~なぜなの!ゾウはがんになりにくい・・その疑問が新たな治療法へと導く~
まだまだ命をめぐる不思議な話はあるようです。誰もが罹患したくないと思う病気として、がんとアルツハイマー病という高齢者にとってはやっかいな相手がいます。このがんとアルツハイマー病の発症についてお互いの関係を調べたところ、なんと「逆相関」するということがわかってきました(報告:2013 米国VA Boston Healthcare System).。350万人登る高齢者の追跡調査が行われましたが、がんに罹患した人は統合失調症やアルツハイマ―病、パーキンソン病になりにくいという意外な結果が報告されています。しかもこれはがんの種類によらないこともわかっています。この結果を受け研究者たちは、がんの存在がアルツハイマー病に対して、何らかの抑制効果を持つのであれば、アルツハイマ―病の新たな治療薬の開発につながるのではと考えはじめています。まだ仮説の段階ですが、がんを促進させる「遺伝子」が、片方では神経細胞を守る働きを持っているのではと考えられています。しかしその証拠もいくつか見えてきたといいます。そしてこれに類似した研究として、動物の「ゾウ」についての研究があります。ゾウは大きい体にも関わらず、がんになる個体が少ないことが知られています。今年発表された研究結果では、その謎の一端が解明されました(2015 JAMA米国医師会雑誌)。遺伝子の分析を行ってみると、ゾウの体には、がんの形成を抑制するタンパク質(p53)を作るための「遺伝子」が38個あり、これはヒトに比べると19倍にも上る数だとわかったのです。つまりゾウには生まれつきがん化する細胞を殺傷する強力なメカニズムが備わっていたのです。実際がんで死亡するゾウは全体の5%に満たないといいます。ゾウの仲間は進化の過程でこうした能力を「遺伝子の改良」で生き延びてきたといえるでしょう。がんやアルツハイマー病を抑制するという知られていた事実や様々な側面を、遺伝子レベルまで深めて分析、研究すると、これまでにない抗がん剤の開発など新たな治療の光が見えてくるのかもしれません。
2015年12月28日月曜日
2015年12月25日金曜日
~おとぎ話のような「植物たち」の会話術!解き明かされる驚異の自己防衛~
地球の生命の研究史を考えるとき、その存在の重要性にくらべて全くフェアな扱いをされてこなかった存在があります。それは地上の緑のカーテン、「植物」です。植物の研究は動物にくらべやや軽んじられてきたのではないかという意見があります。植物が実は、想像以上に様々な「感覚」を持っていたり、また動物にも劣らない「知恵」もあって、周りの同じ仲間や動物と化学物質を通じて「コミュニケーション」をはかっていることがわかってきたのはほんの20年ほど前のことです。微量物質の検出が技術の進歩で可能になったことで、こうした不思議な植物が放出する化学物質の実態が明かされてきました。たとえば「生物間相互作用ネットワーク」と難しい用語で呼ばれている現象があります。キャベツ畑でキャベツの葉に、アオムシ(モンシロチョウの幼虫)がついて食べはじめると、キャベツからはやがてSOS信号となる「かおり物質」が放たれて、この物質にアオムシの天敵となるアオムシコバチが呼びよせられます。このハチはアオムシに寄生してこのキャベツにとっての害虫を駆除してくれるので、キャベツは大きな食害から逃れることができるのです。さらに、もしキャベツが別のコナガの幼虫などから食べらたときは、キャベツからこのコナガの幼虫を食べてくれる天敵バチを誘引する「別のかおり物質」が放出するのです。つまりキャベツはついた虫によって、救ってくれる天敵を呼ぶ「かおり物質」を使い分けて放出しているのです。驚くべき事実といっていいでしょう。。現在の研究では、「かおり物質」は複数の化学物質のブレンドで構成されていて、そのブレンドの割合を変えることでこうした仕組みが出来上がっていることがわかっています。またアブラナ科のシロイヌナズナを用いた研究では、食害を受けた葉から発せられる物質によって、周りのまだ無傷の仲間の葉で、食害防御に関する遺伝子の活性をめるように誘導していることも確かめられています。植物は仲間を守っているのです。植物は「会話する生命体」だったのです。そしてこのかおり物質だけでなく、まだまだベールに隠された能力が植物にはあると考えられています。これまで静かに二酸化炭素を吸収して食物を提供してくれる存在といった認識しかなかった「植物」は、動物を越えて進化した存在として、まだ誰も本当の姿を知らないのかもしれません。
地球の生命の研究史を考えるとき、その存在の重要性にくらべて全くフェアな扱いをされてこなかった存在があります。それは地上の緑のカーテン、「植物」です。植物の研究は動物にくらべやや軽んじられてきたのではないかという意見があります。植物が実は、想像以上に様々な「感覚」を持っていたり、また動物にも劣らない「知恵」もあって、周りの同じ仲間や動物と化学物質を通じて「コミュニケーション」をはかっていることがわかってきたのはほんの20年ほど前のことです。微量物質の検出が技術の進歩で可能になったことで、こうした不思議な植物が放出する化学物質の実態が明かされてきました。たとえば「生物間相互作用ネットワーク」と難しい用語で呼ばれている現象があります。キャベツ畑でキャベツの葉に、アオムシ(モンシロチョウの幼虫)がついて食べはじめると、キャベツからはやがてSOS信号となる「かおり物質」が放たれて、この物質にアオムシの天敵となるアオムシコバチが呼びよせられます。このハチはアオムシに寄生してこのキャベツにとっての害虫を駆除してくれるので、キャベツは大きな食害から逃れることができるのです。さらに、もしキャベツが別のコナガの幼虫などから食べらたときは、キャベツからこのコナガの幼虫を食べてくれる天敵バチを誘引する「別のかおり物質」が放出するのです。つまりキャベツはついた虫によって、救ってくれる天敵を呼ぶ「かおり物質」を使い分けて放出しているのです。驚くべき事実といっていいでしょう。。現在の研究では、「かおり物質」は複数の化学物質のブレンドで構成されていて、そのブレンドの割合を変えることでこうした仕組みが出来上がっていることがわかっています。またアブラナ科のシロイヌナズナを用いた研究では、食害を受けた葉から発せられる物質によって、周りのまだ無傷の仲間の葉で、食害防御に関する遺伝子の活性をめるように誘導していることも確かめられています。植物は仲間を守っているのです。植物は「会話する生命体」だったのです。そしてこのかおり物質だけでなく、まだまだベールに隠された能力が植物にはあると考えられています。これまで静かに二酸化炭素を吸収して食物を提供してくれる存在といった認識しかなかった「植物」は、動物を越えて進化した存在として、まだ誰も本当の姿を知らないのかもしれません。
2015年12月24日木曜日
~スポーツの会に参加すると要介護となる人は必ず減少する!~
健康寿命の延伸のために、課題はどこにあるのか、そのためまずは日本の高齢者を取り巻く社会的な要因を分析し、その生活実態を探ることで明らかにしていこうという野心的な研究が、日本福祉大学の近藤克則教授らによって進められています。北海道から沖縄まで全国の31市町村に居住する65歳以上の高齢者で要介護の認定を受けていない人11万人(回答者)に対する調査が、何年にもわたって続けられています。調査項目を見ると大きく「健康」、「生活」、「社会」、「経済」などの4つの柱建てになっています。例えば健康では自立度、うつ、転倒、口腔ケア、栄養状態、また生活では閉じこもり、趣味、虐待、友人関係など、社会の項目では、地域への参加、ソーシャルキャピタル(社会での信頼関係)、経済の項目では収入、就業、教育歴などが調べ上げられ、高齢者の全体像を多面的にあぶりだそうとしているところがとても興味深いと思います。特にそのなかで、「運動疫学」とよばれる分野、つまり「スポーツ(組織)への参加」と「要介護の認定有無」との関連を検討した報告はいろいろなことを教えてくれます。この調査は愛知県の高齢者1万3千人(回答者)を分析したものですが、市民運動、ボランティア、趣味といった社会参加の項目と要介護になるリスクの関係が分析された結果、一番要介護になるリスクを低めたのは、スポーツの会への参加でした。何にも参加していないグループにくらべて、スポーツの会に参加しているグループは、何とリスクが34%低くなるというものでした。またスポーツ(運動)の回数やスポーツの会(組織)へ所属の有無など詳細を調べたものでは以下のような結果でした。週1回以上運動している人では、スポーツ組織に参加してる人にくらべ参加していない人は3割ほど要介護になりやすい(4年間に)、また週1回未満の方でもこれは同じような傾向を示したといいます。「スポーツの会への参加」がキーワードとして浮かび上がってきたのです。研究者たちは、組織へ参加することで、社会的な交流や支え合いなどがあり、その「心理的な効果」が結果として、要介護発生の抑制へとつながったのではないかと分析しています。地域での高齢者スポーツ組織の設立や拡充など、新たな介護予防対策がここからも見えてきたようです。 参考: 運動疫学研究 2013;15(1):31-35
健康寿命の延伸のために、課題はどこにあるのか、そのためまずは日本の高齢者を取り巻く社会的な要因を分析し、その生活実態を探ることで明らかにしていこうという野心的な研究が、日本福祉大学の近藤克則教授らによって進められています。北海道から沖縄まで全国の31市町村に居住する65歳以上の高齢者で要介護の認定を受けていない人11万人(回答者)に対する調査が、何年にもわたって続けられています。調査項目を見ると大きく「健康」、「生活」、「社会」、「経済」などの4つの柱建てになっています。例えば健康では自立度、うつ、転倒、口腔ケア、栄養状態、また生活では閉じこもり、趣味、虐待、友人関係など、社会の項目では、地域への参加、ソーシャルキャピタル(社会での信頼関係)、経済の項目では収入、就業、教育歴などが調べ上げられ、高齢者の全体像を多面的にあぶりだそうとしているところがとても興味深いと思います。特にそのなかで、「運動疫学」とよばれる分野、つまり「スポーツ(組織)への参加」と「要介護の認定有無」との関連を検討した報告はいろいろなことを教えてくれます。この調査は愛知県の高齢者1万3千人(回答者)を分析したものですが、市民運動、ボランティア、趣味といった社会参加の項目と要介護になるリスクの関係が分析された結果、一番要介護になるリスクを低めたのは、スポーツの会への参加でした。何にも参加していないグループにくらべて、スポーツの会に参加しているグループは、何とリスクが34%低くなるというものでした。またスポーツ(運動)の回数やスポーツの会(組織)へ所属の有無など詳細を調べたものでは以下のような結果でした。週1回以上運動している人では、スポーツ組織に参加してる人にくらべ参加していない人は3割ほど要介護になりやすい(4年間に)、また週1回未満の方でもこれは同じような傾向を示したといいます。「スポーツの会への参加」がキーワードとして浮かび上がってきたのです。研究者たちは、組織へ参加することで、社会的な交流や支え合いなどがあり、その「心理的な効果」が結果として、要介護発生の抑制へとつながったのではないかと分析しています。地域での高齢者スポーツ組織の設立や拡充など、新たな介護予防対策がここからも見えてきたようです。 参考: 運動疫学研究 2013;15(1):31-35
2015年12月21日月曜日
~そうだったのか!老化は直線的に機能が低下するというのはウソ~
「老化」について人々はどんなイメージを持っているでしょうか。それは運動能力や体力が徐々に低下していく、「右肩下がりのグラフ」のようなものではないでしょうか。こうした直線的に健康度が下がっていくという老化のモデルはいまや否定されつつあります。もちろん重い生活習慣病など疾病をもつ人は、健康寿命に届かずに死亡すると考えられますが、こうした特定の病気にならずに自然に老いる人は、実は晩年まで体の機能を相当部分維持していて、亡くなる直前に急激に機能が落ちていくという、「終末期低下型」と呼ばれる老化の推移をたどるといいます。これは海外や国内での研究から明らかになってきた新しい老化のイメージです。もう20年ほど前に、米国での100歳老人などを対象にした研究を取材したことがありますが、多くの老人が亡くなる直前まで体の機能が十分維持されている実像が明らかになりました。加齢とともに介護の程度がどんどん高まっていくという考え方は間違っていることが示され、その後の米国の高齢者対策に少なからず影響を及ぼしました。さらにこれまで老化現象そのものは「不可逆的に進行」するものと考えられてきましたが、体力や筋力の低下に対して、筋トレなど適切な方法でトレーニングを行うと、実際には身体機能が著しく落ちた人でも、改善する(不可逆的でなく機能が戻ることがある)ことは十分可能ということもわかってきたのです。これは高齢者にとって大きな朗報ではないでしょうか。高齢者は年々できることが減っていくものという通念は間違った考え方だったのです。高齢者の増加で医療費が限りなく増えていくといった懸念が持たれていますが、この新しい老化のイメージに切り替えれば、なにかもっと違うアイデアも生まれてくるのではないかと思います。いまこそ、皆がこの老化の真の姿を知る必要があります。この老化モデルを理解してもらうためには、親しまれる言葉で啓発する必要もあるようです。「ピンピンコロリ」という言葉はあまり好みません。筆者は、とりあえず「なだらか老化論」、「元気な老化モデル」あるいは「アクティブ老化」とかはどうかと考えています。
参考:「健康寿命の延ばし方」大渕修一著など
「老化」について人々はどんなイメージを持っているでしょうか。それは運動能力や体力が徐々に低下していく、「右肩下がりのグラフ」のようなものではないでしょうか。こうした直線的に健康度が下がっていくという老化のモデルはいまや否定されつつあります。もちろん重い生活習慣病など疾病をもつ人は、健康寿命に届かずに死亡すると考えられますが、こうした特定の病気にならずに自然に老いる人は、実は晩年まで体の機能を相当部分維持していて、亡くなる直前に急激に機能が落ちていくという、「終末期低下型」と呼ばれる老化の推移をたどるといいます。これは海外や国内での研究から明らかになってきた新しい老化のイメージです。もう20年ほど前に、米国での100歳老人などを対象にした研究を取材したことがありますが、多くの老人が亡くなる直前まで体の機能が十分維持されている実像が明らかになりました。加齢とともに介護の程度がどんどん高まっていくという考え方は間違っていることが示され、その後の米国の高齢者対策に少なからず影響を及ぼしました。さらにこれまで老化現象そのものは「不可逆的に進行」するものと考えられてきましたが、体力や筋力の低下に対して、筋トレなど適切な方法でトレーニングを行うと、実際には身体機能が著しく落ちた人でも、改善する(不可逆的でなく機能が戻ることがある)ことは十分可能ということもわかってきたのです。これは高齢者にとって大きな朗報ではないでしょうか。高齢者は年々できることが減っていくものという通念は間違った考え方だったのです。高齢者の増加で医療費が限りなく増えていくといった懸念が持たれていますが、この新しい老化のイメージに切り替えれば、なにかもっと違うアイデアも生まれてくるのではないかと思います。いまこそ、皆がこの老化の真の姿を知る必要があります。この老化モデルを理解してもらうためには、親しまれる言葉で啓発する必要もあるようです。「ピンピンコロリ」という言葉はあまり好みません。筆者は、とりあえず「なだらか老化論」、「元気な老化モデル」あるいは「アクティブ老化」とかはどうかと考えています。
参考:「健康寿命の延ばし方」大渕修一著など
2015年12月17日木曜日
~どんな身体活動であっても、複数の部位のがんに予防効果がある~
日常生活で体をしっかり動かしている(身体活動量が多い)人は、がんになるリスクが低いことが知られています。またがんを発症して治療を行った患者(がん生存者)の場合でも、定期的な運動を行うと、がん再発のリスクが下がるという研究成果も最近出されました。(2012年米国対がん協会「がん生存者のための栄養と運動のガイドライン」第4版)。国内の研究では、「大腸がん」の発生率について、全国の中高年男女6万5千人を追跡した厚生労働省の調査があります。それによると、体をよく動かしている活動量最大群(筋肉労働や激しいスポーツ行っている)の人と、そこまでの運動をしていなくても、日々の生活で1日3時間以上歩いたり、立ったりしたりしている人(身体活動量上位群)の場合は、「結腸がん」発症リスクで、40%~30%も低下が見られたとされています。ただしこの調査では、不思議なことに、女性ではこの傾向はあまり見られず、また「直腸がん」だけで見ると、リスク低減効果は認められませんでした。どのがんにも効果ありというわけではなかったのですが、体を日常的にしっかり動かすことの重要性がうかがえるデータです。他にも「乳がん」では、米国の疫学調査が知られていますが、身体活動が高い女性は、身体活動が低い女性に比べておよそ12%ほど乳がん発症リスクが下がるという報告があります。その身体活動の中身ですが、酸素を効率よく取り込む能力である「有酸素性能力」と関係することも解明が進み、有酸素性能力が高いほどがん発症のリスクは下がる傾向であることがわかってきました。また身体活動が増加するとがん発症が抑えられるメカニズムについては、まだよくわかっていないのですが、肥満の予防、免疫力の増強、腸管ぜん動の促進、プロスタグランジン(がんの増殖や転移に関連する生理活性物質)の低下などが深く関わっているのではないかと現在は推察されています。2007年世界がん研究基金米国がん研究機構の報告書には、どんな身体活動であっても複数のがん(大腸がん、乳がん、子宮体がん)に予防的であり、静的な生活は複数のがんの原因になると明記しています。無理なく身体活動量を上げる生活習慣がこれからの「がん予防」のキーワードとなりそうです。
参考:「健康づくりNo.451、2015」(健康・体力づくり事業財団)
日常生活で体をしっかり動かしている(身体活動量が多い)人は、がんになるリスクが低いことが知られています。またがんを発症して治療を行った患者(がん生存者)の場合でも、定期的な運動を行うと、がん再発のリスクが下がるという研究成果も最近出されました。(2012年米国対がん協会「がん生存者のための栄養と運動のガイドライン」第4版)。国内の研究では、「大腸がん」の発生率について、全国の中高年男女6万5千人を追跡した厚生労働省の調査があります。それによると、体をよく動かしている活動量最大群(筋肉労働や激しいスポーツ行っている)の人と、そこまでの運動をしていなくても、日々の生活で1日3時間以上歩いたり、立ったりしたりしている人(身体活動量上位群)の場合は、「結腸がん」発症リスクで、40%~30%も低下が見られたとされています。ただしこの調査では、不思議なことに、女性ではこの傾向はあまり見られず、また「直腸がん」だけで見ると、リスク低減効果は認められませんでした。どのがんにも効果ありというわけではなかったのですが、体を日常的にしっかり動かすことの重要性がうかがえるデータです。他にも「乳がん」では、米国の疫学調査が知られていますが、身体活動が高い女性は、身体活動が低い女性に比べておよそ12%ほど乳がん発症リスクが下がるという報告があります。その身体活動の中身ですが、酸素を効率よく取り込む能力である「有酸素性能力」と関係することも解明が進み、有酸素性能力が高いほどがん発症のリスクは下がる傾向であることがわかってきました。また身体活動が増加するとがん発症が抑えられるメカニズムについては、まだよくわかっていないのですが、肥満の予防、免疫力の増強、腸管ぜん動の促進、プロスタグランジン(がんの増殖や転移に関連する生理活性物質)の低下などが深く関わっているのではないかと現在は推察されています。2007年世界がん研究基金米国がん研究機構の報告書には、どんな身体活動であっても複数のがん(大腸がん、乳がん、子宮体がん)に予防的であり、静的な生活は複数のがんの原因になると明記しています。無理なく身体活動量を上げる生活習慣がこれからの「がん予防」のキーワードとなりそうです。
参考:「健康づくりNo.451、2015」(健康・体力づくり事業財団)
2015年12月14日月曜日
~「フレイル予防」に向けて、「ウォーキング法」をもっと研究開発すべき!~
日頃の運動(スポーツ)だけでなく、通勤での徒歩や家事などのその人の生活全体の活動量を合わせたものを「身体活動量」と呼ぶようになりました。自分の身体活動量はどのくらいあるのか、そして十分に体を動かしているのかなどを知ることは、中高年の健康維持や老化防止を考えるとき、非常に需要なファクターであると認識されています。特別な疾病のない人で、年齢別にどのくらいの運動量が望ましいかは、国の指針がすでに示されています。厚生労働省が作成した「健康づくりのための身体活動基準 2013」<アクティブガイド>です。ここでは、30分以上の運動を週2回行いましょうとか、歩く時間をあと10分増やしましょうとか具体的に運動量の増やし方を提言しています。これはメタボや心疾患などについて、運動することで予防効果があると実証された、世界のすべての論文をもとに検討されたものであり、いわゆる「エビデンス(科学的根拠)」に基づいた指針となっています。さらにこの身体活動基準では、身体活動量とがん、ロコモティブシンドローム、認知症のリスク低減効果についても検討を加えています。では高齢期の健康を考えるとき、いま最も大切な「フレイル」(身体的フレイル)についてはどうでしょう。例えば後期高齢者について身体活動はどのように考えるべきかとなると、まだまだエビデンスが足らないようです。よく知られているように、内閣府の調査では、70歳以上の人が行なっている運動・スポーツ種目は「ウォーキング」が56.4%と大多数を占めています。そこでこのウォーキングを習慣的に行う支援が効果的だろうと多くの専門家は考えています。しかしどのような「ウォーキング法」はいいのかはまだ議論が進んでいません。世界ではウォーキングや自転車を用いた身体活動量の向上を検討した報告などがありますが、目標をどう設定して継続させるかなどの議論でまだ終始している段階のようです。ウォーキングの「質」や「歩き方の方法」について、もっともっと専門家の議論や研究が必要かと考えます。スポーツ医学、老年医学などの研究者には、例えば速歩(アクティブウォーキング)をどうすれば適切に行えるのか、継続できるのかなど市民目線の研究をもっともっと実施してほしいものです。
日頃の運動(スポーツ)だけでなく、通勤での徒歩や家事などのその人の生活全体の活動量を合わせたものを「身体活動量」と呼ぶようになりました。自分の身体活動量はどのくらいあるのか、そして十分に体を動かしているのかなどを知ることは、中高年の健康維持や老化防止を考えるとき、非常に需要なファクターであると認識されています。特別な疾病のない人で、年齢別にどのくらいの運動量が望ましいかは、国の指針がすでに示されています。厚生労働省が作成した「健康づくりのための身体活動基準 2013」<アクティブガイド>です。ここでは、30分以上の運動を週2回行いましょうとか、歩く時間をあと10分増やしましょうとか具体的に運動量の増やし方を提言しています。これはメタボや心疾患などについて、運動することで予防効果があると実証された、世界のすべての論文をもとに検討されたものであり、いわゆる「エビデンス(科学的根拠)」に基づいた指針となっています。さらにこの身体活動基準では、身体活動量とがん、ロコモティブシンドローム、認知症のリスク低減効果についても検討を加えています。では高齢期の健康を考えるとき、いま最も大切な「フレイル」(身体的フレイル)についてはどうでしょう。例えば後期高齢者について身体活動はどのように考えるべきかとなると、まだまだエビデンスが足らないようです。よく知られているように、内閣府の調査では、70歳以上の人が行なっている運動・スポーツ種目は「ウォーキング」が56.4%と大多数を占めています。そこでこのウォーキングを習慣的に行う支援が効果的だろうと多くの専門家は考えています。しかしどのような「ウォーキング法」はいいのかはまだ議論が進んでいません。世界ではウォーキングや自転車を用いた身体活動量の向上を検討した報告などがありますが、目標をどう設定して継続させるかなどの議論でまだ終始している段階のようです。ウォーキングの「質」や「歩き方の方法」について、もっともっと専門家の議論や研究が必要かと考えます。スポーツ医学、老年医学などの研究者には、例えば速歩(アクティブウォーキング)をどうすれば適切に行えるのか、継続できるのかなど市民目線の研究をもっともっと実施してほしいものです。
2015年12月11日金曜日
~生物多様性が保たれるのは、頂点に立つ「捕食者」のおかげ~
自然の生態系を考えるとき、「キーストーン種」というという特別な生き物の存在が大事だとわかってきました。キーストーン種とは相対的に数(生物量)は少ないものの、その生態系にきわめて大きな影響を与える生物種のことを呼び、食物連鎖で頂点に立つ「捕食者」を指す場合が多いと考えられます。生物量として多い優占種のような場合はキーストーン種とは呼びません。この概念をはじめに提唱したのは、アメリカの海洋生物学者のロバート・T・ペインです。彼は古生物の研究が物足りなくなって、海の生物の研究へと転換し独創的なフィールドワークを行いました。西海岸ワシントン州オリンピック半島のある海岸の岩場で、その調査ははじまりました。1963年ころのことです。彼は磯にいるフジツボや巻貝など無脊椎動物がどういう関係を保って棲息しているのかを明らかにしたいと思っていました。まず潮間帯の岩場を2か所選び、ひとつの岩場から頂点に立つ捕食者、黄色の「ヒトデ」を片っ端から引っ剥がして離れた海へ放り投げました。この岩場でヒトデは王様で、ヒトデを食べる生き物はいません。一方の岩場はそのままに残しました。ヒトデを取り除いた岩場では、まずフジツボが縄張りを広げましたが、1年もするとイガイ(カリフォルニアイガイ)が急速に繁殖してその天下を取りました。イガイは獰猛な存在となり、岩はすべてイガイの殻で覆われるようになったといいます。そしてはじめ棲息していた生物種の15種の内、7種はいなくなっいたのです。一方ヒトデを残した岩場では、生物種は変わらず豊かな磯がそのまま残りました。ペインはこれを見て環境がひとつの種に独占されないようにしているのは、ヒトデのような頂点に立つ「捕食者」であると考えたのです。生物多様性を維持する鍵となっているのは、意外にもその場の生態系の頂点に立つ「捕食者」であることがこうして明らかにされました。オオカミがいなくなった日本の森林でニホンジカが異常繁殖するという状況も、こうした原理をもっと深く理解することが必要だと考えられます。
自然の生態系を考えるとき、「キーストーン種」というという特別な生き物の存在が大事だとわかってきました。キーストーン種とは相対的に数(生物量)は少ないものの、その生態系にきわめて大きな影響を与える生物種のことを呼び、食物連鎖で頂点に立つ「捕食者」を指す場合が多いと考えられます。生物量として多い優占種のような場合はキーストーン種とは呼びません。この概念をはじめに提唱したのは、アメリカの海洋生物学者のロバート・T・ペインです。彼は古生物の研究が物足りなくなって、海の生物の研究へと転換し独創的なフィールドワークを行いました。西海岸ワシントン州オリンピック半島のある海岸の岩場で、その調査ははじまりました。1963年ころのことです。彼は磯にいるフジツボや巻貝など無脊椎動物がどういう関係を保って棲息しているのかを明らかにしたいと思っていました。まず潮間帯の岩場を2か所選び、ひとつの岩場から頂点に立つ捕食者、黄色の「ヒトデ」を片っ端から引っ剥がして離れた海へ放り投げました。この岩場でヒトデは王様で、ヒトデを食べる生き物はいません。一方の岩場はそのままに残しました。ヒトデを取り除いた岩場では、まずフジツボが縄張りを広げましたが、1年もするとイガイ(カリフォルニアイガイ)が急速に繁殖してその天下を取りました。イガイは獰猛な存在となり、岩はすべてイガイの殻で覆われるようになったといいます。そしてはじめ棲息していた生物種の15種の内、7種はいなくなっいたのです。一方ヒトデを残した岩場では、生物種は変わらず豊かな磯がそのまま残りました。ペインはこれを見て環境がひとつの種に独占されないようにしているのは、ヒトデのような頂点に立つ「捕食者」であると考えたのです。生物多様性を維持する鍵となっているのは、意外にもその場の生態系の頂点に立つ「捕食者」であることがこうして明らかにされました。オオカミがいなくなった日本の森林でニホンジカが異常繁殖するという状況も、こうした原理をもっと深く理解することが必要だと考えられます。
2015年12月9日水曜日
~「老化とは死にやすくなること」から老化の定義がはじまった~
ほとんどの地球上の生物は、時間の流れにより成長と成熟を迎え、そして老いて死を迎えます。ただし単細胞生物で、分裂で増えることができる生き物、あるいは細胞融合して生き返るような例外はありますが。では生物にとって老化とは何か、その古典的な定義が成立したのは1960年代といわれています。医療や文化が発展し、人を取り巻く環境が変わった結果、「老化とは死にやすくなること」という定義が生まれました。人間の場合、天寿を全うする人は少なく、多くの人は何らかの病気で亡くなります。それはがん、脳卒中、心筋こうそく、肺炎などの疾患が老化により罹患率が急速に上昇するからだと考えるのです。しかしこれより100年以上も前に、老化を深く考察した医師がいました。それはカナダの臨床医ウイリアム・オスラー(1849-1919)です。彼が残した言葉はいまでも語り継がれて、その後の医学にも大きな影響を与えました。よく知られているのは「人は血管とともに老化する」という言葉です。オスラ―が生きた時代はまだまだ感染症などが最大の医療課題であったころであり、いまでこそ心血管系の病気が健康長寿上の大きな問題となっていますが、当時こうした血管(あるいは動脈硬化)と寿命の関係に、いち早く注目していたのは医学者として先見の明があったといえるでしょう。残された他の言葉にも、興味深いものがあります。オスラ―は「たいていの人は剣によるよりも、飲み過ぎ、食い過ぎによって殺される」と述べているのです。これはまさに飽食の私たち日本人に向けられた言葉のようにずしりと響きます。生活習慣病という概念、動脈硬化の複雑なメカニズム、頸動脈エコー検査などの近代的な医療技術、知識がそろっていなかった時代でも、老化現象の本質を見抜いていた臨床医がいたのはすごいことだと思います。そしていま、再び老化という生命現象に、遺伝子、生体物質、免疫あるいは社会科学、進化学といった多彩な科学的なアプローチがはじまり、その本質が捉え直されようとしています。 参考:「老化という生存戦略」(近藤祥司、日本評論社)
ほとんどの地球上の生物は、時間の流れにより成長と成熟を迎え、そして老いて死を迎えます。ただし単細胞生物で、分裂で増えることができる生き物、あるいは細胞融合して生き返るような例外はありますが。では生物にとって老化とは何か、その古典的な定義が成立したのは1960年代といわれています。医療や文化が発展し、人を取り巻く環境が変わった結果、「老化とは死にやすくなること」という定義が生まれました。人間の場合、天寿を全うする人は少なく、多くの人は何らかの病気で亡くなります。それはがん、脳卒中、心筋こうそく、肺炎などの疾患が老化により罹患率が急速に上昇するからだと考えるのです。しかしこれより100年以上も前に、老化を深く考察した医師がいました。それはカナダの臨床医ウイリアム・オスラー(1849-1919)です。彼が残した言葉はいまでも語り継がれて、その後の医学にも大きな影響を与えました。よく知られているのは「人は血管とともに老化する」という言葉です。オスラ―が生きた時代はまだまだ感染症などが最大の医療課題であったころであり、いまでこそ心血管系の病気が健康長寿上の大きな問題となっていますが、当時こうした血管(あるいは動脈硬化)と寿命の関係に、いち早く注目していたのは医学者として先見の明があったといえるでしょう。残された他の言葉にも、興味深いものがあります。オスラ―は「たいていの人は剣によるよりも、飲み過ぎ、食い過ぎによって殺される」と述べているのです。これはまさに飽食の私たち日本人に向けられた言葉のようにずしりと響きます。生活習慣病という概念、動脈硬化の複雑なメカニズム、頸動脈エコー検査などの近代的な医療技術、知識がそろっていなかった時代でも、老化現象の本質を見抜いていた臨床医がいたのはすごいことだと思います。そしていま、再び老化という生命現象に、遺伝子、生体物質、免疫あるいは社会科学、進化学といった多彩な科学的なアプローチがはじまり、その本質が捉え直されようとしています。 参考:「老化という生存戦略」(近藤祥司、日本評論社)
2015年12月1日火曜日
~「骨」を育てるには、重力を感じ地面を強く踏みしめよう!~
もし骨を丈夫にしたいなら、水泳のような重力をあまり感じない水平方向の運動ではなく、地面を強く踏みしめたり、ジャンプしたりするような垂直方向の運動が適しているといわれています。ロケットで飛び出した宇宙飛行士が、長く無重量の宇宙空間で過ごすと、次第に骨や筋肉が痩せてきて細くなっていくことが知られています。これは、いかに地上での生活が重力を体で感じて暮らしていているのか、また重力が体作りの上で大切な役目をもっているかを示しています。骨では、垂直方向の力が加わると、「骨細胞」を取り囲んでいる細胞液に流れが生まれます。そうすると「骨細胞」は流れを感じて、骨を作る「骨芽細胞」に新たな骨を作るように指令を出していることなどがわかってきました。ウォーキングやバレーボールのような運動、また階段の上り下りもそういう理由で骨作りに有効です。筋肉や骨には、「メカノセンサー(重力センサー)」と呼ばれるまるでロボット工学のような、重力を感じる細胞があると考えられています。骨細胞もそうしたセンサーといえるでしょう。骨や筋肉にいかに重力を感じさせるかが、骨や筋肉強化のポイントだったのです。片足立ちを日々行うと、足への重力負担が運動時に大きくなります。足の骨が強化され、またバランス感覚も磨かれるため、転倒予防につながるといったデータもあります。運動や生活活動を行うとき、地面を強く踏みしめるという「骨への刺激」をキーワードで考える習慣をつけると、ちょとしたことで骨強化の運動になるかもしれません。骨や筋肉もそうですが、いくら栄養をきちっと摂っても、適切な刺激がないかぎり決して望むような丈夫で強い組織にはならないのです。これは生き物の宿命とでもいうのでしょうか、本来生物の体はそういうメカニズムで成り立っているのです。
もし骨を丈夫にしたいなら、水泳のような重力をあまり感じない水平方向の運動ではなく、地面を強く踏みしめたり、ジャンプしたりするような垂直方向の運動が適しているといわれています。ロケットで飛び出した宇宙飛行士が、長く無重量の宇宙空間で過ごすと、次第に骨や筋肉が痩せてきて細くなっていくことが知られています。これは、いかに地上での生活が重力を体で感じて暮らしていているのか、また重力が体作りの上で大切な役目をもっているかを示しています。骨では、垂直方向の力が加わると、「骨細胞」を取り囲んでいる細胞液に流れが生まれます。そうすると「骨細胞」は流れを感じて、骨を作る「骨芽細胞」に新たな骨を作るように指令を出していることなどがわかってきました。ウォーキングやバレーボールのような運動、また階段の上り下りもそういう理由で骨作りに有効です。筋肉や骨には、「メカノセンサー(重力センサー)」と呼ばれるまるでロボット工学のような、重力を感じる細胞があると考えられています。骨細胞もそうしたセンサーといえるでしょう。骨や筋肉にいかに重力を感じさせるかが、骨や筋肉強化のポイントだったのです。片足立ちを日々行うと、足への重力負担が運動時に大きくなります。足の骨が強化され、またバランス感覚も磨かれるため、転倒予防につながるといったデータもあります。運動や生活活動を行うとき、地面を強く踏みしめるという「骨への刺激」をキーワードで考える習慣をつけると、ちょとしたことで骨強化の運動になるかもしれません。骨や筋肉もそうですが、いくら栄養をきちっと摂っても、適切な刺激がないかぎり決して望むような丈夫で強い組織にはならないのです。これは生き物の宿命とでもいうのでしょうか、本来生物の体はそういうメカニズムで成り立っているのです。
2015年11月27日金曜日
~筋肉の減弱(サルコペニア)は、動脈硬化を誘導するのか!老化の解明へ一歩~
これまでサルコペニアについて何度か触れてきました。筋肉と筋力の適切な維持は、いつまでも自立した生活を送るには大切なことと考えられています。これはいまでは「生活筋力」などと呼ばれることがあります。しかしながら最近、筋肉の維持は、実は健康な体を保ち、健康寿命を延ばすという視点から考えても、もっと重要な役割があることがわかってきました。サルコペニア(加齢による筋肉の減弱)は、フレイル(加齢による心身と社会性の衰え)と呼ばれる高齢者の「虚弱化」の主要な要因と考えれていますが、そのサルコペニアが、他の様々な病態と深く関連することが、愛媛医療センターの小原克彦さんら内科の医師たちの研究から明らかにされてきました。サルコぺニアが進行すると、骨格筋は委縮するのになぜか心筋は肥大することがわかっています。サルコペニアでは大動脈の起始部の血圧、中心血圧が上昇していることがその原因と考えられています。一般にサルコぺニアになる要因として、栄養や活動量の加齢による変化と、酸化ストレス、インスリン抵抗性、性ホルモンの変化などが疑われています。これらは実はすべて同様に動脈硬化を誘発する要因ともなるものです。つまり筋肉の委縮は、動脈硬化など心血管疾患と呼ばれる“血管の老化現象”と深い関連があることが示唆されているのです。逆に考えると、血管で動脈硬化が進行すると、サルコぺニアが誘導されるともいえるのです。小原さんたちは、サルコぺニアを動脈硬化や心筋こうそくなどリスク要因としてとらえることを提唱しています。またさらには、サルコペニアが認知症のリスク要因ともなるのではと疑っています。「老化」という複雑な現象、そのメカニズムの一端が少しずつ解明されてきているようです。こうした研究は“老化に伴う疾病予防”、あるいは“健やかな老化”という私たちの夢へと一歩近づくものであり、大きな成果が期待されているのです。
これまでサルコペニアについて何度か触れてきました。筋肉と筋力の適切な維持は、いつまでも自立した生活を送るには大切なことと考えられています。これはいまでは「生活筋力」などと呼ばれることがあります。しかしながら最近、筋肉の維持は、実は健康な体を保ち、健康寿命を延ばすという視点から考えても、もっと重要な役割があることがわかってきました。サルコペニア(加齢による筋肉の減弱)は、フレイル(加齢による心身と社会性の衰え)と呼ばれる高齢者の「虚弱化」の主要な要因と考えれていますが、そのサルコペニアが、他の様々な病態と深く関連することが、愛媛医療センターの小原克彦さんら内科の医師たちの研究から明らかにされてきました。サルコぺニアが進行すると、骨格筋は委縮するのになぜか心筋は肥大することがわかっています。サルコペニアでは大動脈の起始部の血圧、中心血圧が上昇していることがその原因と考えられています。一般にサルコぺニアになる要因として、栄養や活動量の加齢による変化と、酸化ストレス、インスリン抵抗性、性ホルモンの変化などが疑われています。これらは実はすべて同様に動脈硬化を誘発する要因ともなるものです。つまり筋肉の委縮は、動脈硬化など心血管疾患と呼ばれる“血管の老化現象”と深い関連があることが示唆されているのです。逆に考えると、血管で動脈硬化が進行すると、サルコぺニアが誘導されるともいえるのです。小原さんたちは、サルコぺニアを動脈硬化や心筋こうそくなどリスク要因としてとらえることを提唱しています。またさらには、サルコペニアが認知症のリスク要因ともなるのではと疑っています。「老化」という複雑な現象、そのメカニズムの一端が少しずつ解明されてきているようです。こうした研究は“老化に伴う疾病予防”、あるいは“健やかな老化”という私たちの夢へと一歩近づくものであり、大きな成果が期待されているのです。
2015年11月25日水曜日
~人間による生物大量絶滅・・・独自に進化した飛べない鳥が消えた~
ニュージーランドでのお話。1864年に、猟のための獲物としてイギリスからニュージーランドに連れてこられたウサギが、その猛烈な繁殖力で10年もたつと島中にあふれるようになりました。ウサギは羊が飼われている草原にも進出し、その牧草を食べ続けたので、羊が飢えて死んでゆく事態となりました。そこで当時の政府は、ウサギを食べてくれそうな生き物を利用しウサギを減らそうと考え、肉食のイタチ科の動物、オコジョやフェレットを大量に導入することにしたのです。原野に放たれたオコジョたちは、はじめ厄介者となったウサギを次々に襲い食べてくれました。ところがこの天敵導入には意外な展開が待っていました。小さな肉食動物たちは、やがてウサギより簡単に襲うことができる、キウイやウェカ、カカポというような、地上性の飛べない野鳥たちを襲うようになったのです。そこで牧羊農家は牧草の保護に効果がないとなると、今度はネコを使おうと、ウサギの荒らした草原に多数のネコも放たれることになりました。こうして島の本来の生態系はズタズタになっていき、ニュージーランド固有の鳥の内、実に半分が絶滅、生き延びた種も消滅の道を進むことになったのです。こうした政策に対して当時強い警告を発して抗議していた人たちもいましたが、憂うべき事態に社会が気がついた時はもう時遅しだったといいます。消えた野生生物の復活は不可能になってしまいました。数億年の時間をかけて独自の進化をみせていた島の生物と生態系は、わずか数百年であっという間に消滅してしまったのです。太平洋に広がった島々では、シカやリス、カメやウサギなどが不在だったため、多くの鳥が進化して、地上生活に適応したものが現われたと考えられています。ハワイでも最近の古生物の研究で、多くの知られざる“歩く鳥”がいたことがわかってきていて、実は太平洋全域でこうしたモアやクイナなど不思議な野鳥たちの世界があったことがわかってきました。簡単には変わらないというイメージある自然の生態系ですが、実はものすごく繊細で、とても壊れやすいガラス細工のようなものであることが、このニュージーランドでの教訓からわかってきます。
ニュージーランドでのお話。1864年に、猟のための獲物としてイギリスからニュージーランドに連れてこられたウサギが、その猛烈な繁殖力で10年もたつと島中にあふれるようになりました。ウサギは羊が飼われている草原にも進出し、その牧草を食べ続けたので、羊が飢えて死んでゆく事態となりました。そこで当時の政府は、ウサギを食べてくれそうな生き物を利用しウサギを減らそうと考え、肉食のイタチ科の動物、オコジョやフェレットを大量に導入することにしたのです。原野に放たれたオコジョたちは、はじめ厄介者となったウサギを次々に襲い食べてくれました。ところがこの天敵導入には意外な展開が待っていました。小さな肉食動物たちは、やがてウサギより簡単に襲うことができる、キウイやウェカ、カカポというような、地上性の飛べない野鳥たちを襲うようになったのです。そこで牧羊農家は牧草の保護に効果がないとなると、今度はネコを使おうと、ウサギの荒らした草原に多数のネコも放たれることになりました。こうして島の本来の生態系はズタズタになっていき、ニュージーランド固有の鳥の内、実に半分が絶滅、生き延びた種も消滅の道を進むことになったのです。こうした政策に対して当時強い警告を発して抗議していた人たちもいましたが、憂うべき事態に社会が気がついた時はもう時遅しだったといいます。消えた野生生物の復活は不可能になってしまいました。数億年の時間をかけて独自の進化をみせていた島の生物と生態系は、わずか数百年であっという間に消滅してしまったのです。太平洋に広がった島々では、シカやリス、カメやウサギなどが不在だったため、多くの鳥が進化して、地上生活に適応したものが現われたと考えられています。ハワイでも最近の古生物の研究で、多くの知られざる“歩く鳥”がいたことがわかってきていて、実は太平洋全域でこうしたモアやクイナなど不思議な野鳥たちの世界があったことがわかってきました。簡単には変わらないというイメージある自然の生態系ですが、実はものすごく繊細で、とても壊れやすいガラス細工のようなものであることが、このニュージーランドでの教訓からわかってきます。
2015年11月20日金曜日
~どんな食品でも摂りすぎは体に良くないという教訓か~
スウェーデンの研究チームが最近実施した調査によると、牛乳の摂取量が増えても骨折のリスクは低下しないこと、むしろ逆に死亡率が増加する恐れがあるという結論が導き出されました。(British Medical Journal、BMJ 2014)。予測と違って意外な結果が示されることとなりました。調査は、39~74歳の女性6万1000人を20年にわたって観察、また45~79歳の男性4万5000人も11年間の長期の観察を行ったものだといいます。女性のデータが特に顕著で、「股関節部の骨折」を経験する女性の割合は、1日3杯以上の牛乳を飲む人が1000人中に42人だったのに対して、1日牛乳1杯未満の人では、31人であったといいます。また牛乳摂取量が多い女性は、牛乳摂取量が少ない人と比べて、死亡率が90%も高く、骨折全般では15%多かったというデータが示されています。一方男性では、骨折の割合の牛乳の摂取量での差はほとんどなく、死亡率も摂取量が少ない群の方がやや低い結果ですがその差は比較的小さかったといいます。そしてこの調査は他の食品についても調べられましたが、チーズやヨーグルトという「発酵乳製品」の摂取量との関係では、女性の場合でも、死亡率と骨折頻度の低下につながるという予測を裏切らないプラスの効果が表れたことも同時に報告されました。このことを受けて研究チームは牛乳には糖類たとえばD-ガラクトースなどが多く含まれていますが、発酵乳製品では少ないのでこうした結果につながったのではと推測しています。動物実験ではD-ガラクトースは老化を促進する物質であることがわかっているからです。牛乳は優れた栄養食品といってもあまり多量に摂取しすぎると、含まれる糖類がむしろ体にマイナスの効果となって表われる可能性があるという、考えさせられる報告でした。ただしこれは最終的な結論ではありませんので、直ちに牛乳を控えようというというのは少し時期尚早かもしれません。
スウェーデンの研究チームが最近実施した調査によると、牛乳の摂取量が増えても骨折のリスクは低下しないこと、むしろ逆に死亡率が増加する恐れがあるという結論が導き出されました。(British Medical Journal、BMJ 2014)。予測と違って意外な結果が示されることとなりました。調査は、39~74歳の女性6万1000人を20年にわたって観察、また45~79歳の男性4万5000人も11年間の長期の観察を行ったものだといいます。女性のデータが特に顕著で、「股関節部の骨折」を経験する女性の割合は、1日3杯以上の牛乳を飲む人が1000人中に42人だったのに対して、1日牛乳1杯未満の人では、31人であったといいます。また牛乳摂取量が多い女性は、牛乳摂取量が少ない人と比べて、死亡率が90%も高く、骨折全般では15%多かったというデータが示されています。一方男性では、骨折の割合の牛乳の摂取量での差はほとんどなく、死亡率も摂取量が少ない群の方がやや低い結果ですがその差は比較的小さかったといいます。そしてこの調査は他の食品についても調べられましたが、チーズやヨーグルトという「発酵乳製品」の摂取量との関係では、女性の場合でも、死亡率と骨折頻度の低下につながるという予測を裏切らないプラスの効果が表れたことも同時に報告されました。このことを受けて研究チームは牛乳には糖類たとえばD-ガラクトースなどが多く含まれていますが、発酵乳製品では少ないのでこうした結果につながったのではと推測しています。動物実験ではD-ガラクトースは老化を促進する物質であることがわかっているからです。牛乳は優れた栄養食品といってもあまり多量に摂取しすぎると、含まれる糖類がむしろ体にマイナスの効果となって表われる可能性があるという、考えさせられる報告でした。ただしこれは最終的な結論ではありませんので、直ちに牛乳を控えようというというのは少し時期尚早かもしれません。
2015年11月18日水曜日
~いったい誰が消費者にわかりやすく説明するの!食品安全とフードリテラシー?~
加工食品の安全性をめぐる話題が相次いでいます。6月にはアメリカのFDA(米国食品医薬品局)が「トランス脂肪酸」を発生する油の食品への使用を、2018年以降禁止すると発表しました。心臓突然死、冠動脈疾患、メタボや糖尿病のリスクを高めているというのがその理由です。トランス脂肪酸は、植物油を個化する過程で人工的に生まれてくるものですが、マーガリンやショートニングなどに含まれ、その結果、これらを原料として作られる食品、例えばパン、クッキー、スナック菓子、生クリーム、ピザなどほとんどの市販のあらゆる食品に入っているというわけです。ニュースに接した人の中には、マーガリンをやめようと思った人はきっと多かったと思いますが、こうした食品を摂っている限り、真のトランス脂肪酸断ちにはならないのです。背景には米国での冠動脈疾患への対策が喫緊の課題であることが指摘されています。なお日本人の通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取量は安全基準以下で、健康への影響はほとんどありませんというのが内閣府食品安全委員会の見解です。次に話題になったのは、10月になってWHOのがん研究機関、国際がん研究機関(IARC)が行った、加工肉にはヒトに対して発がん性がある、肉(牛、豚、羊)にはおそらく発がん性があるという発表です。10か国、22人の専門家による会議で科学的に判定されたといいます。これもまた消費者にとってはどう考えていいのか困惑する内容でした。今回のIARCの評価は、がんを誘発するかの根拠の強さを特定したもの(ハザード評価)であって、摂取することでがんの起こる可能性(リスク評価)を示したものではないというのです。それってどういう意味?と思わず聞きたくなります。理解できるでしょうか。こちらの問題も日本人では世界とくらべて肉、加工肉とも摂取量は少ないことと、コホート研究(疫学調査)では、直腸結腸がんとの関連は認められないというのが内閣府や国の研究機関などの見解です。国外からの情報に振り回されているのも情けないですが、農水大臣や所管の研究者などのきちっとしたわかりやすい国民への説明こそ、いま必要かと思われます。
加工食品の安全性をめぐる話題が相次いでいます。6月にはアメリカのFDA(米国食品医薬品局)が「トランス脂肪酸」を発生する油の食品への使用を、2018年以降禁止すると発表しました。心臓突然死、冠動脈疾患、メタボや糖尿病のリスクを高めているというのがその理由です。トランス脂肪酸は、植物油を個化する過程で人工的に生まれてくるものですが、マーガリンやショートニングなどに含まれ、その結果、これらを原料として作られる食品、例えばパン、クッキー、スナック菓子、生クリーム、ピザなどほとんどの市販のあらゆる食品に入っているというわけです。ニュースに接した人の中には、マーガリンをやめようと思った人はきっと多かったと思いますが、こうした食品を摂っている限り、真のトランス脂肪酸断ちにはならないのです。背景には米国での冠動脈疾患への対策が喫緊の課題であることが指摘されています。なお日本人の通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取量は安全基準以下で、健康への影響はほとんどありませんというのが内閣府食品安全委員会の見解です。次に話題になったのは、10月になってWHOのがん研究機関、国際がん研究機関(IARC)が行った、加工肉にはヒトに対して発がん性がある、肉(牛、豚、羊)にはおそらく発がん性があるという発表です。10か国、22人の専門家による会議で科学的に判定されたといいます。これもまた消費者にとってはどう考えていいのか困惑する内容でした。今回のIARCの評価は、がんを誘発するかの根拠の強さを特定したもの(ハザード評価)であって、摂取することでがんの起こる可能性(リスク評価)を示したものではないというのです。それってどういう意味?と思わず聞きたくなります。理解できるでしょうか。こちらの問題も日本人では世界とくらべて肉、加工肉とも摂取量は少ないことと、コホート研究(疫学調査)では、直腸結腸がんとの関連は認められないというのが内閣府や国の研究機関などの見解です。国外からの情報に振り回されているのも情けないですが、農水大臣や所管の研究者などのきちっとしたわかりやすい国民への説明こそ、いま必要かと思われます。
2015年11月17日火曜日
~まもなく人類は、オキアミやミドリムシを食べる時代に~
2015年の世界人口白書によると、世界の人口は72億7552万人と報告されています。100億人となるのもそう遠くはないというのが現実です。これらの人々がみな水とともに食糧を必要とするわけですから、今後の食糧生産がはたして追いついていくのかと心配になってきます。いやこれはすでに途上国では現実となっていて、毎年350万人から500万人のこどもたち(5歳以下)が栄養失調で感染症などに罹り亡くなっているのです。1日にすると1万4000人、5秒に1人が亡くなっていることになります(国境なき医師団などのリポート)。先進国であっても世界の穀物や肉の生産、あるいは加工食品の生産と保存をよほどうまくやっていかないと、来るべき社会では経済力の差で、食べることのできる富裕層と飢える中流下流層という社会のかたちが生まれていくのではないでしょうか。不足するタンパク源として、「昆虫食」をまじめに検討しなければならないという意見もあります。この昆虫食を強く推奨しているのは国連食糧農業機関(FAO)という権威ある国際機関です。昆虫はタンパク含有量が高く、鉄やマグネシウム、リンなどの微量栄養素が豊富、そしてなにより安価で飼育が簡単という利点があるというのです。メディアにも時々登場する「ミドリムシ」も食糧危機を救う救世主といわれてきました。クロレラと同じ藻類であるながら、動物の性質も合わせ持つこの微生物は「ヒトが生きていく上で必要な栄養素をすべて賄える生きもの」というすばらしいキャッチフレーズがついています。魚介類では、深海魚などは有力な新規食糧資源として注目されており、新たな漁獲のターゲットとなっていくものと思われます。海洋資源でもっと注目されいるのは、あのシロナガスクジラが大きく口を開けて豪快に食しているプランクトン「オキアミ」です。栄養豊富であり、将来の人類の食糧資源として食品化の研究が進んでます。オキアミは資源量としてまだ余裕があるということかと思いますが、クジラとヒトが同じエサを奪い合うようになるとは誰が予想したことでしょうか。
2015年の世界人口白書によると、世界の人口は72億7552万人と報告されています。100億人となるのもそう遠くはないというのが現実です。これらの人々がみな水とともに食糧を必要とするわけですから、今後の食糧生産がはたして追いついていくのかと心配になってきます。いやこれはすでに途上国では現実となっていて、毎年350万人から500万人のこどもたち(5歳以下)が栄養失調で感染症などに罹り亡くなっているのです。1日にすると1万4000人、5秒に1人が亡くなっていることになります(国境なき医師団などのリポート)。先進国であっても世界の穀物や肉の生産、あるいは加工食品の生産と保存をよほどうまくやっていかないと、来るべき社会では経済力の差で、食べることのできる富裕層と飢える中流下流層という社会のかたちが生まれていくのではないでしょうか。不足するタンパク源として、「昆虫食」をまじめに検討しなければならないという意見もあります。この昆虫食を強く推奨しているのは国連食糧農業機関(FAO)という権威ある国際機関です。昆虫はタンパク含有量が高く、鉄やマグネシウム、リンなどの微量栄養素が豊富、そしてなにより安価で飼育が簡単という利点があるというのです。メディアにも時々登場する「ミドリムシ」も食糧危機を救う救世主といわれてきました。クロレラと同じ藻類であるながら、動物の性質も合わせ持つこの微生物は「ヒトが生きていく上で必要な栄養素をすべて賄える生きもの」というすばらしいキャッチフレーズがついています。魚介類では、深海魚などは有力な新規食糧資源として注目されており、新たな漁獲のターゲットとなっていくものと思われます。海洋資源でもっと注目されいるのは、あのシロナガスクジラが大きく口を開けて豪快に食しているプランクトン「オキアミ」です。栄養豊富であり、将来の人類の食糧資源として食品化の研究が進んでます。オキアミは資源量としてまだ余裕があるということかと思いますが、クジラとヒトが同じエサを奪い合うようになるとは誰が予想したことでしょうか。
2015年11月16日月曜日
~イソフラボンお前もか!腸内細菌の完全支配下にある栄養素~
大豆に含まれる栄養素としてよく知られている「イソフラボン(大豆イソフラボン)」は、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きがあることや抗酸化作用もあり、更年期障害、骨や血管、脳にも若返りの作用が期待できるものとして様々な改善効果の夢が大きく膨らんでいます。特に女性の健康(乳がんや骨粗しょう症など)との関連が議論されていてきたので特に女性にとっては解明が待たれるところです。昔の京都のお公家さんのお肌がすべすべであったのは、大豆製品の「湯葉」を日常食としてきたからという説もあるくらいです。お肌の若返りにイソフラボンが効果的となれば、女性も男性も興味を持つのは当然でしょう。最近の研究で、実は意外な事実がわかってきました。イソフラボンが体内でどのように作用しているかが、少しずつ解明されてきたのです。イソフラボン(の中でダイゼインという種類)は、腸内細菌により代謝されて「エクオール」という物質に変化します。このエクオールが「エストロゲン受容体」にぴったりはまり込むことで、すべての機能が発揮されるということが明らかになったのです。しかもこの働きを持つ腸内細菌(乳酸菌ラクトコッカスの仲間)は日本人では2人に1人しか持っていないことも判明し、欧米人では3人に1人だというのです。この論ではイソフラボンを摂取してもその恩恵にあずかる日本人は半分、50%ということになります。あの話題の中心、「腸内フローラ」がここでも私たちの健康を完全に支配コントロールしているようなのです。今後は、エクオールを産生する腸内細菌入りのヨーグルトなどが発売されるのでしょうか。栄養素と体の代謝系の関係が、一筋縄でではいかないことを教えてくれるいい例のようです。
大豆に含まれる栄養素としてよく知られている「イソフラボン(大豆イソフラボン)」は、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きがあることや抗酸化作用もあり、更年期障害、骨や血管、脳にも若返りの作用が期待できるものとして様々な改善効果の夢が大きく膨らんでいます。特に女性の健康(乳がんや骨粗しょう症など)との関連が議論されていてきたので特に女性にとっては解明が待たれるところです。昔の京都のお公家さんのお肌がすべすべであったのは、大豆製品の「湯葉」を日常食としてきたからという説もあるくらいです。お肌の若返りにイソフラボンが効果的となれば、女性も男性も興味を持つのは当然でしょう。最近の研究で、実は意外な事実がわかってきました。イソフラボンが体内でどのように作用しているかが、少しずつ解明されてきたのです。イソフラボン(の中でダイゼインという種類)は、腸内細菌により代謝されて「エクオール」という物質に変化します。このエクオールが「エストロゲン受容体」にぴったりはまり込むことで、すべての機能が発揮されるということが明らかになったのです。しかもこの働きを持つ腸内細菌(乳酸菌ラクトコッカスの仲間)は日本人では2人に1人しか持っていないことも判明し、欧米人では3人に1人だというのです。この論ではイソフラボンを摂取してもその恩恵にあずかる日本人は半分、50%ということになります。あの話題の中心、「腸内フローラ」がここでも私たちの健康を完全に支配コントロールしているようなのです。今後は、エクオールを産生する腸内細菌入りのヨーグルトなどが発売されるのでしょうか。栄養素と体の代謝系の関係が、一筋縄でではいかないことを教えてくれるいい例のようです。
2015年11月10日火曜日
~恐竜は、本当に毎年「渡り」をしていたのか~
春に日本にやってきて秋になるとフィリッピンや東南アジアへと戻っていく、ツバメやカッコウなどの夏鳥。そして入れ替わって日本で冬を過ごすために、シベリアやアラスカから渡ってくるオオハクチョウやツグミなどの野鳥は冬鳥と呼ばれます。渡りの途中で日本列島に立ち寄るのシギ、チドリは
旅鳥と呼びます。こうした鳥の「渡り」は、とても長い距離を移動するもので優に1万kmを越えて移動するものもいます。まさに地球規模の移動を、毎年繰り返し往復しているのです。あたりまえのように思っている野鳥の渡りですが、繁殖地と越冬地を求めて移動していることは理解できても、それでは鳥類がいつごろ、どのような進化の過程でこのような行動をとるようになったのかなど本当のところは実はよくわかっていません。大陸移動がこの現象の遠因ではないかと考える説があります。大陸移動で生息地の緯度が大きく変わっていくなかで、昔の故郷である生息地に季節的に戻る習性が生まれたのだという考え方です。しかしこの説には大陸移動があった地質年代と鳥類の発展時期にはズレがあり、つじつまが合わないという否定的する意見もあります。そこで、いまは鳥類が大発展するする以前に繁栄していた恐竜の仲間たちがこの「渡り」をはじめたという考え方が誕生しました。恐竜が現在の鳥類と同様に、繁殖地と越冬地を求めて大陸を北から南へと毎年長距離を移動していたという説です。実際、北米ではそれを裏付けるように、同じ恐竜が北と南で見つかったりしています。こうした恐竜が獲得した生物の習性を、鳥類が自然に引き継いでいると考えれば、大陸移動など持ち出さずに説明ができそうです。大型の恐竜が大挙して渡りを行っている景色は、はたしてどんなに壮大なものだったでしょうか。地響きがしそうな映像が浮かびます。
春に日本にやってきて秋になるとフィリッピンや東南アジアへと戻っていく、ツバメやカッコウなどの夏鳥。そして入れ替わって日本で冬を過ごすために、シベリアやアラスカから渡ってくるオオハクチョウやツグミなどの野鳥は冬鳥と呼ばれます。渡りの途中で日本列島に立ち寄るのシギ、チドリは
旅鳥と呼びます。こうした鳥の「渡り」は、とても長い距離を移動するもので優に1万kmを越えて移動するものもいます。まさに地球規模の移動を、毎年繰り返し往復しているのです。あたりまえのように思っている野鳥の渡りですが、繁殖地と越冬地を求めて移動していることは理解できても、それでは鳥類がいつごろ、どのような進化の過程でこのような行動をとるようになったのかなど本当のところは実はよくわかっていません。大陸移動がこの現象の遠因ではないかと考える説があります。大陸移動で生息地の緯度が大きく変わっていくなかで、昔の故郷である生息地に季節的に戻る習性が生まれたのだという考え方です。しかしこの説には大陸移動があった地質年代と鳥類の発展時期にはズレがあり、つじつまが合わないという否定的する意見もあります。そこで、いまは鳥類が大発展するする以前に繁栄していた恐竜の仲間たちがこの「渡り」をはじめたという考え方が誕生しました。恐竜が現在の鳥類と同様に、繁殖地と越冬地を求めて大陸を北から南へと毎年長距離を移動していたという説です。実際、北米ではそれを裏付けるように、同じ恐竜が北と南で見つかったりしています。こうした恐竜が獲得した生物の習性を、鳥類が自然に引き継いでいると考えれば、大陸移動など持ち出さずに説明ができそうです。大型の恐竜が大挙して渡りを行っている景色は、はたしてどんなに壮大なものだったでしょうか。地響きがしそうな映像が浮かびます。
2015年11月7日土曜日
~「ハヤブサ」は「スズメ」の近縁種だった!~
生物における「種」という分類の単位は、時として議論を呼ぶ実はとてもやっかいな概念です。一般に、交雑ができるかどうかが同種か別種かのちがい、と考えている人は多いと思いますがそう単純ではないといいます。例えば雌だけで卵を産む(単為生殖)ヤモリなどは、交配がないので同種かどうかの分類はできません。これまでは「形態学的種概念」にともづく分類が行われてきました。しかしこれでは、生物の外見だけを見ているので時として誤ってしまうことがあります。宇宙探査機の名前にもなった「ハヤブサ」ですが、有能な狩りの技術を持つ猛禽類として知られていて、これまで「タカ」の仲間と皆が信じてきました。この分類は誰も疑う余地がなかったのですが、最近DNAを使った系統樹作成の研究(分子分類法)が進み、あっと驚く事実が判明してきたのです。分子レベルでハヤブサを調べて分類を行うと、タカの仲間ではなくスズメやオウムと近縁であることがわかったのです。同じように「サギ」はコウノトリに近い仲間とされてきましたが、実はペリカンに近いということもわかりました。ハヤブサがスズメの親戚だったとは、みごとにだまされたというか、にっこり微笑んでしまうようなお話です。現在ではDNAによる分類方法が主流となっているということですが、「種」とは、どこかで割り切って分類することをしないと割り切れない要素を多く含んでいるようです。ちなみに現在の地球上のヒトは一種類ですべて「アフリカ人」の子孫です。白人も黒人も黄色人もすべて人類はアフリカ大陸で誕生した、ただひとつの人類種を先祖に持つ同じ種の仲間なのです。参照:川上和人著「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」
生物における「種」という分類の単位は、時として議論を呼ぶ実はとてもやっかいな概念です。一般に、交雑ができるかどうかが同種か別種かのちがい、と考えている人は多いと思いますがそう単純ではないといいます。例えば雌だけで卵を産む(単為生殖)ヤモリなどは、交配がないので同種かどうかの分類はできません。これまでは「形態学的種概念」にともづく分類が行われてきました。しかしこれでは、生物の外見だけを見ているので時として誤ってしまうことがあります。宇宙探査機の名前にもなった「ハヤブサ」ですが、有能な狩りの技術を持つ猛禽類として知られていて、これまで「タカ」の仲間と皆が信じてきました。この分類は誰も疑う余地がなかったのですが、最近DNAを使った系統樹作成の研究(分子分類法)が進み、あっと驚く事実が判明してきたのです。分子レベルでハヤブサを調べて分類を行うと、タカの仲間ではなくスズメやオウムと近縁であることがわかったのです。同じように「サギ」はコウノトリに近い仲間とされてきましたが、実はペリカンに近いということもわかりました。ハヤブサがスズメの親戚だったとは、みごとにだまされたというか、にっこり微笑んでしまうようなお話です。現在ではDNAによる分類方法が主流となっているということですが、「種」とは、どこかで割り切って分類することをしないと割り切れない要素を多く含んでいるようです。ちなみに現在の地球上のヒトは一種類ですべて「アフリカ人」の子孫です。白人も黒人も黄色人もすべて人類はアフリカ大陸で誕生した、ただひとつの人類種を先祖に持つ同じ種の仲間なのです。参照:川上和人著「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」
2015年11月6日金曜日
~恐竜=鳥類「指論争150年」に終止符を打った日本の発生学研究~
鳥類が恐竜から進化したという学説で唯一残っていた「矛盾点」をずばりと解決したのは日本人でした。「指論争」と呼ばれる150年来の論争を、科学的実験で真実を解き明かしたのは東北大学理学部の田村宏治教授です。これまでの発生学では、観察から鳥類の前足は第2-3-4指であるのに対して、恐竜は前足が第1-2-3指であることが鳥類恐竜起源説の最大の矛盾点として語られてきました。田村さんたちはニワトリの翼の指の出来方をあらためて遺伝子などでくわしく分析すると、これまで翼の指は、第2-3-4指と思われていたのは、実は第1-2-3指の間違いであることを明らかにしました。指の発生の途中で第4指の発生ゾーンから指ひとつがずれるという現象があり、これが従来の説を誤らせていたというのです。いずれにしてもこれで鳥類は恐竜から分かれて進化したしたことが確定的になりました。恐竜、始祖鳥、鳥類がこれですっきりつながりました。2011年の科学雑誌サイエンスに投稿され世界の話題となりました。現代の生物学の研究室から、数億年前の生物のストーリーが解かれるというロマンあふれるお話です。鳥類よ、お前たちの正体はやはり恐竜の生き残りなのだな!科学の眼はお見通しですよ・・といったところでしょうか。今後、進化生物学などが急速に進歩して、これからもびっくりするような研究成果が生まれてきそうです。
鳥類が恐竜から進化したという学説で唯一残っていた「矛盾点」をずばりと解決したのは日本人でした。「指論争」と呼ばれる150年来の論争を、科学的実験で真実を解き明かしたのは東北大学理学部の田村宏治教授です。これまでの発生学では、観察から鳥類の前足は第2-3-4指であるのに対して、恐竜は前足が第1-2-3指であることが鳥類恐竜起源説の最大の矛盾点として語られてきました。田村さんたちはニワトリの翼の指の出来方をあらためて遺伝子などでくわしく分析すると、これまで翼の指は、第2-3-4指と思われていたのは、実は第1-2-3指の間違いであることを明らかにしました。指の発生の途中で第4指の発生ゾーンから指ひとつがずれるという現象があり、これが従来の説を誤らせていたというのです。いずれにしてもこれで鳥類は恐竜から分かれて進化したしたことが確定的になりました。恐竜、始祖鳥、鳥類がこれですっきりつながりました。2011年の科学雑誌サイエンスに投稿され世界の話題となりました。現代の生物学の研究室から、数億年前の生物のストーリーが解かれるというロマンあふれるお話です。鳥類よ、お前たちの正体はやはり恐竜の生き残りなのだな!科学の眼はお見通しですよ・・といったところでしょうか。今後、進化生物学などが急速に進歩して、これからもびっくりするような研究成果が生まれてきそうです。
2015年11月4日水曜日
~「第二の脳」とまで呼ばれるようになった腸内細菌叢~
近年、医学研究で話題をさらったのは何といっても「腸内フローラ」の再発見でしょう。腸内細菌が体の中で、これまで考えもしなかった重要な働きを行っていることがわかってきて、現代病や健康問題解決のブレークスルーになる可能性が明らかになってきたのです。人間ひとりが抱えている腸内細菌は、重量で1~1.5kgもあり、肝臓と同じくらいの重量だといいます。また細胞数でカウントすると、人体の60兆をはるかに超える100兆個以上で、その種類はおよそ1000種類を越えると考えられています。嫌気性の最近ですから、研究がむつかしく多様な細菌をしらべる手法がこれまでありませんでした。これを解決したのがメタゲノム解析という検査法で細菌をまとめて遺伝子検査するというものでした。
研究が進展すると、この大きな腸の細菌の塊は、なんと脳と血液を通じ、生理物質のやりとりを行い、お互いに影響を与え合っていることが判明しました。これはいまでは「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれていて、簡単に言うと、腸と脳が体の状態に関して会話をしてるということなのです。この会話により、免疫力やさらには性格にも影響を与えていることがわかってきました。動物実験ですが、活動的でない臆病なマウスに、活発で好奇心旺盛なマウスの腸内細菌を入れ替える手術をすると、性格が活発なマウスになったという報告があります。ヒトでは腸内細菌の総取り換えを行うと、肥満症が治ったという事例も有名です。腸内フローラのバランスは、自閉症ややうつ、認知症にも関係しているのではと考える研究者もいます。がんやアレルギーも予防や治療の可能性があると研究が進んでいます。いまでは腸と腸内細菌のことを「第二の脳」(セカンドブレイン)とも呼ばれるようになってきました。
近年、医学研究で話題をさらったのは何といっても「腸内フローラ」の再発見でしょう。腸内細菌が体の中で、これまで考えもしなかった重要な働きを行っていることがわかってきて、現代病や健康問題解決のブレークスルーになる可能性が明らかになってきたのです。人間ひとりが抱えている腸内細菌は、重量で1~1.5kgもあり、肝臓と同じくらいの重量だといいます。また細胞数でカウントすると、人体の60兆をはるかに超える100兆個以上で、その種類はおよそ1000種類を越えると考えられています。嫌気性の最近ですから、研究がむつかしく多様な細菌をしらべる手法がこれまでありませんでした。これを解決したのがメタゲノム解析という検査法で細菌をまとめて遺伝子検査するというものでした。
研究が進展すると、この大きな腸の細菌の塊は、なんと脳と血液を通じ、生理物質のやりとりを行い、お互いに影響を与え合っていることが判明しました。これはいまでは「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれていて、簡単に言うと、腸と脳が体の状態に関して会話をしてるということなのです。この会話により、免疫力やさらには性格にも影響を与えていることがわかってきました。動物実験ですが、活動的でない臆病なマウスに、活発で好奇心旺盛なマウスの腸内細菌を入れ替える手術をすると、性格が活発なマウスになったという報告があります。ヒトでは腸内細菌の総取り換えを行うと、肥満症が治ったという事例も有名です。腸内フローラのバランスは、自閉症ややうつ、認知症にも関係しているのではと考える研究者もいます。がんやアレルギーも予防や治療の可能性があると研究が進んでいます。いまでは腸と腸内細菌のことを「第二の脳」(セカンドブレイン)とも呼ばれるようになってきました。
2015年11月3日火曜日
~実はとても深刻な温暖化の健康への悪影響~
地球温暖化の影響として議論されていることには、豪雨や干ばつなどによる極端な気候現象の発生、また農作物や水産物への深刻な悪影響、海の水位の上昇などがあります。それらは結果として、自然災害、水不足や食料不足をもたらし、人類の新たな紛争の種を生み出すことになるのではと心配されているのです。しかし、温暖化がもたらす健康への影響はあまり議論されていないように思います。科学誌ナショナルジオグラフィックスが最新号の気候変動特集でこの健康の視点でどういうリスクがあるかをレジメしています。(2015年11月号)日本でよく知られているのは熱帯に棲息していた毒クモや蚊などがじわじわと上陸しつつあるという事実でしょうか。実際マラリアやデング熱といった伝染病が温帯域である日本にまで広がっていくという恐れがあるのです。すでに東京では昨年デング熱の感染が話題になりました。アメリカでは、ウエストナイル熱などが猛威をふるっています。今後心配なのはライム病などを媒介するマダニの増加です。さらに記事では次のことも指摘しています。農業や建設業などで労働者の間で熱中症のリスクが極端に高まり労働時間は夜にシフトしなければならなくなること、アレルギーのシーズンが延長して呼吸器疾患の患者が増加すること、干ばつと水不足で都会に住む住民の健康が悪化すること、からだをあまり動かさない高齢者に極端な気象の影響が一番およびやすいこと、洪水や干ばつなどは、自殺やうつなどのメンタルヘルスの問題も引き起こすことなどが指摘されています。医学や健康のアプローチは、平和な世の中がずっと続き、食料も水も確保できることが当たり前の前提として議論されてきたように感じます。そうではなくて、いまや温暖化リスクを考え、こうした医療、健康対策を考える時期に突入しているのではないでしょうか。
地球温暖化の影響として議論されていることには、豪雨や干ばつなどによる極端な気候現象の発生、また農作物や水産物への深刻な悪影響、海の水位の上昇などがあります。それらは結果として、自然災害、水不足や食料不足をもたらし、人類の新たな紛争の種を生み出すことになるのではと心配されているのです。しかし、温暖化がもたらす健康への影響はあまり議論されていないように思います。科学誌ナショナルジオグラフィックスが最新号の気候変動特集でこの健康の視点でどういうリスクがあるかをレジメしています。(2015年11月号)日本でよく知られているのは熱帯に棲息していた毒クモや蚊などがじわじわと上陸しつつあるという事実でしょうか。実際マラリアやデング熱といった伝染病が温帯域である日本にまで広がっていくという恐れがあるのです。すでに東京では昨年デング熱の感染が話題になりました。アメリカでは、ウエストナイル熱などが猛威をふるっています。今後心配なのはライム病などを媒介するマダニの増加です。さらに記事では次のことも指摘しています。農業や建設業などで労働者の間で熱中症のリスクが極端に高まり労働時間は夜にシフトしなければならなくなること、アレルギーのシーズンが延長して呼吸器疾患の患者が増加すること、干ばつと水不足で都会に住む住民の健康が悪化すること、からだをあまり動かさない高齢者に極端な気象の影響が一番およびやすいこと、洪水や干ばつなどは、自殺やうつなどのメンタルヘルスの問題も引き起こすことなどが指摘されています。医学や健康のアプローチは、平和な世の中がずっと続き、食料も水も確保できることが当たり前の前提として議論されてきたように感じます。そうではなくて、いまや温暖化リスクを考え、こうした医療、健康対策を考える時期に突入しているのではないでしょうか。
2015年11月2日月曜日
~海の霊長類を知っていますか?タコには高度な知性がある~
単細胞のアメーバ状生物である「粘菌」は、脳はもちろん神経系さえもたない生き物ですが、時間を記憶する能力をもち、迷路を与えると最短ルートで移動するといいます。庭先にどこにでもいる「ダンゴムシ」には、水で囲ったり、行き止まりを作ったりするとそこから脱出する不思議な行動を起こします。こうした知性と似た不思議な現象を見つめる学者のなかには、単細胞や昆虫であっても知的活動や意識、あるいは心さえあるのではないかと真剣に議論を行っている人がいます。かつて生物学者ライアル・ワトソンが著書「生命潮流」で、霊長類は人間だけでなく海にもいる、それはイカやタコといった頭足類であり、そうした仲間は高度の知能を有している「海の霊長類」だと語りました。タコの知能はどれほどのものか、興味深い実験があります。タコをふたつの水槽で一匹ずつ入れ、両方の水槽に蓋をまわして開けないと決して餌が摂れない容器をセットし飼育します。片方のタコは実はこの容器の開けかたを知っているのですが、やがてこの容器の開け方をじっと観察した隣のタコは、すぐそれを学びすぐ容器を開けられるようになるといいます。他者の動作の観察と学習、模倣といった高度な動作です。脊椎動物ではヒトが知能がもっとも進んでいるかもしれませんが、無脊椎動物ではおそらく頭足類がその知能が最も進化していると考えれています。もしかしてあと数十億年したら、彼らがさらに進化し知能で地球を征服しているかもしれないのです。こうして考えると生命現象には、もともと意識や心の種というべき「知的なもの」があり、決して人間だけが地球上の知性生物ではないことを教えられます。
単細胞のアメーバ状生物である「粘菌」は、脳はもちろん神経系さえもたない生き物ですが、時間を記憶する能力をもち、迷路を与えると最短ルートで移動するといいます。庭先にどこにでもいる「ダンゴムシ」には、水で囲ったり、行き止まりを作ったりするとそこから脱出する不思議な行動を起こします。こうした知性と似た不思議な現象を見つめる学者のなかには、単細胞や昆虫であっても知的活動や意識、あるいは心さえあるのではないかと真剣に議論を行っている人がいます。かつて生物学者ライアル・ワトソンが著書「生命潮流」で、霊長類は人間だけでなく海にもいる、それはイカやタコといった頭足類であり、そうした仲間は高度の知能を有している「海の霊長類」だと語りました。タコの知能はどれほどのものか、興味深い実験があります。タコをふたつの水槽で一匹ずつ入れ、両方の水槽に蓋をまわして開けないと決して餌が摂れない容器をセットし飼育します。片方のタコは実はこの容器の開けかたを知っているのですが、やがてこの容器の開け方をじっと観察した隣のタコは、すぐそれを学びすぐ容器を開けられるようになるといいます。他者の動作の観察と学習、模倣といった高度な動作です。脊椎動物ではヒトが知能がもっとも進んでいるかもしれませんが、無脊椎動物ではおそらく頭足類がその知能が最も進化していると考えれています。もしかしてあと数十億年したら、彼らがさらに進化し知能で地球を征服しているかもしれないのです。こうして考えると生命現象には、もともと意識や心の種というべき「知的なもの」があり、決して人間だけが地球上の知性生物ではないことを教えられます。
2015年10月28日水曜日
~「筋肉作り」でいま注目されている栄養素「VitaminD」~
この飽食の時代に信じられないのですが、現代の日本人のカロリー摂取は戦後すぐの食料不足時代より低くなる傾向だといわれています。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると1975年以降、日本人のカロリー摂取は右肩下がりで下がっています。背景にはダイエットの流行や食のかたより、朝食抜きの実態などがあると考えれています。特に炭水化物ととらないパレオ主義の人たちやダイエットに熱心な女性でその傾向は著しいといわれています。こうしたなかで心配されているのは微量栄養素の摂取不足です。特に再認識されなくてはならない栄養素として「ビタミンD」があります。ビタミンDといえばカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする栄養素として知られてきました。しかしこの数年の最新の研究では、ビタミンDは骨だけではなく体の「筋肉」を増強する作用があることがわかってきました。筋肉にはビタミンDと結合する「受容体」があり、受容体とビタミンDが結合すると筋肉中のタンパク質の合成が促進されると判明してきたのです。成人に必要なビタミンDは、1日あたり5~5.5マイクログラム。多く摂取する人のほうが、筋肉量が多いという報告があります。サンマ1匹あるいはサケ1切れでも20マイクログラムほどのビタミンDがあるので、この季節、魚食がいかにおいしくて、また理にかなったものであるかがわかります。そのほかキノコ類、卵などにもビタミンDは多く含まれています。高齢になるとタンパク合成能が低下するのみならず、腸でのアミノ酸吸収率が落ちるといわれています。筋肉を増やすための食事をどう摂るべきか、若い時期とは異なる調理法などを考えなければならないといえるのです。
この飽食の時代に信じられないのですが、現代の日本人のカロリー摂取は戦後すぐの食料不足時代より低くなる傾向だといわれています。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると1975年以降、日本人のカロリー摂取は右肩下がりで下がっています。背景にはダイエットの流行や食のかたより、朝食抜きの実態などがあると考えれています。特に炭水化物ととらないパレオ主義の人たちやダイエットに熱心な女性でその傾向は著しいといわれています。こうしたなかで心配されているのは微量栄養素の摂取不足です。特に再認識されなくてはならない栄養素として「ビタミンD」があります。ビタミンDといえばカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする栄養素として知られてきました。しかしこの数年の最新の研究では、ビタミンDは骨だけではなく体の「筋肉」を増強する作用があることがわかってきました。筋肉にはビタミンDと結合する「受容体」があり、受容体とビタミンDが結合すると筋肉中のタンパク質の合成が促進されると判明してきたのです。成人に必要なビタミンDは、1日あたり5~5.5マイクログラム。多く摂取する人のほうが、筋肉量が多いという報告があります。サンマ1匹あるいはサケ1切れでも20マイクログラムほどのビタミンDがあるので、この季節、魚食がいかにおいしくて、また理にかなったものであるかがわかります。そのほかキノコ類、卵などにもビタミンDは多く含まれています。高齢になるとタンパク合成能が低下するのみならず、腸でのアミノ酸吸収率が落ちるといわれています。筋肉を増やすための食事をどう摂るべきか、若い時期とは異なる調理法などを考えなければならないといえるのです。
2015年10月27日火曜日
~長寿遺伝子を活性化するメカニズムが解明される~
「酵母」の研究からそれは始まりました。パンやビールをつくるときに必要な酵母ですが、実験材料として長い歴史があります。酵母を栄養を減らした培養液で育てると、寿命が延びることが以前から知られていました。カロリー制限で長生きするという事実です。この事実からスタートし、その後の研究から、カロリー制限を行うと、細胞でミトコンドリア呼吸が促進し、エネルギー運搬分子のNADが増え、そのためサーチュイン遺伝子が活性化する。そして最終的にタンパク合成装置である「リボゾーム」の活動を安定化することで、細胞の寿命が伸びるということがわかってきました。サーチュイン遺伝子は、サルやヒトでも見つかり「長寿遺伝子」などと呼ばれるようになりました。その後、サーチュイン遺伝子を活性化する物質(レスベラトロール)が赤ワインやピーナッツに皮などに含まれるポリフェノールから見つかり、サプリメントとして爆発的な売れ行きを見せたことはご存知のかたも多いと思います。マウスの実験ですが、レスベラトロールを餌として投与することで寿命の延伸効果が初めて科学的に証明されました。これは夢のあるすばらしい研究報告です。こうしてサーチュイン・レスベラトロール学説は華やかに登場し、現在も熱い視線が注がれています。しかしこれに反論する研究結果も、現在数多く発表されています。ヒトの肥満者での検討ではレスベラトロールは効果がまったくみられなかったというものなどがあります。まだこの長寿延命効果の論争は決着がついていないのです。サプリメントに奔るのはまだ少し早いようですが、カロリーの摂取量と寿命という、生命の「不思議なしくみ」をここでも感じさせてくれます。
「酵母」の研究からそれは始まりました。パンやビールをつくるときに必要な酵母ですが、実験材料として長い歴史があります。酵母を栄養を減らした培養液で育てると、寿命が延びることが以前から知られていました。カロリー制限で長生きするという事実です。この事実からスタートし、その後の研究から、カロリー制限を行うと、細胞でミトコンドリア呼吸が促進し、エネルギー運搬分子のNADが増え、そのためサーチュイン遺伝子が活性化する。そして最終的にタンパク合成装置である「リボゾーム」の活動を安定化することで、細胞の寿命が伸びるということがわかってきました。サーチュイン遺伝子は、サルやヒトでも見つかり「長寿遺伝子」などと呼ばれるようになりました。その後、サーチュイン遺伝子を活性化する物質(レスベラトロール)が赤ワインやピーナッツに皮などに含まれるポリフェノールから見つかり、サプリメントとして爆発的な売れ行きを見せたことはご存知のかたも多いと思います。マウスの実験ですが、レスベラトロールを餌として投与することで寿命の延伸効果が初めて科学的に証明されました。これは夢のあるすばらしい研究報告です。こうしてサーチュイン・レスベラトロール学説は華やかに登場し、現在も熱い視線が注がれています。しかしこれに反論する研究結果も、現在数多く発表されています。ヒトの肥満者での検討ではレスベラトロールは効果がまったくみられなかったというものなどがあります。まだこの長寿延命効果の論争は決着がついていないのです。サプリメントに奔るのはまだ少し早いようですが、カロリーの摂取量と寿命という、生命の「不思議なしくみ」をここでも感じさせてくれます。
2015年10月24日土曜日
~文明史2000年を生き抜いてきた宗教とは何か?~
人類はすべて「アフリカ人」の子孫であると現代の科学は証明しています。いま生きているヒトは皆アフリカ人の子供たちなのです。数万年前に出アフリカした現生人類の先祖たちは、ネアンデルタール人などとも遭遇しながらヨーロッパへ、ユーラシアへ、アジアへ拡散していきました。そうした長い歴史(地球の歴史からみるとほんの一瞬ですが)のなかで、人は狩猟生活からやがて農業、生活道具、灌漑工事などを発明してきました。この時間の流れで一番不思議に感じるのは、主に中東地域で誕生したキリスト教やイスラム教といった精神生活の発明、「宗教」です。21世紀を迎え、宇宙の謎がわかり、DNAの存在や生物進化も解明されていくなかで、宗教の教えは力強く生き残っています。この現代にあっても進化論やビッグバーン宇宙論などを排除するキリスト教の教えを多くの人々はこころの拠り所としています。考えてみてください、2000年も変わらず、信仰されてきた教えとは何とすごい力を秘めているのでしょうか。宗教のためにすべてを犠牲にし、夢中になれる、あのイスラム国の人々を見ると人類は、Homo Monastica 信仰を持つ生き物だと思ってしまいます。ひるがえって、私たち日本人は、生まれてからおよそ真の宗教に「感染」せずに生きてきているので、中東やインド、アジアの人々の宗教への姿勢はまったく理解ができません。それが幸せか不幸かはわかりませんが。無神論がいいとは言いませんが、宗教とちょうどいい距離を保つ姿勢や方法を皆が身につけてほしいと考えますが、いかがでしょう。
人類はすべて「アフリカ人」の子孫であると現代の科学は証明しています。いま生きているヒトは皆アフリカ人の子供たちなのです。数万年前に出アフリカした現生人類の先祖たちは、ネアンデルタール人などとも遭遇しながらヨーロッパへ、ユーラシアへ、アジアへ拡散していきました。そうした長い歴史(地球の歴史からみるとほんの一瞬ですが)のなかで、人は狩猟生活からやがて農業、生活道具、灌漑工事などを発明してきました。この時間の流れで一番不思議に感じるのは、主に中東地域で誕生したキリスト教やイスラム教といった精神生活の発明、「宗教」です。21世紀を迎え、宇宙の謎がわかり、DNAの存在や生物進化も解明されていくなかで、宗教の教えは力強く生き残っています。この現代にあっても進化論やビッグバーン宇宙論などを排除するキリスト教の教えを多くの人々はこころの拠り所としています。考えてみてください、2000年も変わらず、信仰されてきた教えとは何とすごい力を秘めているのでしょうか。宗教のためにすべてを犠牲にし、夢中になれる、あのイスラム国の人々を見ると人類は、Homo Monastica 信仰を持つ生き物だと思ってしまいます。ひるがえって、私たち日本人は、生まれてからおよそ真の宗教に「感染」せずに生きてきているので、中東やインド、アジアの人々の宗教への姿勢はまったく理解ができません。それが幸せか不幸かはわかりませんが。無神論がいいとは言いませんが、宗教とちょうどいい距離を保つ姿勢や方法を皆が身につけてほしいと考えますが、いかがでしょう。
2015年10月21日水曜日
~生き残っていた?九州のツキノワグ~ いまこそ発言せよ保全生態学者たち!
九州の福岡、佐賀県境でクマが目撃されたというニュースが流れています。すでのツキノワグマは九州では絶滅したと宣言(平成24年)されていることや、脊振山という森はクマが生息するのは狭すぎると考えれていますが、どこかで生き残った系統か、あるいは本州から泳いで渡ってきたのではないか、などさまざまな議論がなされています。しかしメディアにあまりにも見識がないのも気になります。大方のメディアは野生生物の存在の意義をまったく理解していません。もちろん人に危害をおよぼす可能性もあるので注意は必要ですが、もしツキノワグマだとすると、この開発が進む日本国内の森林でよくぞ生きのびてくれたと、野生の命に賛美を送りたい気持ちです。あまり意識されることはないのですが、先進工業国で野生のサルが広く地域に生息している国は世界にはわが国以外存在しません。それだけ水と緑にめぐまれた土地ということです。しかし国民の野生生物に対する理解がこんなに不足している社会もないように思います。生態系でクマやサルが生きていけるということの素晴らしさをもっともっと理解しなくてはなりません。クマには「プレデター(捕食者)」としての重要な存在意味があります。シカとオオカミのように、プレデターであるオオカミがいなくなるとシカは生態系で異常繁殖したり歯止めが効かなくなります。クマにも自然で大きなや役割があたえれrているはずです。保全生物学や生態学の研究からすでに多くの捕食のメカニズムが明らかにされてきました。なんといとおしい命、日本のツキノワグマたち。日本の農学者や保全生態学者はこうしたタイミングでこそ、野生生物と生態系の意味を市民にもっと強く説いてほしい。メディアへの発言は、クマが単に危険生物だというような、短絡的で無知な発言はやめてほしいと願うばかりです。
九州の福岡、佐賀県境でクマが目撃されたというニュースが流れています。すでのツキノワグマは九州では絶滅したと宣言(平成24年)されていることや、脊振山という森はクマが生息するのは狭すぎると考えれていますが、どこかで生き残った系統か、あるいは本州から泳いで渡ってきたのではないか、などさまざまな議論がなされています。しかしメディアにあまりにも見識がないのも気になります。大方のメディアは野生生物の存在の意義をまったく理解していません。もちろん人に危害をおよぼす可能性もあるので注意は必要ですが、もしツキノワグマだとすると、この開発が進む日本国内の森林でよくぞ生きのびてくれたと、野生の命に賛美を送りたい気持ちです。あまり意識されることはないのですが、先進工業国で野生のサルが広く地域に生息している国は世界にはわが国以外存在しません。それだけ水と緑にめぐまれた土地ということです。しかし国民の野生生物に対する理解がこんなに不足している社会もないように思います。生態系でクマやサルが生きていけるということの素晴らしさをもっともっと理解しなくてはなりません。クマには「プレデター(捕食者)」としての重要な存在意味があります。シカとオオカミのように、プレデターであるオオカミがいなくなるとシカは生態系で異常繁殖したり歯止めが効かなくなります。クマにも自然で大きなや役割があたえれrているはずです。保全生物学や生態学の研究からすでに多くの捕食のメカニズムが明らかにされてきました。なんといとおしい命、日本のツキノワグマたち。日本の農学者や保全生態学者はこうしたタイミングでこそ、野生生物と生態系の意味を市民にもっと強く説いてほしい。メディアへの発言は、クマが単に危険生物だというような、短絡的で無知な発言はやめてほしいと願うばかりです。
2015年10月18日日曜日
~社会的脆弱性指標・・・あなたは他者から敬意を持って扱われているか~
「フレイル」という新たな概念が身体的、精神的、社会的の3つの要因から成り立つとする考え方は、実はWHO(世界保健機関)がすでに「健康の定義」として宣言したものにきわめて酷似しています。WHOの健康の定義では、健康とは「病気でないとか弱っていないというだけではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にもすべてが満たされや状態にあること」とされています。社会的に満たされていること、つまり「social well-being」とは、周りに支援してくれる家族、友人がいて、他者との密接な関係と同時に他者への信頼があり、他者から公平に敬意を持って扱われていること、総じて信頼と帰属意識がある状態をいうとのことです。いま社会的な虚弱が、本当に寝たきりや死亡率を高めるのかが研究者の大きな関心事となっています。そこで「社会的脆弱性指標」というのが提案されていています。この社会的脆弱性指標とは、支援の有無、友人、親戚、近所づきあい、電話の使用、老司クラブ、スポーツクラブの活動、経済状況、配偶状況、読み書きなど40項目が挙げられています。カナダでのあるコホート研究(アンドリューら)では、社会的脆弱性指標が高いほど死亡率が高いことが示されたといいます。日本では、介護保険のための「基本チエックリスト」がこの社会的脆弱性指標のひとつになるのではないかといま再評価されています。このリストでは、外出の頻度、買い物、貯金の出し入れ、友人訪問、家族との相談などが項目で挙げられているのです。いづれにしても社会とのつながりがあってこそ、人は人らしく生きられるいうことでしょうか。
「フレイル」という新たな概念が身体的、精神的、社会的の3つの要因から成り立つとする考え方は、実はWHO(世界保健機関)がすでに「健康の定義」として宣言したものにきわめて酷似しています。WHOの健康の定義では、健康とは「病気でないとか弱っていないというだけではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にもすべてが満たされや状態にあること」とされています。社会的に満たされていること、つまり「social well-being」とは、周りに支援してくれる家族、友人がいて、他者との密接な関係と同時に他者への信頼があり、他者から公平に敬意を持って扱われていること、総じて信頼と帰属意識がある状態をいうとのことです。いま社会的な虚弱が、本当に寝たきりや死亡率を高めるのかが研究者の大きな関心事となっています。そこで「社会的脆弱性指標」というのが提案されていています。この社会的脆弱性指標とは、支援の有無、友人、親戚、近所づきあい、電話の使用、老司クラブ、スポーツクラブの活動、経済状況、配偶状況、読み書きなど40項目が挙げられています。カナダでのあるコホート研究(アンドリューら)では、社会的脆弱性指標が高いほど死亡率が高いことが示されたといいます。日本では、介護保険のための「基本チエックリスト」がこの社会的脆弱性指標のひとつになるのではないかといま再評価されています。このリストでは、外出の頻度、買い物、貯金の出し入れ、友人訪問、家族との相談などが項目で挙げられているのです。いづれにしても社会とのつながりがあってこそ、人は人らしく生きられるいうことでしょうか。
2015年10月16日金曜日
~社会的存在であってこそ”健康長寿”な人である~
高齢者の体の変化を「フレイル」ということばで捉える研究が現在進んでいると紹介しました。健康寿命の延伸をめざし、これまで「メタボ」、「ロコモ」、あるいは「脳の活性化」といった内科や整形外科等からのアプローチがありましたが、フレイルが強く関心を寄せている課題のひとつは他の考え方と際立って異なっています。それは社会的な存在として健康を捉えるという、「社会的フレイル」の考え方です。このキーワードはいわば医学の範疇を越えていて、フレイルという概念を最も特徴づけています。それはこれまでの高齢者の観察から、地域社会や家族との関係が希薄化したり、あるいは家に引きこもったりすることが、寝たきりの症状やからだの虚弱化をさらに大きく促すことが経験上、明らかになってきたことがあげられます。高齢者が、転ぶことが怖いので外出しない、家の中でずっと時間を過ごしている、趣味や楽しみもなくなったといった生活状況になると、あったいう間に身体的な能力が低下し(身体的フレイル)、さらには認知機能も低下(認知症など)しやすくなるというのです。こうした状況を数多く医師たちは見つめてきました。この「閉じこもり」、「他者との交流」、「趣味などの生きがい」といった問題に正面切って対峙しているのが。新たな概念「フレイル」です。すべてははじまったばかりの分野ですので、どう科学的に捉えて、どう分析し、またどう介入(個人へ、社会環境へ)すればいいのか、まだまだ診断法や分析する理論はありません。またはたして何らかの介入で社会的なフレイルは改善できるのか、それも未知数です。数多くの大きな課題が目の前にあるようです。しかし老化を生き物としての自然な経緯と考えて、医学だけでなく全人的なアプローチを試みるという医療が、いまはじまったといえるでしょう。
高齢者の体の変化を「フレイル」ということばで捉える研究が現在進んでいると紹介しました。健康寿命の延伸をめざし、これまで「メタボ」、「ロコモ」、あるいは「脳の活性化」といった内科や整形外科等からのアプローチがありましたが、フレイルが強く関心を寄せている課題のひとつは他の考え方と際立って異なっています。それは社会的な存在として健康を捉えるという、「社会的フレイル」の考え方です。このキーワードはいわば医学の範疇を越えていて、フレイルという概念を最も特徴づけています。それはこれまでの高齢者の観察から、地域社会や家族との関係が希薄化したり、あるいは家に引きこもったりすることが、寝たきりの症状やからだの虚弱化をさらに大きく促すことが経験上、明らかになってきたことがあげられます。高齢者が、転ぶことが怖いので外出しない、家の中でずっと時間を過ごしている、趣味や楽しみもなくなったといった生活状況になると、あったいう間に身体的な能力が低下し(身体的フレイル)、さらには認知機能も低下(認知症など)しやすくなるというのです。こうした状況を数多く医師たちは見つめてきました。この「閉じこもり」、「他者との交流」、「趣味などの生きがい」といった問題に正面切って対峙しているのが。新たな概念「フレイル」です。すべてははじまったばかりの分野ですので、どう科学的に捉えて、どう分析し、またどう介入(個人へ、社会環境へ)すればいいのか、まだまだ診断法や分析する理論はありません。またはたして何らかの介入で社会的なフレイルは改善できるのか、それも未知数です。数多くの大きな課題が目の前にあるようです。しかし老化を生き物としての自然な経緯と考えて、医学だけでなく全人的なアプローチを試みるという医療が、いまはじまったといえるでしょう。
2015年10月14日水曜日
~加齢にともなうカラダの変化にいま科学の眼が~
「フレイル」の研究はまだ始まったばかりで、世界的にみても15年ほどの歴史しかありません。そして「身体的なフレイル」については、診断について世界共通の基準が確立していないといわれています。現在評価方法として最もよく用いられているのは米国バルティモアの名門ジョンホプキンス医科大のフリード教授の身体的なフレイル診断法です。その評価の項目は、①筋力の低下(握力で測定)、②活動量の低下(生活不活発、消費カロリーの極端な低下)、③歩行速度の低下、④易疲労感(面倒と感じる、疲れやすい)、⑤体重減少(意図しない)とされています。このうち、3つ以上に該当があればフレイル、1つまたは2つ該当すれば「プレフレイル(フレイルの前段階)」とされます。また②や④はきわめて精神神経的な症状とも考えられますので単に身体的な衰弱だけではないと認識されていることがよくわかります。実際身体的なフレイルは、認知の障害あるいはアルツハイマー病を合併している場合が多いことが報告されています。いま認知症の研究者の中には「身体機能が低下する」ことで「認知機能」が低下していくという新たな考え方が生まれています。しかしこれはまだ科学的な実証がなく、認められた説とはなっていません。しかしいずれにしても、認知機能の低下や筋力の衰弱など加齢にともなう身体の変化が複雑に絡み合って「フレイル」という症状が進行している様子がうかがわれます。高齢者の体の変化はいまようやくその一部が少しずつ解明されようとしているのです。
「フレイル」の研究はまだ始まったばかりで、世界的にみても15年ほどの歴史しかありません。そして「身体的なフレイル」については、診断について世界共通の基準が確立していないといわれています。現在評価方法として最もよく用いられているのは米国バルティモアの名門ジョンホプキンス医科大のフリード教授の身体的なフレイル診断法です。その評価の項目は、①筋力の低下(握力で測定)、②活動量の低下(生活不活発、消費カロリーの極端な低下)、③歩行速度の低下、④易疲労感(面倒と感じる、疲れやすい)、⑤体重減少(意図しない)とされています。このうち、3つ以上に該当があればフレイル、1つまたは2つ該当すれば「プレフレイル(フレイルの前段階)」とされます。また②や④はきわめて精神神経的な症状とも考えられますので単に身体的な衰弱だけではないと認識されていることがよくわかります。実際身体的なフレイルは、認知の障害あるいはアルツハイマー病を合併している場合が多いことが報告されています。いま認知症の研究者の中には「身体機能が低下する」ことで「認知機能」が低下していくという新たな考え方が生まれています。しかしこれはまだ科学的な実証がなく、認められた説とはなっていません。しかしいずれにしても、認知機能の低下や筋力の衰弱など加齢にともなう身体の変化が複雑に絡み合って「フレイル」という症状が進行している様子がうかがわれます。高齢者の体の変化はいまようやくその一部が少しずつ解明されようとしているのです。
2015年10月13日火曜日
~「フレイル」という新語・・・高齢者は不可逆的に老いていくのではない~
老年医学の分野から提言されている「フレイル」とは、高齢期に生理的予備能が低下していくことでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害や要介護状態などの転機に陥りやすい状態とされています。介護保険で考えると、要支援プラス二次予防事業対象者に該当すると言われています。
なぜこうした概念が生まれてきたのかについては、これまで使われてきた「虚弱」、「老衰」、「脆弱」といった言葉だけでは、まことにネガティブな印象だけであり、加齢に伴うこうした高齢者の状態を正しくとらえておらず、なにより高齢期の多面的な要素や変化が表現できないからとされています。つまり上記のような脆弱になりつつある高齢者について分析・研究が進むことで、いまでは高齢者には①身体的なフレのイル②精神心理的なフレイル③社会的なフレイルの大きくは3つの要素、変化が存在するとわかってきたのです。そしてさらに科学的に証明されてきたのですが、この3つとも「適切な処置」を行う(介入)ことにより、生活機能・能力の維持向上を図ることが大いに期待できるというのです。これは高齢者にとってまことにうれしい事実といえるでしょう。不可逆的にただ老いていくという考え方はいまでは考えなおされているのです。いまこのフレイルという言葉は高齢者ケアや健康長寿の実現をめざす人々にとってホットな話題となり、多くの専門家による議論や研究の輪がひろがりつつあります。3つの要素についてはこの後少しづつ考えていきたいと思います。
老年医学の分野から提言されている「フレイル」とは、高齢期に生理的予備能が低下していくことでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害や要介護状態などの転機に陥りやすい状態とされています。介護保険で考えると、要支援プラス二次予防事業対象者に該当すると言われています。
なぜこうした概念が生まれてきたのかについては、これまで使われてきた「虚弱」、「老衰」、「脆弱」といった言葉だけでは、まことにネガティブな印象だけであり、加齢に伴うこうした高齢者の状態を正しくとらえておらず、なにより高齢期の多面的な要素や変化が表現できないからとされています。つまり上記のような脆弱になりつつある高齢者について分析・研究が進むことで、いまでは高齢者には①身体的なフレのイル②精神心理的なフレイル③社会的なフレイルの大きくは3つの要素、変化が存在するとわかってきたのです。そしてさらに科学的に証明されてきたのですが、この3つとも「適切な処置」を行う(介入)ことにより、生活機能・能力の維持向上を図ることが大いに期待できるというのです。これは高齢者にとってまことにうれしい事実といえるでしょう。不可逆的にただ老いていくという考え方はいまでは考えなおされているのです。いまこのフレイルという言葉は高齢者ケアや健康長寿の実現をめざす人々にとってホットな話題となり、多くの専門家による議論や研究の輪がひろがりつつあります。3つの要素についてはこの後少しづつ考えていきたいと思います。
2015年10月12日月曜日
~DNA型生命は広大な宇宙にひろく存在するのか?~
SFの中で語られてきた「地球外生命」の存在。地球以外に生命を宿す星はあるのだろうか・・、いまその答えに人類の歴史上はじめて科学的な解明がなされようとしています。ひとつは太陽系の中でその答えを見つけようとしています。液体の水が存在する火星や、小惑星などはその候補となっています。準惑星に格下げされたあの「冥王星」に史上はじめて接近した無人探査機「ニューホライズンズ」の送ってきた鮮明な画像をご覧になったでしょうか。複雑な山脈や砂浜が見つかっており、なにより逆光で撮影された薄い大気の青い映像は、青空が存在する証明でどこかに生命がいてもおかしくないと感じさせてくれます。そしてもうひとつのターゲットは、太陽系の外にある、遠い恒星の周りをまわる惑星(系外惑星と呼ばれていますが)です。こうした惑星は、自ら光を発することはないので非常に観測がむつかしかったのですが、様々な観測法の進歩で次々と見つかるようになりました。いまでは3500個もの「系外惑星」の存在が知られています。その多くは太陽系の常識では考えられない軌道を持つ惑星が多くみつかり、人類がスタンダードと考えていた太陽系は、宇宙の中では少数派かもしれないという議論もあります。2030年ころまでに観測を集中する惑星が絞り込まれて、国際共同研究で生命現象の存在が証明されていくと考えられています。はたしてそれは地球生命と同じDNAを持った生命なのでしょうか。別のタイプの生命体なのでしょうか。多くの科学者はおそらく地球と同じ生命が、この宇宙には生存しているのではないかと考えています。生命はなぜ存在するのか、どこから来たのか、これまでの人類数千年の宗教や科学、哲学、思想を根底的にひっくり返す大発見がいまそこまで来ているのです。
SFの中で語られてきた「地球外生命」の存在。地球以外に生命を宿す星はあるのだろうか・・、いまその答えに人類の歴史上はじめて科学的な解明がなされようとしています。ひとつは太陽系の中でその答えを見つけようとしています。液体の水が存在する火星や、小惑星などはその候補となっています。準惑星に格下げされたあの「冥王星」に史上はじめて接近した無人探査機「ニューホライズンズ」の送ってきた鮮明な画像をご覧になったでしょうか。複雑な山脈や砂浜が見つかっており、なにより逆光で撮影された薄い大気の青い映像は、青空が存在する証明でどこかに生命がいてもおかしくないと感じさせてくれます。そしてもうひとつのターゲットは、太陽系の外にある、遠い恒星の周りをまわる惑星(系外惑星と呼ばれていますが)です。こうした惑星は、自ら光を発することはないので非常に観測がむつかしかったのですが、様々な観測法の進歩で次々と見つかるようになりました。いまでは3500個もの「系外惑星」の存在が知られています。その多くは太陽系の常識では考えられない軌道を持つ惑星が多くみつかり、人類がスタンダードと考えていた太陽系は、宇宙の中では少数派かもしれないという議論もあります。2030年ころまでに観測を集中する惑星が絞り込まれて、国際共同研究で生命現象の存在が証明されていくと考えられています。はたしてそれは地球生命と同じDNAを持った生命なのでしょうか。別のタイプの生命体なのでしょうか。多くの科学者はおそらく地球と同じ生命が、この宇宙には生存しているのではないかと考えています。生命はなぜ存在するのか、どこから来たのか、これまでの人類数千年の宗教や科学、哲学、思想を根底的にひっくり返す大発見がいまそこまで来ているのです。
2015年10月9日金曜日
~若い時期から準備をはじめなければ、すこやかな高齢者にはなれない~
「生活筋力」という用語がコマーシャルなどでも使用されるようになってきました。日常生活を営むのに必要な筋肉量と筋力を意味する言葉とされています。階段の昇り降り、掃除や布団の上げ下げなどが、苦痛を感じることなく行える能力があるということです。例えば以前も述べた「歩行速度」も筋力のめやすです。青信号で道路を渡ることができる時間は、歩行速度が毎秒1メートルの速度で設計されています。横断歩道が渡れないとなると、歩行速度が遅くなっているということになるので要注意です。いわゆる「後期高齢者」の問題といえますが、筋肉は、部位にもよるのですが驚くことに30歳を越えると、10年で約5%程度の割合で減少していくという報告があります。筋肉は使えば使う分筋量は維持できるのですが、使わないと、体は余分なものとして判断してあっという間に細くなっていくのです。握力も50歳代から徐々に低下していきます。重い荷物が持てなくなったとか持つのがおっくうになったというのは、上半身の筋肉の減少が考えられます。これらの事実は、筋肉の減少の問題が決して後期高齢者の問題ではなく、中高年の時代から意識し、健全な生活習慣を養っていかなければならないということを教えているのです。
「生活筋力」という用語がコマーシャルなどでも使用されるようになってきました。日常生活を営むのに必要な筋肉量と筋力を意味する言葉とされています。階段の昇り降り、掃除や布団の上げ下げなどが、苦痛を感じることなく行える能力があるということです。例えば以前も述べた「歩行速度」も筋力のめやすです。青信号で道路を渡ることができる時間は、歩行速度が毎秒1メートルの速度で設計されています。横断歩道が渡れないとなると、歩行速度が遅くなっているということになるので要注意です。いわゆる「後期高齢者」の問題といえますが、筋肉は、部位にもよるのですが驚くことに30歳を越えると、10年で約5%程度の割合で減少していくという報告があります。筋肉は使えば使う分筋量は維持できるのですが、使わないと、体は余分なものとして判断してあっという間に細くなっていくのです。握力も50歳代から徐々に低下していきます。重い荷物が持てなくなったとか持つのがおっくうになったというのは、上半身の筋肉の減少が考えられます。これらの事実は、筋肉の減少の問題が決して後期高齢者の問題ではなく、中高年の時代から意識し、健全な生活習慣を養っていかなければならないということを教えているのです。
2015年10月7日水曜日
~健康長寿社会実現へ立ちはだかる大きな課題、筋肉減少症~
加齢とともに筋肉が減っていく、加齢性筋肉減少症=サルコペニア。アメリカの医師ローゼンバーグが、1989年に提唱した比較的新しい概念です。その診断基準については議論が続いていますが、ヨーロッパの研究グループが診断基準を出した後、2014年日本が中心となって体格の異なるアジア人の診断基準がアジアの研究者の手で発表されました。現在の診断基準としてはまずは歩行速度の測定。一秒間に0.8メートル以下のスピードでしか歩けないと、歩行速度は低下していると判定されます。つぎは握力の測定です。男性で26kg未満、女性で18kg未満だと握力が落ちていると判定されます。そしてDXA、BIAなどの筋肉量測定装置で体の筋肉量を正確に測定し、低筋肉と判定されると、サルコペニアと総合診断がなされるのです。このサルコぺアがどのようなメカニズムで進行するのか、いまは筋肉内でタンパク質の合成と分解のバランスが崩れるからとしかわかっていません。またこのサルコペニアを予防したり治療したりする承認された薬剤は残念ながらまだありません。対策としては、有酸素運動とともにレジスタンス運動(筋トレ)が筋肉量増加の効果があることが認められており、それてともに栄養管理宇が大切とされます。日本人のタンパク質摂取量は平均で一日あたり0.8g/kgとされていますが、サルコペニアの症状がある方は1.2から1.5g/kgと倍程度の摂取が要るとされるのです。またビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群などの適切な摂取も大事とされます。この分野の話題は、ますますこれから大きな社会的な意味をもっていくものと思われます。
加齢とともに筋肉が減っていく、加齢性筋肉減少症=サルコペニア。アメリカの医師ローゼンバーグが、1989年に提唱した比較的新しい概念です。その診断基準については議論が続いていますが、ヨーロッパの研究グループが診断基準を出した後、2014年日本が中心となって体格の異なるアジア人の診断基準がアジアの研究者の手で発表されました。現在の診断基準としてはまずは歩行速度の測定。一秒間に0.8メートル以下のスピードでしか歩けないと、歩行速度は低下していると判定されます。つぎは握力の測定です。男性で26kg未満、女性で18kg未満だと握力が落ちていると判定されます。そしてDXA、BIAなどの筋肉量測定装置で体の筋肉量を正確に測定し、低筋肉と判定されると、サルコペニアと総合診断がなされるのです。このサルコぺアがどのようなメカニズムで進行するのか、いまは筋肉内でタンパク質の合成と分解のバランスが崩れるからとしかわかっていません。またこのサルコペニアを予防したり治療したりする承認された薬剤は残念ながらまだありません。対策としては、有酸素運動とともにレジスタンス運動(筋トレ)が筋肉量増加の効果があることが認められており、それてともに栄養管理宇が大切とされます。日本人のタンパク質摂取量は平均で一日あたり0.8g/kgとされていますが、サルコペニアの症状がある方は1.2から1.5g/kgと倍程度の摂取が要るとされるのです。またビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群などの適切な摂取も大事とされます。この分野の話題は、ますますこれから大きな社会的な意味をもっていくものと思われます。
2015年10月5日月曜日
~医学・健康分野ではいま、「筋肉」に注目があつまっています~
加齢とともに骨格筋などの筋肉量が減り、筋力も低下することが知られています。生活活動が減り、寝たきりやひきこもりとなる原因となります。医学用語では「サルコペニア」といわれています。
そこでこれまでは、適切な運動による筋肉の維持強化が大切と強調されてきました。筋肉は70代、80代になっても鍛錬で強化できることがわかっているからです。筋肉が増えると関節や脊柱の働きを正常化し、基礎代謝も上がり生活習慣病の予防改善効果があるなど、健康増進にはすべてプラスの方向で働きます。しかし筋肉づくりには適切な栄養摂取が必須であることが、これまですこし軽視される傾向にありました。リハビリテーションの分野でも同じことが言え、ようやくリハビリテーション栄養学なる学問が確立されるようになったのは最近のことです。筋肉強化の栄養素としては、タンパク質とビタミンDなどですが、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、どういうアミノ酸のバランスが筋肉への吸収を促すかなども解明されてきました。またビタミンDの摂取量は日本人では意外と低くなってきているという指摘もあります。そしてあまり語られないのですが、同じように肉や魚を食していても、高齢者では腸からの吸収率が低下しているので若いときと同じような摂取ができないという悲しい事実もあります。栄養をしっかり管理して運動をおこなわないと逆効果ということが起こりかねません。医学の分野では「筋肉」は、特殊な病気しか存在しないという事情もあり、研究が遅れ「未開の地」とも呼ばれてきました。今年の夏、この「筋肉の諸問題」に正面から向き合う「日本筋学会」が誕生しました。今後の研究に期待が集まっています。
加齢とともに骨格筋などの筋肉量が減り、筋力も低下することが知られています。生活活動が減り、寝たきりやひきこもりとなる原因となります。医学用語では「サルコペニア」といわれています。
そこでこれまでは、適切な運動による筋肉の維持強化が大切と強調されてきました。筋肉は70代、80代になっても鍛錬で強化できることがわかっているからです。筋肉が増えると関節や脊柱の働きを正常化し、基礎代謝も上がり生活習慣病の予防改善効果があるなど、健康増進にはすべてプラスの方向で働きます。しかし筋肉づくりには適切な栄養摂取が必須であることが、これまですこし軽視される傾向にありました。リハビリテーションの分野でも同じことが言え、ようやくリハビリテーション栄養学なる学問が確立されるようになったのは最近のことです。筋肉強化の栄養素としては、タンパク質とビタミンDなどですが、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、どういうアミノ酸のバランスが筋肉への吸収を促すかなども解明されてきました。またビタミンDの摂取量は日本人では意外と低くなってきているという指摘もあります。そしてあまり語られないのですが、同じように肉や魚を食していても、高齢者では腸からの吸収率が低下しているので若いときと同じような摂取ができないという悲しい事実もあります。栄養をしっかり管理して運動をおこなわないと逆効果ということが起こりかねません。医学の分野では「筋肉」は、特殊な病気しか存在しないという事情もあり、研究が遅れ「未開の地」とも呼ばれてきました。今年の夏、この「筋肉の諸問題」に正面から向き合う「日本筋学会」が誕生しました。今後の研究に期待が集まっています。
2015年10月3日土曜日
~鳥類は爬虫類だった?という現代生物学の到達点~
地球上で2億年近くの長期にわたり大繁栄し、あるとき突然絶滅したことになっている「恐竜」。しかし今では、恐竜は絶滅したわけではなくひとつの系統が生き延びていると結論づけられています。
その生き延びた生き物、それは「鳥類」なのです。鳥類は「最も進化した恐竜で、爬虫類である」と現代生物学では考えられています。スズメやムクドリなど街に住む野鳥を見ている限り、恐竜の子孫というのは信じがたいのですが、動かない鳥として有名になった「ハシビロコウ」などの大型鳥のにらみつける形相を見ていると、時々なるほどと恐竜を彷彿させるものがあるように感じます。恐竜の種としての2大潮流、鳥盤類と竜盤類のうち竜盤類の系統から「気嚢(きのう)システム」という、低酸素でも効率よくガス交換できる体組織を獲得するものが現われました。気嚢システムは、地球史において酸素が薄かった時代に、恐竜たちに有利に働いたと考えられています。このしくみは一方で恐竜の大型化そして他方では軽量化をもたらしたといいます。またすでに多くに羽毛が生えていたこともわかっていますが、竜盤類のうちの「獣脚類」の一部が、6550万年前の大絶滅を生き延び、現在の鳥になったというはいまや定説となっているのです。こうして鳥たちは恐竜から気嚢システムを受け継ぎました。ヒトだと呼吸さえできなくなる高度である、ヒマラヤの山脈上空を軽々越えて飛ぶ鳥類(アネハヅル)は、このシステムがあるからこそそうしたことが可能となっているのです。新しい生物学の教科書には、これから鳥類をどう呼びどう位置づけていくのでしょうか。
地球上で2億年近くの長期にわたり大繁栄し、あるとき突然絶滅したことになっている「恐竜」。しかし今では、恐竜は絶滅したわけではなくひとつの系統が生き延びていると結論づけられています。
その生き延びた生き物、それは「鳥類」なのです。鳥類は「最も進化した恐竜で、爬虫類である」と現代生物学では考えられています。スズメやムクドリなど街に住む野鳥を見ている限り、恐竜の子孫というのは信じがたいのですが、動かない鳥として有名になった「ハシビロコウ」などの大型鳥のにらみつける形相を見ていると、時々なるほどと恐竜を彷彿させるものがあるように感じます。恐竜の種としての2大潮流、鳥盤類と竜盤類のうち竜盤類の系統から「気嚢(きのう)システム」という、低酸素でも効率よくガス交換できる体組織を獲得するものが現われました。気嚢システムは、地球史において酸素が薄かった時代に、恐竜たちに有利に働いたと考えられています。このしくみは一方で恐竜の大型化そして他方では軽量化をもたらしたといいます。またすでに多くに羽毛が生えていたこともわかっていますが、竜盤類のうちの「獣脚類」の一部が、6550万年前の大絶滅を生き延び、現在の鳥になったというはいまや定説となっているのです。こうして鳥たちは恐竜から気嚢システムを受け継ぎました。ヒトだと呼吸さえできなくなる高度である、ヒマラヤの山脈上空を軽々越えて飛ぶ鳥類(アネハヅル)は、このシステムがあるからこそそうしたことが可能となっているのです。新しい生物学の教科書には、これから鳥類をどう呼びどう位置づけていくのでしょうか。
2015年10月2日金曜日
~65歳から本当に高齢者なの?日本のお年寄りの定義が揺らいでいます~
なんとなく皆感じているのですが、高齢者といってもすごく元気な方がいるということです。65歳以上の高齢者は知力、体力、あるいは健康状態についても20年の前の調査データと比べると各段に若返っているといいます。日本老年医学会が今年6月に横浜で開催された学術集会で発表した報告によりますと、以下のように日本のお年寄りの若返りが進んでいると伝えられています。
①「身体」では、歩行速度が男女とも11歳若返った。握力は男性で4歳若返り、女性で10歳と大幅の若返りが見られます。(桜美林大学・鈴木隆雄教授ら 秋田県での調査データを比較)
②「知力(知能検査)」では、60歳代の得点が過去の40.50歳代に近づき、70歳代は10年若返っている。(国立長寿医療研究センターにより大府市での知能検査を分析)
③「病気(健康状態)」では、心筋こうそくや脳卒中になる割合が大きく低下した。死亡率も下がり、10年前と比較すると5~10歳若い人と同じ程度となった。(東京大学老年医学・秋下雅弘教授ら)
これらの科学的なデータから総論すると「現在の高齢者は、10年から20年前に比べ、およそ5歳から10歳若返っていると考えられる」と結論できるそうです。同学会では現在の65歳以上と線引きされている「高齢者の定義」を見直す必要があるので検討したいとさえ宣言しています。また今後の課題として「活力ある超高齢社会を形作るために、高齢者が就労やボランティア活動に参加できる社会を作っていかなければならない」と声明を出しています。地球上でおそらく最も栄養や医療、環境と社会制度にも恵まれた日本人。せっかく伸びた体力とパワーを社会にも貢献できるようなものに誘導していけるがいま問われているようです。
なんとなく皆感じているのですが、高齢者といってもすごく元気な方がいるということです。65歳以上の高齢者は知力、体力、あるいは健康状態についても20年の前の調査データと比べると各段に若返っているといいます。日本老年医学会が今年6月に横浜で開催された学術集会で発表した報告によりますと、以下のように日本のお年寄りの若返りが進んでいると伝えられています。
①「身体」では、歩行速度が男女とも11歳若返った。握力は男性で4歳若返り、女性で10歳と大幅の若返りが見られます。(桜美林大学・鈴木隆雄教授ら 秋田県での調査データを比較)
②「知力(知能検査)」では、60歳代の得点が過去の40.50歳代に近づき、70歳代は10年若返っている。(国立長寿医療研究センターにより大府市での知能検査を分析)
③「病気(健康状態)」では、心筋こうそくや脳卒中になる割合が大きく低下した。死亡率も下がり、10年前と比較すると5~10歳若い人と同じ程度となった。(東京大学老年医学・秋下雅弘教授ら)
これらの科学的なデータから総論すると「現在の高齢者は、10年から20年前に比べ、およそ5歳から10歳若返っていると考えられる」と結論できるそうです。同学会では現在の65歳以上と線引きされている「高齢者の定義」を見直す必要があるので検討したいとさえ宣言しています。また今後の課題として「活力ある超高齢社会を形作るために、高齢者が就労やボランティア活動に参加できる社会を作っていかなければならない」と声明を出しています。地球上でおそらく最も栄養や医療、環境と社会制度にも恵まれた日本人。せっかく伸びた体力とパワーを社会にも貢献できるようなものに誘導していけるがいま問われているようです。
2015年10月1日木曜日
~地球の生き物を陰で操る「寄生虫」の不気味ですばらしいサバイバル術~
「寄生虫」と呼ばれるちょっと気味の悪い地球上の生物が、実はものすごい謎の力を持っており、多くの生き物たちを操っていることが、いま大きな話題になっています。NHKのEテレ「スーパープレゼンテーション」でも英国のサイエンスライターが講演し話題となりました。自殺するコオロギという現象があることをご存知でしょうか。ハリガネムシという寄生虫がいますが、コオロギはこの幼虫を食べます。そしてコオロギの体内でこの寄生虫は、育ち成虫となるのですが、ここからが自然の大いなる謎。この親となったハリガネムシは水中でないと交尾と産卵を行うことができません。そこでコオロギの脳に働きかけて、川や水場にダイビングして自殺するようにしむけるのです。水中に飛び込み死んだコオロギの死体から、このハリガネムシは姿を現し交尾へと向かいます。まことに不気味なライフサイクルですが、いったい誰がこんなストーリーを考えたのかとつい言いたくなるほど巧妙なしくみではありませんか。こうした寄生虫のやりかたは、他にも次々とみつかっており、なかでもネズミに寄生する単細胞生物、トキソプラズマの話はぞーっとします。トキソプラズマはマラリア原虫の仲間で、地球上で最も感染拡大に成功した病原性原虫ともいわれています。大きさは3×6ミクロンという原生生物です。もちろん脳とか神経系など持たない原始的な生物です。この原生生物もネコの体内だけで生殖が可能という悲しい宿命を背負っています。他の哺乳類にも寄生しますが、ネズミに寄生したとき、ネズミの神経活動を激変させます。ネコの尿の匂いを普通は恐れるののが正常ですが、感染したネズミはネコさん食べてくださいと逆にネコに近づくようになるのです。なぜこうした行動に変化するのか、いま分子レベルで解明が進んでいます。このトキソプラズマはある計算によると30億人もの人類が感染しているといわれており、人の行動への影響も実は真剣に研究されているのです。
「寄生虫」と呼ばれるちょっと気味の悪い地球上の生物が、実はものすごい謎の力を持っており、多くの生き物たちを操っていることが、いま大きな話題になっています。NHKのEテレ「スーパープレゼンテーション」でも英国のサイエンスライターが講演し話題となりました。自殺するコオロギという現象があることをご存知でしょうか。ハリガネムシという寄生虫がいますが、コオロギはこの幼虫を食べます。そしてコオロギの体内でこの寄生虫は、育ち成虫となるのですが、ここからが自然の大いなる謎。この親となったハリガネムシは水中でないと交尾と産卵を行うことができません。そこでコオロギの脳に働きかけて、川や水場にダイビングして自殺するようにしむけるのです。水中に飛び込み死んだコオロギの死体から、このハリガネムシは姿を現し交尾へと向かいます。まことに不気味なライフサイクルですが、いったい誰がこんなストーリーを考えたのかとつい言いたくなるほど巧妙なしくみではありませんか。こうした寄生虫のやりかたは、他にも次々とみつかっており、なかでもネズミに寄生する単細胞生物、トキソプラズマの話はぞーっとします。トキソプラズマはマラリア原虫の仲間で、地球上で最も感染拡大に成功した病原性原虫ともいわれています。大きさは3×6ミクロンという原生生物です。もちろん脳とか神経系など持たない原始的な生物です。この原生生物もネコの体内だけで生殖が可能という悲しい宿命を背負っています。他の哺乳類にも寄生しますが、ネズミに寄生したとき、ネズミの神経活動を激変させます。ネコの尿の匂いを普通は恐れるののが正常ですが、感染したネズミはネコさん食べてくださいと逆にネコに近づくようになるのです。なぜこうした行動に変化するのか、いま分子レベルで解明が進んでいます。このトキソプラズマはある計算によると30億人もの人類が感染しているといわれており、人の行動への影響も実は真剣に研究されているのです。
2015年9月30日水曜日
~牛乳は自然の摂理に反した食材なのか~
哺乳類の仲間で離乳後、成長してからミルクを飲むのは人類だけだといいいます。人類以外のすべての哺乳類では、離乳後に「ラクト―ス」の消化能力を失うのです。牛のミルクは、仔牛のものであって、含まれる有効成分の、タンパク質、生理活性物質、脂質などそのどれをとっても、当然親牛が牛の遺伝子で作った仔牛用の栄養溶液といえるでしょう。そう考えると仔牛ではない生き物の人類がこれをほぼ生に近い状態で飲み続けているのは不自然さも感じます。こうした論拠から、ミルクはとらないほうがいいと主張し続ける学者たちがいます。最近の研究では、乳製品の消化能力といえるラクトース分解酵素を成人になってからも持続している民族は、地球上で北ヨーロッパやアフリカ、中東の一部などかなり限られた地域の人々であることもわかってきました。つまりこれまで考えられていたほど、乳製品の摂取に対して人類は十分に適応しているわけではないのです。ミルクと乳製品は別に分けて考えるべきかもしれませんが、ではこれらは本当に「不自然な食材」なのでしょうか。ミルクには栄養を補うほかに、カルシウムの補充、そして水分補給という重要なの働きがあると指摘されています。特に衛生的な淡水が得られないようなところでは、水分補給の意義が大きかったと指摘する研究者もいます。しかしモンゴル草原のような乾燥地帯でも人々は決して生のミルクは飲みません。長年の経験でそれは衛生的ではないと考えられているのです。
スーパーで普通に売られているミルクやチーズ、そこにも爆発的に増殖してきた人類のまことに勝手な都合と歴史が見えてきます。食材は栄養や経済的側面だけでなく、健康維持や医学の目線でももっともっと論じられるべきなのかもしれません。
哺乳類の仲間で離乳後、成長してからミルクを飲むのは人類だけだといいいます。人類以外のすべての哺乳類では、離乳後に「ラクト―ス」の消化能力を失うのです。牛のミルクは、仔牛のものであって、含まれる有効成分の、タンパク質、生理活性物質、脂質などそのどれをとっても、当然親牛が牛の遺伝子で作った仔牛用の栄養溶液といえるでしょう。そう考えると仔牛ではない生き物の人類がこれをほぼ生に近い状態で飲み続けているのは不自然さも感じます。こうした論拠から、ミルクはとらないほうがいいと主張し続ける学者たちがいます。最近の研究では、乳製品の消化能力といえるラクトース分解酵素を成人になってからも持続している民族は、地球上で北ヨーロッパやアフリカ、中東の一部などかなり限られた地域の人々であることもわかってきました。つまりこれまで考えられていたほど、乳製品の摂取に対して人類は十分に適応しているわけではないのです。ミルクと乳製品は別に分けて考えるべきかもしれませんが、ではこれらは本当に「不自然な食材」なのでしょうか。ミルクには栄養を補うほかに、カルシウムの補充、そして水分補給という重要なの働きがあると指摘されています。特に衛生的な淡水が得られないようなところでは、水分補給の意義が大きかったと指摘する研究者もいます。しかしモンゴル草原のような乾燥地帯でも人々は決して生のミルクは飲みません。長年の経験でそれは衛生的ではないと考えられているのです。
スーパーで普通に売られているミルクやチーズ、そこにも爆発的に増殖してきた人類のまことに勝手な都合と歴史が見えてきます。食材は栄養や経済的側面だけでなく、健康維持や医学の目線でももっともっと論じられるべきなのかもしれません。
2015年9月29日火曜日
~食事で炭水化物を制限すべきか~
穀物を摂ることが生活習慣病など健康問題で諸悪の根源ではないかといった議論が盛んになされています。それは人類が農業をはじめて以来、現代の飽食へと続く道をまっしぐらに歩んできたのではないかと考える健康主義者の意見です。こうした意見を述べる人たちは、10万年前から数万年前の長い狩猟と採集の時代に人間の体は進化適応してきたので、農業を発明し、炭水化物を安易にそして過剰に摂取できる現代のような食生活には人の体は対応しきれていないということを指摘します。そして理想の食事は10万年前の肉食中心で果実などを摂る「原始人の食卓」ではないかと考えています。実際、アメリカではこのパレオ(石器時代)式の食事やライフスタイルを実践している、熱心な主義者(パレオ主義者)もいるといいます。
しかし、こうした議論への反論もあります。いまから200万年前に生存していたアウストロピテクス・セディバという霊長類の仲間の歯からは、植物(穀物)が見つかっていて、デンプン質を食べていたことがわかったこと、またネアンデルタール人などは穀物を食べる習慣があり、加工していた可能性さえ指摘されるに至り、パレオ主義の論拠が揺らいでいます。炭水化物は考えられているよりもっと昔、人類初期の時代から摂っていた可能性があるのです。また進化生物学が明らかにしてきたことは、これまで進化を起こす時間としてはあまりにも短いと考えられてきた、数千年といった短い時間の単位でも、場合によっては「急速な進化」が起こることがあり得る、すなわち人類はすでに炭水化物を摂取する食生活にある程度適応しているのではないかという意見があります。背景には昆虫や爬虫類、鳥類では30年といった期間で、体形や行動が変化する「進化現象」が起こる事実がいま次々と知られるようになってきたことがあります。生物学では大きな話題となっています。
血糖値が加齢とともに上昇していく中高年にとっては、この論争、一日でもはやく科学的に決着をつけてほしいものです。
(進化生物学者マーリーン・ズック女史がその著「PALEO FANTASY」でパレオ主義を批判的に論じています。)
穀物を摂ることが生活習慣病など健康問題で諸悪の根源ではないかといった議論が盛んになされています。それは人類が農業をはじめて以来、現代の飽食へと続く道をまっしぐらに歩んできたのではないかと考える健康主義者の意見です。こうした意見を述べる人たちは、10万年前から数万年前の長い狩猟と採集の時代に人間の体は進化適応してきたので、農業を発明し、炭水化物を安易にそして過剰に摂取できる現代のような食生活には人の体は対応しきれていないということを指摘します。そして理想の食事は10万年前の肉食中心で果実などを摂る「原始人の食卓」ではないかと考えています。実際、アメリカではこのパレオ(石器時代)式の食事やライフスタイルを実践している、熱心な主義者(パレオ主義者)もいるといいます。
しかし、こうした議論への反論もあります。いまから200万年前に生存していたアウストロピテクス・セディバという霊長類の仲間の歯からは、植物(穀物)が見つかっていて、デンプン質を食べていたことがわかったこと、またネアンデルタール人などは穀物を食べる習慣があり、加工していた可能性さえ指摘されるに至り、パレオ主義の論拠が揺らいでいます。炭水化物は考えられているよりもっと昔、人類初期の時代から摂っていた可能性があるのです。また進化生物学が明らかにしてきたことは、これまで進化を起こす時間としてはあまりにも短いと考えられてきた、数千年といった短い時間の単位でも、場合によっては「急速な進化」が起こることがあり得る、すなわち人類はすでに炭水化物を摂取する食生活にある程度適応しているのではないかという意見があります。背景には昆虫や爬虫類、鳥類では30年といった期間で、体形や行動が変化する「進化現象」が起こる事実がいま次々と知られるようになってきたことがあります。生物学では大きな話題となっています。
血糖値が加齢とともに上昇していく中高年にとっては、この論争、一日でもはやく科学的に決着をつけてほしいものです。
(進化生物学者マーリーン・ズック女史がその著「PALEO FANTASY」でパレオ主義を批判的に論じています。)
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