日
~社会的存在であってこそ”健康長寿”な人である~
高齢者の体の変化を「フレイル」ということばで捉える研究が現在進んでいると紹介しました。健康寿命の延伸をめざし、これまで「メタボ」、「ロコモ」、あるいは「脳の活性化」といった内科や整形外科等からのアプローチがありましたが、フレイルが強く関心を寄せている課題のひとつは他の考え方と際立って異なっています。それは社会的な存在として健康を捉えるという、「社会的フレイル」の考え方です。このキーワードはいわば医学の範疇を越えていて、フレイルという概念を最も特徴づけています。それはこれまでの高齢者の観察から、地域社会や家族との関係が希薄化したり、あるいは家に引きこもったりすることが、寝たきりの症状やからだの虚弱化をさらに大きく促すことが経験上、明らかになってきたことがあげられます。高齢者が、転ぶことが怖いので外出しない、家の中でずっと時間を過ごしている、趣味や楽しみもなくなったといった生活状況になると、あったいう間に身体的な能力が低下し(身体的フレイル)、さらには認知機能も低下(認知症など)しやすくなるというのです。こうした状況を数多く医師たちは見つめてきました。この「閉じこもり」、「他者との交流」、「趣味などの生きがい」といった問題に正面切って対峙しているのが。新たな概念「フレイル」です。すべてははじまったばかりの分野ですので、どう科学的に捉えて、どう分析し、またどう介入(個人へ、社会環境へ)すればいいのか、まだまだ診断法や分析する理論はありません。またはたして何らかの介入で社会的なフレイルは改善できるのか、それも未知数です。数多くの大きな課題が目の前にあるようです。しかし老化を生き物としての自然な経緯と考えて、医学だけでなく全人的なアプローチを試みるという医療が、いまはじまったといえるでしょう。
高齢者の体の変化を「フレイル」ということばで捉える研究が現在進んでいると紹介しました。健康寿命の延伸をめざし、これまで「メタボ」、「ロコモ」、あるいは「脳の活性化」といった内科や整形外科等からのアプローチがありましたが、フレイルが強く関心を寄せている課題のひとつは他の考え方と際立って異なっています。それは社会的な存在として健康を捉えるという、「社会的フレイル」の考え方です。このキーワードはいわば医学の範疇を越えていて、フレイルという概念を最も特徴づけています。それはこれまでの高齢者の観察から、地域社会や家族との関係が希薄化したり、あるいは家に引きこもったりすることが、寝たきりの症状やからだの虚弱化をさらに大きく促すことが経験上、明らかになってきたことがあげられます。高齢者が、転ぶことが怖いので外出しない、家の中でずっと時間を過ごしている、趣味や楽しみもなくなったといった生活状況になると、あったいう間に身体的な能力が低下し(身体的フレイル)、さらには認知機能も低下(認知症など)しやすくなるというのです。こうした状況を数多く医師たちは見つめてきました。この「閉じこもり」、「他者との交流」、「趣味などの生きがい」といった問題に正面切って対峙しているのが。新たな概念「フレイル」です。すべてははじまったばかりの分野ですので、どう科学的に捉えて、どう分析し、またどう介入(個人へ、社会環境へ)すればいいのか、まだまだ診断法や分析する理論はありません。またはたして何らかの介入で社会的なフレイルは改善できるのか、それも未知数です。数多くの大きな課題が目の前にあるようです。しかし老化を生き物としての自然な経緯と考えて、医学だけでなく全人的なアプローチを試みるという医療が、いまはじまったといえるでしょう。
2015年10月14日水曜日
~加齢にともなうカラダの変化にいま科学の眼が~
「フレイル」の研究はまだ始まったばかりで、世界的にみても15年ほどの歴史しかありません。そして「身体的なフレイル」については、診断について世界共通の基準が確立していないといわれています。現在評価方法として最もよく用いられているのは米国バルティモアの名門ジョンホプキンス医科大のフリード教授の身体的なフレイル診断法です。その評価の項目は、①筋力の低下(握力で測定)、②活動量の低下(生活不活発、消費カロリーの極端な低下)、③歩行速度の低下、④易疲労感(面倒と感じる、疲れやすい)、⑤体重減少(意図しない)とされています。このうち、3つ以上に該当があればフレイル、1つまたは2つ該当すれば「プレフレイル(フレイルの前段階)」とされます。また②や④はきわめて精神神経的な症状とも考えられますので単に身体的な衰弱だけではないと認識されていることがよくわかります。実際身体的なフレイルは、認知の障害あるいはアルツハイマー病を合併している場合が多いことが報告されています。いま認知症の研究者の中には「身体機能が低下する」ことで「認知機能」が低下していくという新たな考え方が生まれています。しかしこれはまだ科学的な実証がなく、認められた説とはなっていません。しかしいずれにしても、認知機能の低下や筋力の衰弱など加齢にともなう身体の変化が複雑に絡み合って「フレイル」という症状が進行している様子がうかがわれます。高齢者の体の変化はいまようやくその一部が少しずつ解明されようとしているのです。
「フレイル」の研究はまだ始まったばかりで、世界的にみても15年ほどの歴史しかありません。そして「身体的なフレイル」については、診断について世界共通の基準が確立していないといわれています。現在評価方法として最もよく用いられているのは米国バルティモアの名門ジョンホプキンス医科大のフリード教授の身体的なフレイル診断法です。その評価の項目は、①筋力の低下(握力で測定)、②活動量の低下(生活不活発、消費カロリーの極端な低下)、③歩行速度の低下、④易疲労感(面倒と感じる、疲れやすい)、⑤体重減少(意図しない)とされています。このうち、3つ以上に該当があればフレイル、1つまたは2つ該当すれば「プレフレイル(フレイルの前段階)」とされます。また②や④はきわめて精神神経的な症状とも考えられますので単に身体的な衰弱だけではないと認識されていることがよくわかります。実際身体的なフレイルは、認知の障害あるいはアルツハイマー病を合併している場合が多いことが報告されています。いま認知症の研究者の中には「身体機能が低下する」ことで「認知機能」が低下していくという新たな考え方が生まれています。しかしこれはまだ科学的な実証がなく、認められた説とはなっていません。しかしいずれにしても、認知機能の低下や筋力の衰弱など加齢にともなう身体の変化が複雑に絡み合って「フレイル」という症状が進行している様子がうかがわれます。高齢者の体の変化はいまようやくその一部が少しずつ解明されようとしているのです。
2015年10月13日火曜日
~「フレイル」という新語・・・高齢者は不可逆的に老いていくのではない~
老年医学の分野から提言されている「フレイル」とは、高齢期に生理的予備能が低下していくことでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害や要介護状態などの転機に陥りやすい状態とされています。介護保険で考えると、要支援プラス二次予防事業対象者に該当すると言われています。
なぜこうした概念が生まれてきたのかについては、これまで使われてきた「虚弱」、「老衰」、「脆弱」といった言葉だけでは、まことにネガティブな印象だけであり、加齢に伴うこうした高齢者の状態を正しくとらえておらず、なにより高齢期の多面的な要素や変化が表現できないからとされています。つまり上記のような脆弱になりつつある高齢者について分析・研究が進むことで、いまでは高齢者には①身体的なフレのイル②精神心理的なフレイル③社会的なフレイルの大きくは3つの要素、変化が存在するとわかってきたのです。そしてさらに科学的に証明されてきたのですが、この3つとも「適切な処置」を行う(介入)ことにより、生活機能・能力の維持向上を図ることが大いに期待できるというのです。これは高齢者にとってまことにうれしい事実といえるでしょう。不可逆的にただ老いていくという考え方はいまでは考えなおされているのです。いまこのフレイルという言葉は高齢者ケアや健康長寿の実現をめざす人々にとってホットな話題となり、多くの専門家による議論や研究の輪がひろがりつつあります。3つの要素についてはこの後少しづつ考えていきたいと思います。
老年医学の分野から提言されている「フレイル」とは、高齢期に生理的予備能が低下していくことでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害や要介護状態などの転機に陥りやすい状態とされています。介護保険で考えると、要支援プラス二次予防事業対象者に該当すると言われています。
なぜこうした概念が生まれてきたのかについては、これまで使われてきた「虚弱」、「老衰」、「脆弱」といった言葉だけでは、まことにネガティブな印象だけであり、加齢に伴うこうした高齢者の状態を正しくとらえておらず、なにより高齢期の多面的な要素や変化が表現できないからとされています。つまり上記のような脆弱になりつつある高齢者について分析・研究が進むことで、いまでは高齢者には①身体的なフレのイル②精神心理的なフレイル③社会的なフレイルの大きくは3つの要素、変化が存在するとわかってきたのです。そしてさらに科学的に証明されてきたのですが、この3つとも「適切な処置」を行う(介入)ことにより、生活機能・能力の維持向上を図ることが大いに期待できるというのです。これは高齢者にとってまことにうれしい事実といえるでしょう。不可逆的にただ老いていくという考え方はいまでは考えなおされているのです。いまこのフレイルという言葉は高齢者ケアや健康長寿の実現をめざす人々にとってホットな話題となり、多くの専門家による議論や研究の輪がひろがりつつあります。3つの要素についてはこの後少しづつ考えていきたいと思います。
2015年10月12日月曜日
~DNA型生命は広大な宇宙にひろく存在するのか?~
SFの中で語られてきた「地球外生命」の存在。地球以外に生命を宿す星はあるのだろうか・・、いまその答えに人類の歴史上はじめて科学的な解明がなされようとしています。ひとつは太陽系の中でその答えを見つけようとしています。液体の水が存在する火星や、小惑星などはその候補となっています。準惑星に格下げされたあの「冥王星」に史上はじめて接近した無人探査機「ニューホライズンズ」の送ってきた鮮明な画像をご覧になったでしょうか。複雑な山脈や砂浜が見つかっており、なにより逆光で撮影された薄い大気の青い映像は、青空が存在する証明でどこかに生命がいてもおかしくないと感じさせてくれます。そしてもうひとつのターゲットは、太陽系の外にある、遠い恒星の周りをまわる惑星(系外惑星と呼ばれていますが)です。こうした惑星は、自ら光を発することはないので非常に観測がむつかしかったのですが、様々な観測法の進歩で次々と見つかるようになりました。いまでは3500個もの「系外惑星」の存在が知られています。その多くは太陽系の常識では考えられない軌道を持つ惑星が多くみつかり、人類がスタンダードと考えていた太陽系は、宇宙の中では少数派かもしれないという議論もあります。2030年ころまでに観測を集中する惑星が絞り込まれて、国際共同研究で生命現象の存在が証明されていくと考えられています。はたしてそれは地球生命と同じDNAを持った生命なのでしょうか。別のタイプの生命体なのでしょうか。多くの科学者はおそらく地球と同じ生命が、この宇宙には生存しているのではないかと考えています。生命はなぜ存在するのか、どこから来たのか、これまでの人類数千年の宗教や科学、哲学、思想を根底的にひっくり返す大発見がいまそこまで来ているのです。
SFの中で語られてきた「地球外生命」の存在。地球以外に生命を宿す星はあるのだろうか・・、いまその答えに人類の歴史上はじめて科学的な解明がなされようとしています。ひとつは太陽系の中でその答えを見つけようとしています。液体の水が存在する火星や、小惑星などはその候補となっています。準惑星に格下げされたあの「冥王星」に史上はじめて接近した無人探査機「ニューホライズンズ」の送ってきた鮮明な画像をご覧になったでしょうか。複雑な山脈や砂浜が見つかっており、なにより逆光で撮影された薄い大気の青い映像は、青空が存在する証明でどこかに生命がいてもおかしくないと感じさせてくれます。そしてもうひとつのターゲットは、太陽系の外にある、遠い恒星の周りをまわる惑星(系外惑星と呼ばれていますが)です。こうした惑星は、自ら光を発することはないので非常に観測がむつかしかったのですが、様々な観測法の進歩で次々と見つかるようになりました。いまでは3500個もの「系外惑星」の存在が知られています。その多くは太陽系の常識では考えられない軌道を持つ惑星が多くみつかり、人類がスタンダードと考えていた太陽系は、宇宙の中では少数派かもしれないという議論もあります。2030年ころまでに観測を集中する惑星が絞り込まれて、国際共同研究で生命現象の存在が証明されていくと考えられています。はたしてそれは地球生命と同じDNAを持った生命なのでしょうか。別のタイプの生命体なのでしょうか。多くの科学者はおそらく地球と同じ生命が、この宇宙には生存しているのではないかと考えています。生命はなぜ存在するのか、どこから来たのか、これまでの人類数千年の宗教や科学、哲学、思想を根底的にひっくり返す大発見がいまそこまで来ているのです。
2015年10月9日金曜日
~若い時期から準備をはじめなければ、すこやかな高齢者にはなれない~
「生活筋力」という用語がコマーシャルなどでも使用されるようになってきました。日常生活を営むのに必要な筋肉量と筋力を意味する言葉とされています。階段の昇り降り、掃除や布団の上げ下げなどが、苦痛を感じることなく行える能力があるということです。例えば以前も述べた「歩行速度」も筋力のめやすです。青信号で道路を渡ることができる時間は、歩行速度が毎秒1メートルの速度で設計されています。横断歩道が渡れないとなると、歩行速度が遅くなっているということになるので要注意です。いわゆる「後期高齢者」の問題といえますが、筋肉は、部位にもよるのですが驚くことに30歳を越えると、10年で約5%程度の割合で減少していくという報告があります。筋肉は使えば使う分筋量は維持できるのですが、使わないと、体は余分なものとして判断してあっという間に細くなっていくのです。握力も50歳代から徐々に低下していきます。重い荷物が持てなくなったとか持つのがおっくうになったというのは、上半身の筋肉の減少が考えられます。これらの事実は、筋肉の減少の問題が決して後期高齢者の問題ではなく、中高年の時代から意識し、健全な生活習慣を養っていかなければならないということを教えているのです。
「生活筋力」という用語がコマーシャルなどでも使用されるようになってきました。日常生活を営むのに必要な筋肉量と筋力を意味する言葉とされています。階段の昇り降り、掃除や布団の上げ下げなどが、苦痛を感じることなく行える能力があるということです。例えば以前も述べた「歩行速度」も筋力のめやすです。青信号で道路を渡ることができる時間は、歩行速度が毎秒1メートルの速度で設計されています。横断歩道が渡れないとなると、歩行速度が遅くなっているということになるので要注意です。いわゆる「後期高齢者」の問題といえますが、筋肉は、部位にもよるのですが驚くことに30歳を越えると、10年で約5%程度の割合で減少していくという報告があります。筋肉は使えば使う分筋量は維持できるのですが、使わないと、体は余分なものとして判断してあっという間に細くなっていくのです。握力も50歳代から徐々に低下していきます。重い荷物が持てなくなったとか持つのがおっくうになったというのは、上半身の筋肉の減少が考えられます。これらの事実は、筋肉の減少の問題が決して後期高齢者の問題ではなく、中高年の時代から意識し、健全な生活習慣を養っていかなければならないということを教えているのです。
2015年10月7日水曜日
~健康長寿社会実現へ立ちはだかる大きな課題、筋肉減少症~
加齢とともに筋肉が減っていく、加齢性筋肉減少症=サルコペニア。アメリカの医師ローゼンバーグが、1989年に提唱した比較的新しい概念です。その診断基準については議論が続いていますが、ヨーロッパの研究グループが診断基準を出した後、2014年日本が中心となって体格の異なるアジア人の診断基準がアジアの研究者の手で発表されました。現在の診断基準としてはまずは歩行速度の測定。一秒間に0.8メートル以下のスピードでしか歩けないと、歩行速度は低下していると判定されます。つぎは握力の測定です。男性で26kg未満、女性で18kg未満だと握力が落ちていると判定されます。そしてDXA、BIAなどの筋肉量測定装置で体の筋肉量を正確に測定し、低筋肉と判定されると、サルコペニアと総合診断がなされるのです。このサルコぺアがどのようなメカニズムで進行するのか、いまは筋肉内でタンパク質の合成と分解のバランスが崩れるからとしかわかっていません。またこのサルコペニアを予防したり治療したりする承認された薬剤は残念ながらまだありません。対策としては、有酸素運動とともにレジスタンス運動(筋トレ)が筋肉量増加の効果があることが認められており、それてともに栄養管理宇が大切とされます。日本人のタンパク質摂取量は平均で一日あたり0.8g/kgとされていますが、サルコペニアの症状がある方は1.2から1.5g/kgと倍程度の摂取が要るとされるのです。またビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群などの適切な摂取も大事とされます。この分野の話題は、ますますこれから大きな社会的な意味をもっていくものと思われます。
加齢とともに筋肉が減っていく、加齢性筋肉減少症=サルコペニア。アメリカの医師ローゼンバーグが、1989年に提唱した比較的新しい概念です。その診断基準については議論が続いていますが、ヨーロッパの研究グループが診断基準を出した後、2014年日本が中心となって体格の異なるアジア人の診断基準がアジアの研究者の手で発表されました。現在の診断基準としてはまずは歩行速度の測定。一秒間に0.8メートル以下のスピードでしか歩けないと、歩行速度は低下していると判定されます。つぎは握力の測定です。男性で26kg未満、女性で18kg未満だと握力が落ちていると判定されます。そしてDXA、BIAなどの筋肉量測定装置で体の筋肉量を正確に測定し、低筋肉と判定されると、サルコペニアと総合診断がなされるのです。このサルコぺアがどのようなメカニズムで進行するのか、いまは筋肉内でタンパク質の合成と分解のバランスが崩れるからとしかわかっていません。またこのサルコペニアを予防したり治療したりする承認された薬剤は残念ながらまだありません。対策としては、有酸素運動とともにレジスタンス運動(筋トレ)が筋肉量増加の効果があることが認められており、それてともに栄養管理宇が大切とされます。日本人のタンパク質摂取量は平均で一日あたり0.8g/kgとされていますが、サルコペニアの症状がある方は1.2から1.5g/kgと倍程度の摂取が要るとされるのです。またビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群などの適切な摂取も大事とされます。この分野の話題は、ますますこれから大きな社会的な意味をもっていくものと思われます。
2015年10月5日月曜日
~医学・健康分野ではいま、「筋肉」に注目があつまっています~
加齢とともに骨格筋などの筋肉量が減り、筋力も低下することが知られています。生活活動が減り、寝たきりやひきこもりとなる原因となります。医学用語では「サルコペニア」といわれています。
そこでこれまでは、適切な運動による筋肉の維持強化が大切と強調されてきました。筋肉は70代、80代になっても鍛錬で強化できることがわかっているからです。筋肉が増えると関節や脊柱の働きを正常化し、基礎代謝も上がり生活習慣病の予防改善効果があるなど、健康増進にはすべてプラスの方向で働きます。しかし筋肉づくりには適切な栄養摂取が必須であることが、これまですこし軽視される傾向にありました。リハビリテーションの分野でも同じことが言え、ようやくリハビリテーション栄養学なる学問が確立されるようになったのは最近のことです。筋肉強化の栄養素としては、タンパク質とビタミンDなどですが、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、どういうアミノ酸のバランスが筋肉への吸収を促すかなども解明されてきました。またビタミンDの摂取量は日本人では意外と低くなってきているという指摘もあります。そしてあまり語られないのですが、同じように肉や魚を食していても、高齢者では腸からの吸収率が低下しているので若いときと同じような摂取ができないという悲しい事実もあります。栄養をしっかり管理して運動をおこなわないと逆効果ということが起こりかねません。医学の分野では「筋肉」は、特殊な病気しか存在しないという事情もあり、研究が遅れ「未開の地」とも呼ばれてきました。今年の夏、この「筋肉の諸問題」に正面から向き合う「日本筋学会」が誕生しました。今後の研究に期待が集まっています。
加齢とともに骨格筋などの筋肉量が減り、筋力も低下することが知られています。生活活動が減り、寝たきりやひきこもりとなる原因となります。医学用語では「サルコペニア」といわれています。
そこでこれまでは、適切な運動による筋肉の維持強化が大切と強調されてきました。筋肉は70代、80代になっても鍛錬で強化できることがわかっているからです。筋肉が増えると関節や脊柱の働きを正常化し、基礎代謝も上がり生活習慣病の予防改善効果があるなど、健康増進にはすべてプラスの方向で働きます。しかし筋肉づくりには適切な栄養摂取が必須であることが、これまですこし軽視される傾向にありました。リハビリテーションの分野でも同じことが言え、ようやくリハビリテーション栄養学なる学問が確立されるようになったのは最近のことです。筋肉強化の栄養素としては、タンパク質とビタミンDなどですが、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、どういうアミノ酸のバランスが筋肉への吸収を促すかなども解明されてきました。またビタミンDの摂取量は日本人では意外と低くなってきているという指摘もあります。そしてあまり語られないのですが、同じように肉や魚を食していても、高齢者では腸からの吸収率が低下しているので若いときと同じような摂取ができないという悲しい事実もあります。栄養をしっかり管理して運動をおこなわないと逆効果ということが起こりかねません。医学の分野では「筋肉」は、特殊な病気しか存在しないという事情もあり、研究が遅れ「未開の地」とも呼ばれてきました。今年の夏、この「筋肉の諸問題」に正面から向き合う「日本筋学会」が誕生しました。今後の研究に期待が集まっています。
2015年10月3日土曜日
~鳥類は爬虫類だった?という現代生物学の到達点~
地球上で2億年近くの長期にわたり大繁栄し、あるとき突然絶滅したことになっている「恐竜」。しかし今では、恐竜は絶滅したわけではなくひとつの系統が生き延びていると結論づけられています。
その生き延びた生き物、それは「鳥類」なのです。鳥類は「最も進化した恐竜で、爬虫類である」と現代生物学では考えられています。スズメやムクドリなど街に住む野鳥を見ている限り、恐竜の子孫というのは信じがたいのですが、動かない鳥として有名になった「ハシビロコウ」などの大型鳥のにらみつける形相を見ていると、時々なるほどと恐竜を彷彿させるものがあるように感じます。恐竜の種としての2大潮流、鳥盤類と竜盤類のうち竜盤類の系統から「気嚢(きのう)システム」という、低酸素でも効率よくガス交換できる体組織を獲得するものが現われました。気嚢システムは、地球史において酸素が薄かった時代に、恐竜たちに有利に働いたと考えられています。このしくみは一方で恐竜の大型化そして他方では軽量化をもたらしたといいます。またすでに多くに羽毛が生えていたこともわかっていますが、竜盤類のうちの「獣脚類」の一部が、6550万年前の大絶滅を生き延び、現在の鳥になったというはいまや定説となっているのです。こうして鳥たちは恐竜から気嚢システムを受け継ぎました。ヒトだと呼吸さえできなくなる高度である、ヒマラヤの山脈上空を軽々越えて飛ぶ鳥類(アネハヅル)は、このシステムがあるからこそそうしたことが可能となっているのです。新しい生物学の教科書には、これから鳥類をどう呼びどう位置づけていくのでしょうか。
地球上で2億年近くの長期にわたり大繁栄し、あるとき突然絶滅したことになっている「恐竜」。しかし今では、恐竜は絶滅したわけではなくひとつの系統が生き延びていると結論づけられています。
その生き延びた生き物、それは「鳥類」なのです。鳥類は「最も進化した恐竜で、爬虫類である」と現代生物学では考えられています。スズメやムクドリなど街に住む野鳥を見ている限り、恐竜の子孫というのは信じがたいのですが、動かない鳥として有名になった「ハシビロコウ」などの大型鳥のにらみつける形相を見ていると、時々なるほどと恐竜を彷彿させるものがあるように感じます。恐竜の種としての2大潮流、鳥盤類と竜盤類のうち竜盤類の系統から「気嚢(きのう)システム」という、低酸素でも効率よくガス交換できる体組織を獲得するものが現われました。気嚢システムは、地球史において酸素が薄かった時代に、恐竜たちに有利に働いたと考えられています。このしくみは一方で恐竜の大型化そして他方では軽量化をもたらしたといいます。またすでに多くに羽毛が生えていたこともわかっていますが、竜盤類のうちの「獣脚類」の一部が、6550万年前の大絶滅を生き延び、現在の鳥になったというはいまや定説となっているのです。こうして鳥たちは恐竜から気嚢システムを受け継ぎました。ヒトだと呼吸さえできなくなる高度である、ヒマラヤの山脈上空を軽々越えて飛ぶ鳥類(アネハヅル)は、このシステムがあるからこそそうしたことが可能となっているのです。新しい生物学の教科書には、これから鳥類をどう呼びどう位置づけていくのでしょうか。
2015年10月2日金曜日
~65歳から本当に高齢者なの?日本のお年寄りの定義が揺らいでいます~
なんとなく皆感じているのですが、高齢者といってもすごく元気な方がいるということです。65歳以上の高齢者は知力、体力、あるいは健康状態についても20年の前の調査データと比べると各段に若返っているといいます。日本老年医学会が今年6月に横浜で開催された学術集会で発表した報告によりますと、以下のように日本のお年寄りの若返りが進んでいると伝えられています。
①「身体」では、歩行速度が男女とも11歳若返った。握力は男性で4歳若返り、女性で10歳と大幅の若返りが見られます。(桜美林大学・鈴木隆雄教授ら 秋田県での調査データを比較)
②「知力(知能検査)」では、60歳代の得点が過去の40.50歳代に近づき、70歳代は10年若返っている。(国立長寿医療研究センターにより大府市での知能検査を分析)
③「病気(健康状態)」では、心筋こうそくや脳卒中になる割合が大きく低下した。死亡率も下がり、10年前と比較すると5~10歳若い人と同じ程度となった。(東京大学老年医学・秋下雅弘教授ら)
これらの科学的なデータから総論すると「現在の高齢者は、10年から20年前に比べ、およそ5歳から10歳若返っていると考えられる」と結論できるそうです。同学会では現在の65歳以上と線引きされている「高齢者の定義」を見直す必要があるので検討したいとさえ宣言しています。また今後の課題として「活力ある超高齢社会を形作るために、高齢者が就労やボランティア活動に参加できる社会を作っていかなければならない」と声明を出しています。地球上でおそらく最も栄養や医療、環境と社会制度にも恵まれた日本人。せっかく伸びた体力とパワーを社会にも貢献できるようなものに誘導していけるがいま問われているようです。
なんとなく皆感じているのですが、高齢者といってもすごく元気な方がいるということです。65歳以上の高齢者は知力、体力、あるいは健康状態についても20年の前の調査データと比べると各段に若返っているといいます。日本老年医学会が今年6月に横浜で開催された学術集会で発表した報告によりますと、以下のように日本のお年寄りの若返りが進んでいると伝えられています。
①「身体」では、歩行速度が男女とも11歳若返った。握力は男性で4歳若返り、女性で10歳と大幅の若返りが見られます。(桜美林大学・鈴木隆雄教授ら 秋田県での調査データを比較)
②「知力(知能検査)」では、60歳代の得点が過去の40.50歳代に近づき、70歳代は10年若返っている。(国立長寿医療研究センターにより大府市での知能検査を分析)
③「病気(健康状態)」では、心筋こうそくや脳卒中になる割合が大きく低下した。死亡率も下がり、10年前と比較すると5~10歳若い人と同じ程度となった。(東京大学老年医学・秋下雅弘教授ら)
これらの科学的なデータから総論すると「現在の高齢者は、10年から20年前に比べ、およそ5歳から10歳若返っていると考えられる」と結論できるそうです。同学会では現在の65歳以上と線引きされている「高齢者の定義」を見直す必要があるので検討したいとさえ宣言しています。また今後の課題として「活力ある超高齢社会を形作るために、高齢者が就労やボランティア活動に参加できる社会を作っていかなければならない」と声明を出しています。地球上でおそらく最も栄養や医療、環境と社会制度にも恵まれた日本人。せっかく伸びた体力とパワーを社会にも貢献できるようなものに誘導していけるがいま問われているようです。
2015年10月1日木曜日
~地球の生き物を陰で操る「寄生虫」の不気味ですばらしいサバイバル術~
「寄生虫」と呼ばれるちょっと気味の悪い地球上の生物が、実はものすごい謎の力を持っており、多くの生き物たちを操っていることが、いま大きな話題になっています。NHKのEテレ「スーパープレゼンテーション」でも英国のサイエンスライターが講演し話題となりました。自殺するコオロギという現象があることをご存知でしょうか。ハリガネムシという寄生虫がいますが、コオロギはこの幼虫を食べます。そしてコオロギの体内でこの寄生虫は、育ち成虫となるのですが、ここからが自然の大いなる謎。この親となったハリガネムシは水中でないと交尾と産卵を行うことができません。そこでコオロギの脳に働きかけて、川や水場にダイビングして自殺するようにしむけるのです。水中に飛び込み死んだコオロギの死体から、このハリガネムシは姿を現し交尾へと向かいます。まことに不気味なライフサイクルですが、いったい誰がこんなストーリーを考えたのかとつい言いたくなるほど巧妙なしくみではありませんか。こうした寄生虫のやりかたは、他にも次々とみつかっており、なかでもネズミに寄生する単細胞生物、トキソプラズマの話はぞーっとします。トキソプラズマはマラリア原虫の仲間で、地球上で最も感染拡大に成功した病原性原虫ともいわれています。大きさは3×6ミクロンという原生生物です。もちろん脳とか神経系など持たない原始的な生物です。この原生生物もネコの体内だけで生殖が可能という悲しい宿命を背負っています。他の哺乳類にも寄生しますが、ネズミに寄生したとき、ネズミの神経活動を激変させます。ネコの尿の匂いを普通は恐れるののが正常ですが、感染したネズミはネコさん食べてくださいと逆にネコに近づくようになるのです。なぜこうした行動に変化するのか、いま分子レベルで解明が進んでいます。このトキソプラズマはある計算によると30億人もの人類が感染しているといわれており、人の行動への影響も実は真剣に研究されているのです。
「寄生虫」と呼ばれるちょっと気味の悪い地球上の生物が、実はものすごい謎の力を持っており、多くの生き物たちを操っていることが、いま大きな話題になっています。NHKのEテレ「スーパープレゼンテーション」でも英国のサイエンスライターが講演し話題となりました。自殺するコオロギという現象があることをご存知でしょうか。ハリガネムシという寄生虫がいますが、コオロギはこの幼虫を食べます。そしてコオロギの体内でこの寄生虫は、育ち成虫となるのですが、ここからが自然の大いなる謎。この親となったハリガネムシは水中でないと交尾と産卵を行うことができません。そこでコオロギの脳に働きかけて、川や水場にダイビングして自殺するようにしむけるのです。水中に飛び込み死んだコオロギの死体から、このハリガネムシは姿を現し交尾へと向かいます。まことに不気味なライフサイクルですが、いったい誰がこんなストーリーを考えたのかとつい言いたくなるほど巧妙なしくみではありませんか。こうした寄生虫のやりかたは、他にも次々とみつかっており、なかでもネズミに寄生する単細胞生物、トキソプラズマの話はぞーっとします。トキソプラズマはマラリア原虫の仲間で、地球上で最も感染拡大に成功した病原性原虫ともいわれています。大きさは3×6ミクロンという原生生物です。もちろん脳とか神経系など持たない原始的な生物です。この原生生物もネコの体内だけで生殖が可能という悲しい宿命を背負っています。他の哺乳類にも寄生しますが、ネズミに寄生したとき、ネズミの神経活動を激変させます。ネコの尿の匂いを普通は恐れるののが正常ですが、感染したネズミはネコさん食べてくださいと逆にネコに近づくようになるのです。なぜこうした行動に変化するのか、いま分子レベルで解明が進んでいます。このトキソプラズマはある計算によると30億人もの人類が感染しているといわれており、人の行動への影響も実は真剣に研究されているのです。
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